第9話 初戦闘
真斗は緊迫した雰囲気を赤いオーラと共に漂わせた。
その真斗の目の前には血のついた刀があった。
「フン⋯まぁ無駄とは宣告しておいてもお前は今ここで死ぬだけだしなぁ⋯まぁお前の勇気ある行動へのご褒美だと受け取ってくれっ!」
血のついた刀を持ったインサニティーは真斗に向かって思いっきり突進した。
真斗は慌てて後方へ回避する。
「オラァ!!!」とインサニティーの男は刀を横に振る。
真斗はそれを跳んで避けた。
避けたのはいいのだが男は真っ直ぐに刀を着いてきた。
(クッソ!避けにくい!!!)
真斗は着地したばっかの不安定な体をそのまま仰向け状態に地面に倒し、刀をスレスレに避けた。
そしてその状態から真斗は引き金を弾いた。
バン!バン!と二発銃声が鳴り響いた。
銃弾は男の顔目掛けて直進した。
男はキツそうな顔をしながら避けた。
「クソが!!!」
男は避けたがあまりにもタイミングが遅かったため少し右頬から血が出ていた。
体勢を崩しているインサニティーの男の姿を見計らって真斗はすぐにバン!バン!と銃弾を銃口から放つ。
男は流石に接近戦は難しいと感じ、自分の後ろの方へ後退した。
男は刀を地面についてこう言った。
「お前⋯よく近接戦闘で銃なんか使えるな⋯何者だ」
銃士は普通近接戦闘はしない。それは当たり前のことで一般人でも知っている事だ。銃は刀と比べると遠距離系の武器。普通はある程度の距離を保って撃つ。だが近寄られると撃ちにくいため、刀士よりかはすぐに窮地になってしまうため、「最弱の職業」と呼ばれている。
だが真斗は近接戦闘。それも顔がくっついてしまうかのような近さであったのにも関わらず、素早く男に銃弾を放った。
それにものすごく男は慎重になっていた。
「ふつーに銃士学校の生徒ですけど。それも入学したばっかの雛鳥ですけど?」
真斗は少し息を荒くしながらもまだまだ戦えそうな雰囲気を醸し出しながら男に言う。
「フン⋯まぁいい。今のは流石に負けたと思ったが」
男はそう言うと真斗が少し油断したすきをつき
(しまった!!!!)
真斗の持っていた銃を弾き飛ばした。
銃は音を奏でながら後方へ飛んでいく。
「これで⋯終わりだァァァ!!!」
男はそう叫びながら縦に勢いよく刀を振る。そして真斗はその刀当たりそうになる。
だが真斗の体は下へ下へと下がっていき刀は中々当たらない。
男は短い時間の中ありながらも少し不思議に思った。その時
「がッあ!・・・」
男の腹強烈な痛みが生まれた。
その反動で男は刀を手の中から放す。そしてチャリンと地面に音を鳴らした。
「うっ⋯⋯うぅぅ」
男は唸りながら倒れ込んだ。
(何故だ⋯何故銃士の人間が拳を使う!?)
インサニティーの男は銃士が拳を使って戦うなど聞いたことがなかった。普通は銃士が銃を放して戦うことは死を意味する。なので大体銃士に負けそうな時はインサニティーはそうする傾向がある。
だが真斗はその意味を覆した。
真斗の体は死に至らなかった。
男は口から唾を垂れ流しながら驚愕する。
「ふぅ⋯それじゃあ」
真斗はそういうと片足を思いっきり振り上げる。
「寝てろ。狂人」
カン!!!!と金属製の手すりから音が鳴った。
男は真斗に蹴られ、その手すりに当たり、白目を向いた。
そして男は一言も唸らず、勢いよく倒れた。
「クソが⋯⋯」
真斗は倒れたインサニティーの男を見た後、その男に斬られた人達の方を見た。
スーツの男性と会社帰りらしき女性。
男性の方は完全に首が取れ、断面からは肉片のような物が飛び出していた。
それに対して、女性は首が取れていなかった。
だがしかし、女性は急に斬られた影響か目を閉じておらず、白目を向いたまま倒れ込んでいた。
(⋯⋯)
真斗は切なくなった。僕は早速人を助けれなかったと。
少し吐きそうになる。だが吐きはしなかった。
血は見慣れている。真斗は昔よく怪我をしていたため、鮮血の色は見慣れていた。
だが、死体を見るのは初めてだった。先程まで見慣れた姿をしていた者が醜いと感じるほどにまで異形化してしまったからだ。
真斗は悔やんだ。
「インサニティー⋯絶対に許さん」
真斗は怒りを露にした。
「なんでこんなことをする!?何故!何故!何故!」
そう大きな声で叫ぶととあることを思い出した。
だが残念だ。もうすぐその事は無駄になる。
真斗と男が刀と銃を交える前に、インサニティーの男が発した言葉だ。
(避難させることが無駄⋯)
不思議に思った。男が何故こんなにも公共の場で姿を出して人を殺したのか。何故、避難させるのが無駄なのか。全く真斗はわからなかった。
だがその答えはすぐに顕になった。
ガキン!!!と音が勢いよく鳴り響き、電車が急に倒れ始めた。
真斗の後ろからは叫び声があがる。
「なんだよ!?」
真斗は体制が斜めのため歩きにくい電車の中を勢いよく走り抜けながら運転席の方へ移動する。
「何が起きましたか!?」
電車が倒れ始めた影響で壊れてしまった運転席のドアを開けて運転主に聞く。
「わかりません!!!」
運転主は慌てながら答えた。
するとダァン!と目の前に爆発が起き、運転席の窓に黒い煙が浮かび上がる。
そして黒い煙が引いたあと
「おい⋯⋯マジかよ!」
目の前の橋が途切れていた。このままでは電車は勢いよく落ちてしまう。この電車は地上から十メートル以上はある。
このまま落ちると恐らく真斗も含め、落ちた衝撃で死んでしまうかもしれない。
(クソっ⋯ここまでなのか!?)
