第5話 ロリババア教師と新しい仲間
波乱の入学式から次の日。
真斗は自分の寮部屋を出て、学校に向かっていた。
それもそうだろう。《真斗は銃士学校に喧嘩を売ったのだ》。二階に座っていた謎のご老人が試験の感想について質問してきた。それを真斗は正直に答えたのだが、それは銃士や保護者など色んな方々に反感を買ってしまうような内容だった。
だが真斗は後悔していない。なぜならそれは自分が完全に銃士になったとき、そしてなった後も最強であり続け、多くの人々救うという夢(というよりかは父との約束)の為だ
った。
このことに関しては時雨は知らない。真斗の親は仕事の為来れなかったようで幸いその日には何も聞かれずに済んだ。
(めっちゃ気まずい。教室に入るのめっちゃ気まずい)
そう思ってしまうのも仕方がない。一日経ったとしても強烈な視線はまだ真斗を当て続けていた。
(んまぁ、別に俺は正しいことをしたとは思ってるし⋯ただ他の人は不快に思っただろうなぁ⋯)
少し不安で心臓がバクバクと鳴りながらも真斗は学校(詳しく言うと教室を目指し歩く。
真斗は教室と思われる部屋の扉の前に立った。
中からは少し騒がしい声がしている。とても楽しそうな声だ。
「えーと1-Aは⋯⋯ここだよな?」
標識は「1-A」と表記されている。
真斗と時雨は合格通知の紙にはAクラスであると書かれていた。
それで真斗は
「こうやって不安になるなら、時雨と約束してこれば良かった⋯」
と肩を落とし、悔やみながら独り言を吐いた。
だが立ち止まってる訳にも行かない。「何故入らない行けないのか」と自分に問いてもわからない。しかし、「否定理由もあるか?」と考えてもわからない。
何となく運命のせいと決めつけ、 真斗は扉を開いた。
扉の先には約30人ほどの生徒がいた。そして入ってきた真斗をジロジロ見始める。
(あぁこれは嫌悪感丸出しの顔で見られるかな)
真斗はそう思い、教室にいる生徒を見渡す。
だが、誰も嫌そうな顔では見ておらず、驚いた顔で見てるものが大半だった。一部無表情もいるが。
とりあえず、真斗はため息をわざとつく。深呼吸をここで着くとなんか違和感があると思い、真斗は変わりにため息をついたのだ。
真斗は自分の机を探し始める。
(マジでどこだ?)と思った真斗だったが
「おーい!真斗!ここだぞ、お前の机」
と聞き慣れてはいないが聞いたことのある優しい声が聞こえた。
「お、時雨」
そこにいたのは時雨だった。時雨とは昨日ぶりの付き合いだ。まぁ入学式に空いている席を教えてもらってからだが。
真斗はまるでその時のように時雨に自分の席を教えて貰ったのだ。
「おはよう。ここまで来るの大丈夫だった?」
時雨は真斗を心配するように言った。
「別に大丈夫⋯まぁ教室に来れるか不安だったけど⋯なんかあったか?」
「いや、ちょっと怖い黒服の人にぶつかってしまってね。ちょっと脅された」
「めっちゃ怖いやつじゃん!それ!」
時雨は来る途中、黒いリムジンの近くに集まっていた黒服の男がその場を離れた際、教室の位置を間違えないように持っていた紙をガン見していた時雨にぶつかってしまったのだ。
黒服の男は日本語ではなく、どこかはわからないが外国の言葉を話していた。
困った時雨は怯えていたが。
「だけど、そこにいる子が素晴らしい対応で黒服の人を説得してくれたんだよね」
時雨はそういうと自分の後ろにいる人を見た。
それを見た真斗は時雨の視線の先を追う。
そこにはピンク色の髪で明るいオーラを纏っているように感じさせる女の子がいた。
「紹介するよ。この子は
時雨はそう言うと桃と呼ばれる女の子は立ち上がり、お辞儀をした。
「初めまして。真神 真斗くん。私は先程説明があった通り、《あらざき》新崎
少し真斗は驚いた。
「なんで名前知ってる?」
「いや、昨日のあなたの有志を見まして。すごく感動して出来る限り調べさせてもらいました」
桃は笑顔で返答した。
(いや怖い!出来る限りとか!もしかしたら体の隅々まで⋯なんて)
そう思ってしまい真斗は恥ずかしそうに体を隠す。
「別にあなたの体についてはまだ調べてませんよ」
そう言うと真斗に近づき
「まぁまだですけど」
と耳元で小さく呟いた。
真斗は少し険しい顔をしながら、去っていく桃を見た。
その後、桃は知り合いなのか知らないが他の子に挨拶をし始めていた。
「なんか⋯⋯怖いな」
真斗はゆっくりめで時雨に言った。
「まぁわからなくもないね。助けてもらった時も凄く可愛らしい笑顔で黒服の人と外国語で喋ってたけど⋯⋯なんか黒服の人、凄く怯えてたね」
果たして桃はあの時何を言ったのだろうか?
