第15話

「まさかまた狙われるなんてな。」


「もぅ…凄い怖かったんやから。」


難波から御堂筋線に乗って梅田に向かっている。


「ありがと。…かっこよかったよ。だ~い好き、春兄。」


乙葉は、自分の身体を俺に預け、デレている。


「なーにが大好きや、ツンデレ。」


「ツンデレじゃないもん。ちょっと甘えるだけやし!」




梅田に着くと、阪急のホームに行った。

春樹のお目当ての列車に乗るために。



「春兄!なにこれ、オシャレ~。」


そう、京トレインに乗るために。

京トレインとは、阪急が運行する観光列車。特別料金は無料で、豪華な旅をすることが出来る。


車内に入ると、

「うわー凄い、凄いよ!なにこれ!?」


3号車の位置に並んでいた甲斐あっで、無事に特別車両に乗ることができた。


「背もたれの所、畳やで!」


「せやな、喜んでくれたみたいで良かったわ。」


「あっ、運賃は払うよ、いくらかな?」


「金のことは考えるなや。後で教えるわ。」



京トレインに乗って約40分後


「ご乗車ありがとうございました、桂、桂です。嵐山方面は――」


  

桂から嵐山線に乗り、嵐山に着く。

阪急の嵐山の駅は市街地から少し離れているから、歩く必要がある。 

まあ、渡月橋渡れるし別にいいけど。


なんか、入るのに勇気のいるような店に入って注文をする。


「この恋人限定のパフェを二つお願いします。」


「えっ!?あのー、このパフェは1カップル1つ限定なんです…。」


ドン引きされた!?

なんか周りのカップルも観てるし。


「はぁ、じゃあこのパフェと紅茶二つお願いします。」


「はい!! かしこまりました。」


気持ち悪い程ニマニマした営業スマイルをうけ、注文を終わらせる。


「二つって、よく言ったね。」


「いやー、普通二人で来てるし二個頼むもんじゃないんか?」


「何を言ってるん?周り観てみ?」


周りを見てみると、カップルしかいない。

それも、1つだけしか頼んでないし。

溢すぞ、リアイチャイチャ野郎共め。




無事に店員を騙して、パフェをゲットする。

想像の2倍程大きかった。

色々入ったパフェだ。生クリームも入っている。正直嫌な予感しかしない。

でも、これで正規720円の価値があるかというと頷けないな。原価率は高そう。コスパは低いと思う。


「俺はちょっとでいいわ。乙葉食べれるか?」


「うん、全然平気よ!」


「すみませーん、取り皿もらえますか?」


近くにいた店員に声を掛ける。

店員は苦笑いで、

「申し訳ありません、取り皿はございません。」


客は一斉にこちらを向いて、直ぐにコソコソ話し始める。


「じゃあ持参してきたもので大丈夫ですか?」


「えっと…。はい、大丈夫です。ごゆっくりどうぞ。」


持参してきた紙皿に食べれる分だけ取る。

それをみたカップルは目を点にしてる。


「春兄どうしたん?大丈夫?」


こんなことで心配してくれるマイシスターマジ天使。


「あの、私も、食べさせてほしいなーって。」


「まあいいか、ほれ。」


乙葉の開いた口に、大きめの苺をほりこんであげる。


「あうっ、あうっ、もぅー、なにするの!?」


「いや、食べさせてくれたらって言ってたから、苺を。」


「なんで苺!?」


「掴みやすいから。」


そう、割り箸も持参している。

常に俺の鞄には割り箸、皿、コップ、ペットボトルの蓋を入れている。



「もう、こういうことを言いたいの!口開けて!」


「うん、って、えっ?」


入れられたのはスポンジと生クリーム。

スポンジ2割の生クリーム8割ぐらい。


直ぐに紅茶を飲んだが、彼が胸焼けになったのは言うまでもない。

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