真斗が思った瞬間
タッタッタッととある人影が橋の端を走り抜けてきた。
電車の後ろ側なため、真斗には見えていない。
長いロングコートをヒラヒラさせ、その人影は飛び上がり電車の目の前に飛んで移動する。
(なんだ!?今の黒いヤツ!?)
人影は勢いよく目の前に落ちたため真斗は見ることが出来なかった。
するとその人影は電車の正面に拳を撃ち込んだ。
バァァァアン!と真斗の銃声より大きな音が響く。
「うわぁぁ!!!」
反動で電車はグラつき、スピードが遅くなった。
だが、スピードが遅くなったのが遅くなったため、電車は穴から落ち始めた。
「あぁぁぁあぁぁあ!!!!!!」
真斗は悲鳴をあげた。後方からも悲鳴が聞こえる。
すると駅の周りから無数の青い光を放った円が出現し、そこから鎖が出現した。
チャリンと電車を巻き付く。
すると地面スレスレに電車は動きを止めた。
「一体何が起きたんだ?」
電車に巻き付いた鎖を運転席の窓から確認した真斗は運転席のドアをから後ろの車両に移動した。
「一体何が」
と真斗が言った瞬間、ガキン!!!と扉が吹き飛ばされた。
「大丈夫か?我が生徒」
吹き飛ばされた扉から出てきたのは
「ロリババァ⋯」
すると急に頭を扉から出てきた那瑠に殴れた。
「全く貴様は不幸だな」
「イタタタタ⋯⋯」
真斗はオーラを放たず、座り込みながら、小さな体の教師那瑠に嫌味を言われていた。
真斗は頭を抑えながら目の前を見る。
鎖に巻き付けられた電車。そこから沢山の人が救出されていた。
「てかなんでロ⋯」
「貴様、死にたいのか?」
「先生がここに?」
怯えながら真斗は訂正をした。
那瑠はいつもの可愛らしい私服にロングコートを身に纏い、少しカッコイイ姿になっていた。
「あぁ、一つあとの電車に乗っていてな。大きな音がしたので扉蹴飛ばしてやってきた」
真斗は想像した。可愛らしい様子の幼女が電車の扉を蹴飛ばし、橋を高速で走り、そして電車の目の前に拳を撃ち込む。
「めっちゃ怖い!!!」
真斗は恐怖と笑いがこみ上げてきた。
「なぜ笑っている?」
那瑠は怒りながら言う。
「だってロリが電車の扉蹴飛ばして、橋を走って、電車をパンチするなんて笑うしかないでしょ!」
真斗はすぐに那瑠に殴られた。
「貴様?何回死にたい?」
「この殺人鬼め」
真斗は那瑠に反抗の意思を示した。
すると向こうから警察官がやってきた。
「那瑠拳士」
警官は那瑠を呼んだ。
「なんだ?」
「ここで起きた現状をお聞かせください」
「あぁ。わかった。」
那瑠は警官にそう言うと警官はすぐに敬礼し、警官は奥の現場へ戻っていった。
「さぁ行くぞ」
「何処にだ?」
「それは警察の元へだ。お前は今回の事件には一番深く関わっている。中の死体と気絶したインサニティー。色んなことについて聞きたいことがあるからな。」
那瑠はそういうと真斗の服の襟を掴み、引きずって行った。
真斗は那瑠に服のえりを掴まれながら、とある車の中に連れてこられた。そして真斗は椅子に座らせられ、那瑠はそのまま立った。
「お久しぶりです。那瑠さん」
そう言ったのは何とも大きな巨体で椅子に腰をかけた男だった。メガネをかけ、紳士な表情で那瑠に顔を向ける。
「久しぶりだな」
那瑠も挨拶した。
「今回の件ですが⋯死者二名。負傷者十名。まぁインサニティー関連の事件では少ないといったところでしょうか」
「そうだな。だが流石に死者が出たのは気に食わん。これからこれをどうするかだ」
巨大な男と那瑠が真剣そうに話していると
「あのー⋯誰ですか?」
真斗が口を挟んだ。
巨大な男は少しキョトンとびっくりし、目を丸めていたがすぐに元に戻った。
「それは失礼。私は警視庁ディフェンサー協力課の滝 高志と申します。」
滝と名乗る男は手を膝の上に置きながら、まるで戦国大名の挨拶かと思わせるような勇ましい態度で挨拶した。
「こいつとは長い付き合いでな。最初の任務の事故処理を手伝ってもらっている」
那瑠は滝との関係を真斗に話した。
「それで真斗さん」
「は、はい!」
「あの気絶したインサニティー。あれはあなたがやったんですか?」
ものすごい威圧を滝は放ちながら、真斗は問い詰められた。
「はい」
真斗は正直に真剣な表情でそう答える。
「貴様。あれもどうやってやった。銃を使って弾丸を頭に撃ち込み死亡させたとかならわかるが、まさか殴って気絶させたとかないよな?」
那瑠は腕を組み、車の壁にもたれながらそう真斗に問う。
「え、そうだが?」
その返答に那瑠は凄く驚いた。
「昨日の報告で十人の男と桃と一緒に殴り倒したのは認識しているがまさかこれほどの力とはな」
那瑠と滝は凄く感心していた。
二人が驚くのも無理はない。なぜなら相手は普通の人間ではなく、強大な力を持ったインサニティーだ。
拳士のように体術を鍛え上げたわけではない銃士が神経を強化して、腕を一時的に鍛え上げたとしても気絶するとは思えない。
「まぁそれはそうとして記録しておきますかね」
滝はクリップボードに挟んだ紙に何かを書きながら、真斗への質問を進める。
「それであのヤられてしまった二人はどのように?」
「どのように?」
真斗は滝の言ってる事がわからなかった。
だが今の話的に恐らくインサニティーの男に斬られてしまった二人の経緯を聞いているのだろうと真斗は予想した。
「男性が斬られる前、電車運んでいましたが、多くの人達が電車降りた直後斬られました。」
「その降りた直後斬られたというのは、インサニティーが動きやすい状況になったので行動を起こしたというので良いか?」
滝の質問に真斗はコクリと頷く。
「とりあえず、これを上に報告する。少ない質問で時間を取らせてしまいすまなかった。大体の話は那瑠さんから聞いていたものでな」
「まぁそれは私の説明が受け取りやすかった、と受け取っておこう」
那瑠は背もたれていた車内の壁から離れ
「真斗。貴様は私に頼まれた用事があるだろう?それを済ましに行ってこい」
完全に真斗はおつかいの事を忘れていた。
「あぁ!忘れてた。んじゃ行ってきます」
真斗は車から降りた後、滝や那瑠に手を振りすぐその場を立ち去った。
「中々すごい生徒さんですね」
「なぁに。まだまだだ。正直あれはまだ兄の方にも届いていない」
「まぁ確かにそんな感じはしますね。真双さんはあの子とは違い、電車を止めて、完全に自分の手で人を救うでしょうからね」
「その通りだ。全く奴の実力には嫉妬する」
那瑠は車から降りてきた巨大な男滝と世間話をした。
この二人は昔からの仲であり、そして真双とも関係が深い間柄である。
「でもあの子の方が将来的には強くなりそうですよね。なんか⋯⋯ 真双さんとは違い見込めないというか」
「奴はまだなにか力を隠しているということか?」
「はい。真双さんは銃を使った時、完全に的を外し、銃士に向いてはいませんでした。」
滝は昔、とある事件で真双が試しに銃を使ったのを思い出した。
拳銃を握りしめ相手を狙う真双。
だがその弾は当たることはなく、結局刀を使って解決した事をを滝は思い出していた。
「⋯おそらくだが、真神。いや、真斗は全ての戦闘スタイルに対応できる。今のところ銃と拳を使えるが、今後は刀や槍などの武器も使えるだろうな」
「何ともあの子にご期待を持っていらっしゃるのですね」
険しい顔で事件現場を見つける那瑠を見ながら滝はニコリと笑顔を作った。
「そうだな⋯」
那瑠は真斗の才能への期待、それと同時に新たな不安を持ち始めていた。
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