気になる気持ちもあるが、逆に知るとイメージが正反対に逆転してしまいそうなので真斗はとりあえずその事について考えるのをやめた。
「とりあえず、リュック横にかけて座れば?」
「あ、あぁ、そうだね。いきなりインパクトあり過ぎな事起きちゃって座ること忘れてたよ」
真斗は微笑しながら言うと、リュックを椅子についているフックにかけ、ふぅ~とため息をつきながら席に座った。
すると扉が開いた。
少し妙だった。
扉が人の力で開けられたように見えなかったのだ。
そして、その不思議な開け方で出てきたのはまさかの《幼女》だった。
「「「は?」」」
真斗を含め、ほぼ全てのここにいる生徒がそう思った。そして言葉に出した。
ここは学校だ。まぁ多少背の小さい可愛らしい女の子がいても仕方がない。だが、その幼女のような体型の女はまさかの制服ではなく、教師用の服だった。
この武器使職の学校教師は特別な日にはまるで男の子が目を光らすような軍隊服を着る義務がある。
その服の影響で教師というのはわかってはいるが
(いやいや・・・それはないだろ)
クラスにいる生徒全員思った。
その幼女みたいな教師は教壇の前に立つ。
と言ってもそれじゃあ顔が隠れてしまうので仕方なく、ため息をつきながら教壇の上に座る。
「こほん」
教師は可愛らしい咳をした。
「私が
容姿からは想像出来ない上から目線の口調。
それを見た真斗は
(ロリババアだ。これは)
と思った。
「じゃあ、とりあえず自己紹介しろ」
那瑠は足を組みながら、生徒に命令した。
全員困惑していたが、桃が席を立ち、1番初めに自己紹介をした。
「
そして、桃はお辞儀をした。
何とも高貴な挨拶だった。
皆感心し、真斗や時雨は拍手をした。
それに続いて次々とクラスの生徒が自己紹介をした。
そして横にいた時雨も自己紹介した。
「
桃よりかは少し高く、お辞儀をしたが、皆は好意的に受け取り、拍手をした。
だが、少しここで問題が起きた。
真斗の番になったのだ。
知っての通り、真斗は昨日色々とやらかしている。個人としては別に悪いことではないと思ってはいるが、朝の痛々しい視線など、不安をよぎる出来事が沢山あった。
少し緊張しながら、真斗は席を立ち、自己紹介を始めた。
「えーと⋯⋯
真斗は少し声が震えていたが、名前を名乗った直後黙り込んだ。
緊張がピークに達したからだ。
元々、真斗は緊張に強い体質だったが昨日のような大勢の人に恥と捉えられることをしたことが忘れられなく、真斗は自己紹介ではなく、謝罪をした。
「昨日はホントに変なこと言ってすいませんでした!」
真斗は深くお辞儀をし、謝罪をした。
とにかく緊張をほぐすにはこれしかないと真斗は思い、全力で声を出し、全力で頭を下げた。
「おい、真神」
那瑠が真斗に声をかけた。
その言葉で真斗は顔を上げる。
「貴様は何をするためにここに入った?」
那瑠は顔を首に乗せながら真斗に問う。
真斗は動揺した。
何をこの人は試しているんだろうと。
「《人を救う為ですよ》。それも沢山の人を。その為に昨日、あんな恥をかくようなことをしました。《まぁ別に僕はそこまで恥とは思ってないんですけど》」
真斗は緊張を忘れ、声に震えがないしっかりとした声で話す。
那瑠はため息をついた。
「別に最後のはいらんが、お前はあの人に面を向かって自分の想いを伝えた。内容は自分勝手なことではあるが、それでも人のことを思っている内容だった。それは素晴らしいと思うよ」
