紺春
風川
第1話
高校生になれば、誰にでも平等に青春が与えられるのだと思っていた。
おしゃべり部と化した軟式テニス部で俺の中学校生活は幕を閉じた。
だがしかし。高校に入れば。
何かしらの形で青春が俺を待っている。
この15年間であらゆる青春漫画を読みつくした俺は、自分に割り振られる青春の種類をある程度予測できる。
運動部に入り、個性豊かな仲間とぶつかり合いながらも切磋琢磨して、全国行きの切符を掴み取るだろうか?
それとも廃部寸前の軽音部に無理矢理入らされて、最初は乗り気じゃないものの文化祭ライブの成功と廃部阻止のために毎日音をかき鳴らすだろうか?
いや、それとも学校案内をしてくれた1つ上の清楚系美人先輩と席替えして隣になったツンデレ系茶髪女子と図書委員でいつも伏し目がちなメガネ文系女子の間で揺れ動くのだろうか?
青春を受け止める準備はできている。
俺の平和だった日常を狂わせてくれ、唐突で強引で最高な運命の出会いよ!
「と思ってたのになんでェェェェェェァァ」
「春斗、うるせぇ。」
「チッ、悪かったな」
「ここ最近それしか言ってないね?運命の出会い(笑)汗と涙の青春(笑)」
「汗と涙は言ってねぇだろ…」
紙パックのレモンティーを片手にこうして容赦なく馬鹿にしてくるのは、同じクラスの戮だ。不本意ながら現在俺の「一番仲良い友達」ポジションを務めているのはこいつである。
戮のターン
「だからーサバゲーやろぉって言ってんじゃん。青春だよ?」
「どこがだよ…お前ほんとサバゲー好きだな…」
「だって俺の戮って殺戮の字だし?やっぱ?サバゲーしかないっていうか?」
「お前俺が言ったネタ自虐に使うなよ…お前サバゲーのことになると話し方頭悪くなるよな…」
「つーか春斗さっきからてんてんてんって言いすぎじゃね?(笑)」
「言ってんじゃねぇ゛んだよ、じゃあお前も何回かかっこわらいつってんだよ」
なんとも生産性のない会話は俺たちの特技だ。
戮のターン
「でもまじで俺も青春したいわ…」
「え、そうなの?なんかいが」
「春斗さ、俺と青春しない?」
頭の螺子が飛んでる。
「やめろよカテゴリが変わるだろ」
「えーっ何想像しちゃってるのやだあ~」
「無視!」
「違うの、だからさ、ほら俺たちで青春を見つけない?」
「ハルリークの冒険か」
「上手くねえから春…だから、待ってても青春は来ないんだっつの」
「来るし!!貴様朕の読書歴を愚弄するか」
「一人称…つーか漫画を読書とは言わねえよ。じゃあいいよお前抜きで青春ゲットするから。」
「⁉それはちょっと…」
「何だよ、青春は待ってりゃくるんだろ?」
「んん~~」
んん~~
俺は今受け身の青春を待ってるんだけど…
どうしよう…
今思えば、ここで断っとけばよかったんだ。
断っとけば、あんなことには…
続く
紺春 風川 @_citrus
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