第16話 逃走経路
久他里さんはハンドルを切り、二車線の右側へ。
前にいた暴走族を追い抜く。
そうなれば奴らも当然追いかけてくる。
「セブン、どこか逃げれそうなところはないか⁉」
「高速道路に乗れば、直線だからスピードを出せば何とかなるかも! 高速に行くには二つ先の信号を左に曲がればいいよ」
「わかった! 久他里さんお願いします」
「畏まりました!」
そうして、逃げること50分。高速道路にて。
なぜか、どんどん追いかけてくる暴走族の数が増えていた。
後方では三車線ある道路を埋め尽くし、厳ついバイクに乗った集団が追いかけてくる。
「これ、やべぇぞ!」
「サービスエリアに逃げるのは駄目かな?」
柚梨がそう提案する。
確かにサービスエリアなら人もいるし、いけるか?
「逃げたところで助けてくれる人はいないでしょうな」
行けると思った柚梨の作戦は久他里さんによってすぐに否定される。
よく考えれば、その通りだ。
誰が、好き好んで大量の暴走族から助けてくれるというのだろうか。
俺なら、真っ先に逃げている。
「でしたら、どうしましょう!」
「高速を降りたらスピードが落ちて捕まるし、かといってサービスエリアに逃げることも出来ないし、いっそ高速道路のどこかにいる警察でも走りながら探す?」
「いなかったら、最悪だぞ」
逃げ場が全くない。一体どうしたらいいんだ。
ていうか、これ、詰みじゃね?
「兎に角、逃げながらどこかいい場所を探しませんとな」
「次のETCで
セブンがナビの地図を先回りして、良さそうな逃走ルートを伝えてくれる。
流石は人工知能を備えているだけあって、状況を判断してナビゲートを行うことが出来るようだ。
「相生ですな! ではそちらに向かうとしましょう」
久他里さんはおもいきりアクセルを踏み、車は一段とエンジン音を鳴らしながら前進する。
一瞬、暴走族と距離が開くがすぐさま彼らもスピードを上げて追って来た。
幸運なのはちらほらと車が走っていることだ。
そのおかげで全車線を走り抜ける暴走族は一時的に車線を変更しなければならない。
そのために車の間を縫って、走行することになるので、全体的にスピードが遅れる。
その間に単一で走行している俺たちは車を避けるだけで問題はない。暴走族と違って道を譲り合わなくて済むのでその分、速度を保ったまま走ることが出来ていた。
「もうすぐ降りる所があるよ。あと一キロメートル!」
直線の道をひたすらハイスピードで駆け抜ける俺達はもう少しで、目的の場所へ辿り着こうとしていた。
そして、数十秒後。相生へ降りる場所を示す看板を見つける。
「あれじゃないかっ?」
「あれだね! 良かった!」
「ようやく降りられますね」
看板通りだと、もうすぐのはずだ。そうすれば逃げられるはず。
そして、希望が見えたと思った瞬間、俺達は絶望の味を知ることになった。
「何者かが道を塞いでおりますぞ!」
「なんだと!」
「本当だ!」
「ええっ⁉」
「これでは降りられませんな。仕方ありません。このまま相生を通り過ぎますぞ」
そうして、降りるはずだった道を通り過ぎる。
その時、よく見ると二台のアメリカンバイクが堂々と道を塞いでいた。そこにはナメ切った顔でバッドサインを作ってこちらを見る暴走族が居た。
こいつらっ! 先回りしてやがったのか!
「どうして、私たちが相生で降りるって分かったのかな」
柚梨が不思議そうな表情をして、みんなに問う。
「確かに。どうやって分かったんだ」
「もしかしたら降りる道、全て塞いでるんじゃないですか?」
「いや、それなら他の道も塞いでるだろう。だけど、他の所はそんなこと無かったはずだよ」
「多分、彼らも相生でわたくし達に降りられたら、追えなくなるというのが分かっていたのでしょうな。だから、ピンポイントで塞いだのではないでしょうか?」
「くそっ! そういうことか!」
暴走族のくせに頭が切れるな。
ああいうのは全部イグアナ以下だと思っていたが、どうやら霊長類ほどには頭が回るらしい。
「セブン、次は何処か良いところない?」
「それなら、
柚梨に聞かれたセブンがすぐさま、教えてくれる。
本当にすごい。これなら、製品として販売できるんじゃないのか?
時代が変わる瞬間を俺は見たような気がした。
生き延びたら、このシステムを売って儲けようかな。
「それは少し遠いな」
「だね」
ここから前備まで少し時間が掛かる。そこまでに追いつかれないという保証はない。
もう少し近ければ何とかなるのだが。
「…………でしたら
セブンの返答を聞いた棗ちゃんは少し間を置いてから、突如そんな提案をする。
「え? それはどういうことなんだ?」
「あそこには朱鷺坂の私有地があるはずなんです。久他里さん、確かそうですよね?」
「はい、お嬢様。よく覚えていらっしゃいました。確かにそこへ行けば何とかなるはずです」
「では、そこに私が人員を手配いたします」
「お願い致します」
「はい。というわけなので湊様、連絡をするためにスマホを貸しては頂けませんか?」
一連のやり取りを終えた棗ちゃんは俺にそう要求する。
なので、ポケットからスマホを取り出して、渡してあげた。
「分かった。使い方は分かる?」
「最近覚えましたので大丈夫です。ではお借りします。…………もしもし、棗ですが…………」
スマホを受け取った彼女は素早く通話メニューを開き、電話をかけた。
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