第20話 コートジボワールからの贈り物
炎上ユーチューバー。一度そうなれば強烈なアンチが多く付く。それもぽっと出の炎上だけで視聴回数とチャンネル登録者数を増やす奴らともなれば。
そしてそれは嫌がらせが絶えないということでもある。
ただ暴言を吐かれたり、脅迫状が送られてきたりするだけならばマシだ。
とある、大物ユーチューバーはストーカーに家まで入られたり、外に出ればたくさんの人から盗撮されるなんてことがあるくらい。
他にも、家に尋ねてきたり、ピンポンダッシュされるなど被害が後を絶たない。
単なるいたずらでも、当人はものすごく怖いものである。
そして、俺も今日、初めて物理的にいたずらをされた。
「なんじゃこりゃあああああああああああ」
俺は絶叫した。それはそれは盛大に。
それもそのはず、今、目の前にはとんでもないものがある。
大量のウンコだ。
そうUNKOだ。別名、うんち、大便、固形型排泄物(たまに液体)、ババ、糞、クソともいう。
「って、くっせぇ!」
先ほど、宅配便で届いた大きな発砲スチロールの中には、ありえないほどのウンコが封印されていた。
発酵しているのか、酷い臭いで鼻がもげそうだ。
ご丁寧に箱の中には、取扱説明書なるものが入っており、汚いから触りはしなかったが、目につく部分だけ読み取ると、人糞と書いてあった。
つまり人間のウンコということだ。
牛糞などが送られてくるのならばまだ分かるが、これは人の排泄物なのである。
送ってきたやつの神経が分からん。
何を考えているのだろうか。
これ、軽く三十キロはあるぞ。どうやって集めたんだ。
良く集めたな。怒るよりもむしろ感心するわ!
送り主が、必死にウンコを集めていたのかと思うと、なんだか面白おかしい話で、思わず笑ってしまいそうだったが、俺には笑えない事情がある。
俺はとんでもない過ちを犯していたからだ。
「ウンコに金を払っちまったよっ!」
このギフトがただ送られてきたならまだしも、俺は着払いで受け取ってしまったのだ。
送り主の思惑は俺に金を払わせることだったらしい。
悔しいがひっかった。
届いた時はやけに大きな荷物だし、おまけに着払いなので何かの間違いかと思われたが、民芸品って書かれていたから、動画で使うためにネットで購入したものかもしれないと俺は受け取ってしまった。
俺の人生でまさかウンコにお金を払うとは思わなかった。
しかも三万五千円。
絶対に取り返してやる。と言いたいところだが、残念なことに送り主の住所は出鱈目な住所だということが判明した。
記入してあった郵便番号はコートジボワール共和国の大統領官邸。
コートジボワールといえば、アフリカ西部に位置し、隣国のガーナ共和国と同じく、チョコレートの原料であるカカオの一大生産地だ。
因みに、インドネシアもカカオの生産量が多く、ガーナと同じくらいだそうだ。
一方、コートジボワールはガーナとインドネシアを大きく離すほどの生産量を誇っている。
日本ではカカオの生産国と言えばガーナだが、世界的に見ればカカオの生産地と言えばコートジボワールなのだ。
「どうすんだよ、これ」
うんこもチョコレートも食えるかどうかの違いで、色も形もそう変わらんだろうとあちらに送って動画にでもしてやろうかと考えたが、何かの罪で逮捕されそうだったのでやめた。
現在はユーチューブの広告収入があるのでもうニートではないが、最近までニート同然だっただけでも親を困らせていたというのに、捕理された理由が息子がウンコを送り付けた事となれば流石に親が泣く。
そういう理由で送り付ける動画は断念したが、後で事の顛末を動画にして広告収入で取り返してやることにした。
使い道はないので、その辺の農家にでも配ることにしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます