第8話 真斗達のチーム

円太を助けた後、治療のために真斗達は円太を病院を連れて行った。

その後の事は全て凄く背の高く見た目凄く若そうな医者に任せた真斗は急いで学校に戻った。

早速、インサニティーとは関係ないが事件に巻き込まれたので招集命令が出された。と言っても真斗達だがなので帰還命令の方が正しいかもしれない。

そして、学校に着いた直後

「教室に来いと那瑠先生が仰ってましたよ」

と初めて見かける教師に言われた。

真斗達はそれに従い、教室へ向かった。

「さて⋯貴様ら、まさかの入学初っ端から事件に巻き込まれるとは不運だったな」

那瑠はいつも乗っている教団ではなく、生徒の机に座っていた。

やはり容姿が完璧に幼女にしか見えないともあってあまり違和感がない。

ただし、体だけ見た場合ではあるが

「まぁ⋯けどいい経験になったよ」

真斗は先生に対してとは思えない態度で感想を話す。

「それでその調子に乗っている真神。今回貴様がしたことはなんだ?」

「は?」

(え?したこと⋯円太を助けた⋯え?でもそれはわかってるよな。というか悪いことではないよな⋯なんだ?)

真斗はものすごい角度で首を傾げる。

「10人ほどの人間を立ち上がれないほどボコボコに殴りまくる。貴様。これがどれだけ悪いことかわかっているだろうな?」

那瑠はまるでムチをパチンパチンと叩いているかのような威圧を放ちながら言った。

「私達は神経を強化出来る立場だ。明らかに一般人と能力の差がある。それなのにも関わらず貴様らはなんてマネを⋯」

と那瑠が話してる最中に真斗達四人の一人が声を出した。

「あ、私達トランスミッションブラスターでしたっけ?使ってませんよ」

ピンクの髪を揺らしながら桃が言った。

すると那瑠は驚いた顔をした。

まさか、素手で五人相手にしたとは想像しにくい。それも入学してあまり鍛えてないヒナドリがだ。

「ほぅ⋯それは素晴らしいな⋯とりあえず話を聞こう」


「こういう事なんですよ」

円太という少年(オトコの娘だったことは伏せた)が10人ほどの男達に殴られていたため、時雨がボコボコにされることで囮になり、その後すぐに真斗と桃が男達を殴り飛ばし、その間にうさぎが円太を救出した。

自分達がどのように事件を解決し、どのような結果になったのか伝えた。

「見込み通りだったか」

那瑠は感心し、腕を組んだ。

「貴様らが大雑把で無責任なのは私もよくわかっている。特に真神。貴様は特にそれに特化している」

「あぁ、それはどうも」

「別に褒めてはいないだが」

「だが?」と真斗は首を傾げた。

「そういうのはよく人を元気に出来るからな。まぁたまに抱え込んでしまう奴を相手にした場合は無理ではあるが⋯それでも貴様らみたいな奴はほとんどいない。まぁいるとしても結構実力のある能天気集団くらいだがな。」

円太は抱え込む子ではなかった。抱え込まずに表に自分の意思を表して戦った。そういう奴の場合は真斗達はすごく効果的らしい。真斗達は「なるほど」と思った。

「まぁ貴様の兄、真双まそうもそんな奴だったな」

「兄さんが?」

真斗の兄 真双まそうは大雑把と言ったら大雑把ではある。

真斗が子供の頃、よく「よし冒険しに行こう」と当てもないまま山などに潜り込み、迷子になりという経験をしていた。

真斗は「あぁ確かに」とは思ったものの、無責任という点に関してはどうも納得は出来なかった。

自分とは違い、自分から人を守る道に進み、責任を持って大勢の人を守った真双。

それを疑問に思い真斗は那瑠に質問した。

「兄さんってそんなに無責任ですか?」

「そうだぞ。だってアイツは大きな仕事を成し遂げた後、姿を消して表での責任を放棄したからな」

真双は五年前、西アジアで起きたインサニティーによるテロを一人で解決した。

だがその後消息を絶った。

真斗は西アジアに行く前に「いってらっしゃい、兄さん」と言葉をかけてから会ってはない。

それを思い出すと確かにとは思った。

「まぁでも⋯アイツとあると楽しかったな。大雑把な言葉が人を笑顔にさせて⋯無責任な戦い方が沢山の人々を救った。そういう意味では尊敬しているよ。私はね。」

那瑠は懐かしそうに笑った。

笑った顔は初めて見たと真斗は少し驚いた。

「貴様らもそんな感じに育ってくれ。ただし、しっかりとした時にはその時に応じた責任のある態度をとれよ」

那瑠は座っていた机から降り、真斗の背中をポンポンと触ると教室から出ていった。

「なんか深い話でしたね~」

うさぎはいつもよりゆっくり目にそう言った。

「そうだな⋯⋯しっかし、その関係で兄さんの話を聞けたのは意外だったな」

自分の知らない兄の話。英雄譚しか聞いたことない刀士の兄の話。真斗は鳥肌が立っていた。自分はそれに追いつけるのかと。

父との約束は銃士で最強になり、沢山の人を救うこと。現在真双は刀士最強であり、沢山の人を救った。現状被害にある人達の割合を減らすには最高でも真双を超えければならない。

真斗はその楽しみという興奮と自分の無力さ、恐怖に鳥肌を立たせていた。

「そういえば先生が確信して言ってましたけど私達のチームって大雑把で無責任なチームなんですよね?それって良い意味ではなくないですか?」

桃が疑問を口にする。

「確かに今回はそれが役に立ちました。円太くんの心を明るく出来ました。けどそれは円太くんの場合だったわけであって、それ以外は適応されませんよね。それって今後私達が強くなるためには治さないといけないんじゃないですか?」

桃の言葉に真斗は確かにと思った。

この世界は円太の時のように上手くはいかない。そんなのはわかってる。円太が女の子の友達を守ろうとしたが円太郎はボコボコに殴られてしまった。それが特にそのことを表している。

でも、今の特徴も活かしたい。

真斗達は少し考え込んだ。

だが

「そんなの僕らがなんでも適応出来るチームになればいいじゃないだけですか?」

時雨が真斗が考えようとした瞬間に意見を発した。

「だって僕達は武器がそれぞれ違って様々な戦いが出来る。ということは会話とかそこら辺でも様々な事柄に対応出来ますよね?それを活かせば別に今の特徴活かしすぎないでもいいですし、しっかりとした時にその時に応じた事が出来ると思うんですけど⋯」

真斗達は「おぉ」と納得した。

確かに真斗はチームを組んだあとそういうことを感じてはいた。

なんで戦いだけではなく、それ以外にも活かせると考えれなかったのだろうと真斗は悔やんだ。

「そうだな⋯てかそれがすぐに思いつかなかった時点で結構偏りが出ていて対応できてないわけだよなぁ」

真斗は思ったことを口にしたが

「真斗さん」

桃が真斗の名を呼んだ。

「真斗さんは1人で抱え込みすぎです。今の時雨くんの言葉はチームで対応出来るようになればいいと言っているだけです。ですからそこまで自分を追い込まないでください」

桃はニコリと笑った。

真斗は真双の話を聞いて焦っていた。自分の無力さなどに。そして追い詰めしまっていたが

「あぁ⋯そうだな。ありがとう」

仲間のおかげで自分は追い詰めすぎる必要もなくなり、真斗は仲間は凄く大切だと深く思った。


次の日放課後、真斗は電車に乗っていた。

電車は赤い線で「武器使職 銃士本部行き」と書かれていた。

(あぁ⋯疲れた。今日が初めての授業やったしなぁ。なんか体が怠けてるというか⋯今後体のリズムを治していかなきゃな)

真斗は肩を落としながら混み混みの電車の中で吊革に手をかけてもたれながら思う。

(はぁ⋯おつかいねぇ。なんで銃士本部に行かなきゃなんねぇのかな。おつかいじゃねぇじゃん。)

真斗は学校の休み時間に那瑠から

「真神。今日、銃士本部にとあるものを取りに行かねばならぬのだがあいにくこっちは仕事が入っていてな。代わりに取りに行ってくれ」

と頼まれた。

真斗はなんで人の仕事をやらんといけないのだと拒否の意思を示したが

「将来貴様が世話になる場所だ。折角だから見に行ってこい。こちらからはうちの生徒が代わりにおつかいししに行くと伝えておくからな」

真斗はこれでも拒否ろうとした。だが、一度銃士本部に行ってみたいという気持ちが心の中にあったため、結局引き受けることにした。

その関係で今この電車に乗っている。

現在、電車は午後十六時ほど。

外はまだ明るいが、この時間は学校帰り、そして早めの退社が義務付けられている社会人が多いためそこそこ混んでいる。だが、それにしてはかなり人が多い。いつもは真斗がキツいと思ってしまうほどこの時間帯は混んではいない。

少し真斗は疑問に思った。

だがその事について考えても全く予想すらつかないため考えるのを諦めた。

すると考えなくなった途端、かなり暇になったので、電車の中で放映されているニュースに目をやる。

「今月、インサニティーによるテロが増加しております。ビルや電車の占領、そして学校など様々な公共機関に被害をもたらしています」

「インサニティーは人間の造りとほぼ変わらないため知能があります。そのおかげで彼らは様々な行動手段を行使し、私達に被害をもたらしています」

「インサニティーは何故私達を狙うのでしょう?」

「さぁ、それはわかりません。彼らが現れて数百年経った今でも、彼らはどうやって生まれるのか未だにわかっておりません。唯一考えられるのは一種の病気で人間が凶暴化していることでしょう。ですが発見されている人の中には戸籍登録が存在してない人もおり、それが本当かはまだ確証されておりません」

キャスターと専門家がインサニティーについて話していた。インサニティーは正体不明の狂者。数百年前にインサニティーが初めて出現し、大勢の被害があった事件の記録では「インサニティーはいつの間にか街に存在していた」と出現方法は不明という趣旨の言葉が書かれていたらしい。

(元々普通の人間だったら可哀想だよな。そんな病気みたいなのにかかって自分の意思ではないのに人を殺してしまうんだから。ホントに⋯俺らにそれを防ぐ方法はあるのか⋯)

真斗はもしインサニティーが病気によってなるものであった場合、自分の意思ではなく、その病気のせいで人を殺してしまう人を可哀想だと思った。

例えばだ。冤罪で捕まった人が死刑になるとする。すると人はどう思うだろうか?加害者は自分が捕まらなくて喜ぶだろうが、それを冤罪だと知っているものは大半可哀想だと思う。余程のマッドサイエンティストのような人格ではない限り。

(まぁ⋯俺らの代でその真相がわかればいいんだけどな)

真斗はそう思った。

「駅が止まります。扉の前にいる方はなるべく多くの方が入られるよう奥にお詰めください」

電車の中でアナウンスが鳴った。

そして停止する。

沢山の人が電車から降り、沢山の人が電車に乗ってきた。

かなりの人が降りたはずなのに何故かは増えたような気がすると真斗は思った。

人が乗ってきた影響で真斗は人と人によるサンドイッチ状態になった。

(キッツ⋯!!!)

真斗が苦しさを顔に表しながら、顔を横に向ける。

すると真斗の目に妙な人影が見えた。

(あれは⋯)

そこには黒いフードを着た男がいた。あまり他の人は混みすぎて気にしていないようだが、流石に怪しすぎるという意味で目立っていた。

真斗は怪しみ、その男を観察する。

電車が動き出した。

真斗は少し体勢を崩す。

「すいません!」

体が他の人にぶつかったため、真斗はその人に謝罪する。

その人は「大丈夫ですよ」という気持ちを示した。

それを確認した真斗は引き続き黒フードの人を監視した。

(まさかインサニティー!⋯⋯んでもなんでここに?)

インサニティーは戸籍登録されていない者もいる。だがここは電車という公共の場だ。流石に監視カメラに映ってしまうため容姿がわかってしまう。そうなるとすぐ見つけることが可能になる。

(もしあの人がインサニティーだとしてもここで行動を起こすことは難しい。だってここには監視カメラがある。大勢の人がいる。そんなことになったら圧倒的に不利だ。流石に・・・違うとは思うんだけどな)

そう真斗は予想した直後電車が止まった。そして先程と同じアナウンスが流れる。

人が沢山降りていったが、だが先程のように沢山の人は乗ってこず、少し電車内はスカスカに空いた。

すると黒フードは手を動かした。

その直後電車は発車アナウンスを流す。

黒フードの手には黒い棒のような物が握られていた。

電車は発車した。

するとその黒い棒は銀色に輝いた。

電車の反動で真斗は体勢崩す。

そして銀色に輝く物は、黒フードの前にいる男の首を

ズサッ!

と通り過ぎた。

ブシャア!と血が勢いよく吹き出した。

その時真斗は体勢を戻しながら少し時間が遅くなったように感じた。

「キャァァァ!」

乗客が悲鳴をあげた。

そして車内は混乱に陥る。

(マジかよ!このクソが!)

真斗はかなり焦った。

(この時のために銃は持ち歩いているけども早速使うのはキツい。それも沢山乗客がいる⋯ここで攻撃するのは難しい)

真斗はそう思い、乗客を誘導させようとした。

「皆さん!後方へ避難してください!」

真斗がそう叫ぶと大勢の人が後ろの車両へ避難し始めた。もちろん、黒フードの前にいた者もだ。

だが黒フードは後方へ避難する人を攻撃しなかった。

(⋯その男の人だけだったのか。標的は)

真斗がそう思った瞬間、最後の一人が黒フードの前を通ろうとした瞬間

シャッ!!!

鋭利な物が肉体を擦切るような音がした。

ブシャアァァァ!!!と勢いよく血がまた吹き出る。

(⋯クッソ!甘く見すぎたか⋯)

真斗は悔やみ、黒フードを見つめる。

「はぁ⋯お前銃士学校の生徒だな」

黒フードの男はフードを下ろしながら真斗に言った。

するとフードから現れた皮膚には螺旋状の痣が浮き出た。

「お前⋯インサニティーか!」

「あぁ。運が悪かったな少年。貴様のさっきの誘導には少し感心したよ。よく若いのにそんな行動が出来るなってな。だが残念だ。もうすぐその事は無駄になる」

男は真斗に血が垂れ落ちる刀の先を向けた。

(やばいな⋯)

真斗は銃を構え、体から赤いオーラを放った。

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