第15話 暴走族と御対面

「おい、コラァ! ジジィ! ふざけんなてめぇ!」


 右側にいた、カラフルなモヒカンヤンキーが怒鳴り上げる。

 いや、その頭の方がふざけているだろ。


孔雀くじゃくヤンキー現る! いやはや、凄い大道芸! みなさん、孔雀がバイクに乗ってますよ!」


 画面のセブンからも見えるようで、怒鳴り上げたヤンキーにすぐさま渾名をつける。

 面白い表現だとは思うが今は笑えない。


「聞いてんのか! 窓開けろや!」


 今度は左、つまり俺が座っている側で、パンチパーマの典型的なヤンキーが窓を叩く。


「窓が割れてしまうかもしれませんので開けますぞ」


「え?」

 

 すると、久他里さんはすぐさま俺が座る助手席の方の窓を開けた。


「なんで、開けるんだよおぉぉぉ!」


 そして、窓が全て空いた瞬間セブンがまたもテンションを上げて実況を始めてしまう。

 最悪だ。



「今度は怒れる大仏だ! 仏の顔も三度までは嘘だった? 初見からキレているっ! 今どきパンチパーマは無いですね! ダサすぎるぞ仏ヤンキー」


 その渾名、煽るためにやってるだろっ!

 人工知能、恐ろしや。


「何が大仏だ! コラァ! てめぇ、降りてこいやっ!」


「俺じゃねぇ! 言ったのは俺じゃねぇよっ! ここにいる、Vチューバーだ!」


「ああ!? Vなんだよ! わけわかんねぇこと言ってんじゃねぇ! ぶっ殺すぞ?」


 セブンの実況を俺が言ったと勘違いし、ブチ切れたヤンキーは開いた窓から手を伸ばして俺に掴みかかろうとする。


「湊様! 危ない!」


「いてぇ!」


 もう少しで俺に触れそうになったところ、伸びてきた手はすぐに引っ込んだ。

 反射神経で目を瞑った俺は何が起きたのか分からず、棗ちゃんがいる後ろを振り向くと、その手にはバチバチっと小さな雷が弾けるスタンガンが握られていた。

 彼女はスタンガンでヤンキーの手に電撃を浴びせたらしい。

 なんて度胸があるんだ!


「よくもやってくれたな! 絶対ただじゃおかねぇぞ! 顔は覚えた、ってよく見るとなかなかの上玉が二人もいるじゃねぇか! これはボスに伝えねぇと!」


 そう言って、ヤンキーは車から離れていき、前方へと走っていった。


「何とかなったか」


「そうでもないようですぞ?」


「え?」


「湊くん、後ろからモノ凄い数のバイクが来ているよ」


 どうやら、暴走族の数は最初に見たやつらだけではなかったらしい。

 おいおい、まじかよ。軽く五十台くらいはいるんじゃないのか?


「セブン、逃げ道は?」


「ここから、道なりです…………」


 俺がセブンに聞いた途端、彼女はフェードアウトしていった。

 に、逃げやがった!


「お前のデータを全部消してやろうか?」


「あわわっ! それだけは勘弁して!」


 脅しをかけると、間髪入れずに画面へセブンは姿を現した。


「遊んでる場合じゃないよ!」


「湊様、どうしますか?」


「どうするって言われてもなぁ。謝るってのは駄目か?」


「絶対に許してくれないね」


「ダメでしょうな」


「無理だと思います」


一同、同意見。


 ですよねー。

 分かってました。

 となれば、


「「「「「にげるぞおおおおおおおおおおおおお」」」」」

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