(なんか褒められた⋯⋯ロリババアに)
真斗はニッコリ笑って褒める那瑠に疑問を抱いたが、周りの生徒が「オォ!」と歓声を上げ拍手をした。
そのせいで疑問はすぐ吹き飛んでしまった。
真斗は少し照れながらも、席に座る。
そして最後の生徒まで自己紹介が終わった。
「貴様らは知っているか知らんがこのクラスは結構優秀な方だ。まぁ一年のクラスはランダムで選ばれるんだが、奇跡的に優秀者が凄い集まった」
那瑠は教壇に座っていたが、教壇の上を叩き、床に足を着いた。
「皆、精々来年の合宿を乗り越えれるよう、足掻いて見せろ」
「「「はい!」」」
クラス全員勢いよく返事をした。
合宿。二年生だけにある特別行事だ。ただこの合宿は普通ではない。ある意味試験なのだ。武器使職の学校は入るだけならばそこまで難しくはない。あえていうならば体力テストくらいが難しいくらいだ。
だが、武器使職はとても凄く敬われる職業だ。
なぜなら、成るのは凄く難しいだからだ。
その一つとして合宿がある。
内容はよく知らないが、その合宿によって精神面を見られ、自主退学するものが増えるという。
だが真斗達はの多くはとりあえず青春を謳歌しようと考えている者ばかりなのであまりに気にしはしなかった。
するとチャイムが鳴った。
「登校日の授業はこれで終わりだ。後で貴様らに振り分けられたIDを見て、ロッカーを確認しろ。そこには教材などが入っている」
那瑠は教室のドアの前に立った。
「くれぐれも明日遅刻するなよ。幼虫共」
と言い残し那瑠は出ていった。
(あのロリババア怖いなぁ。いつか殺されるんじゃないか)
真斗は心の隅でそう思っていた。
「真斗さん」
桃に声をかけられた。
「なに?」
「真斗さんって武器はもう決めましたか?」
(武器⋯⋯そういえば貰ってないな)
真斗はずっと武器(銃)は学校から配られるものだと思っていたが
「この学校、銃の種類を明日選ぶらしいんですけど、真斗さんは決まってないんですか?」
桃は綺麗なピンク色をした髪を揺らつかせながら真斗に聞く。
「全く決まってねぇー・・・桃は決めたのか?」
真斗はそういう制度を知らなかったため、答えることは出来なかったが逆に桃はどうなのかと気になり問いてみる。
「私はライフルとかの遠距離系ですかね。昔から持ってみたかったんですよ」
桃はご機嫌ながらそう言った。
「僕はショットガンにしようかな。近距離好きだし」
突然話しかけてきたのは時雨だった。
「個人的には遠距離だと近くに来られるときついからやめようかなって。あとは遠くで隠れてるやつとか見つけるの下手だし」
時雨は自分を呆れるように鼻で笑った。
「私は得意ですよ」
「そういえば調べるのが好きだっけ?それなら得意かもな」
桃の言葉に真斗は関心しながら反応した。
「とりあえず明日一緒に動きませんか?なんか訓練はチーム戦らしいですし」
桃が話を持ちかけてきた。
「チーム戦?」
「はい。街をパトロールするらしいです。武器を慣らすという目的らしいですがなんかチームって四人体制らしいんですよね」
真斗の疑問に桃が答えた。
(あと一人必要なのか)
真斗は時雨しかこのクラスの者を知らないため、あと一人の枠を埋めれる者の見当がつかなかった。
「そこは桃にお願いしてもいいかな?」
真斗は桃に向かってお願いした。
「俺は時雨しか知ってる奴いないし、さっき大勢に話しかけてた桃ならなんかできるかなって」
真斗は少し自分には友達が少ないなのかと恥ずかしくなりながらも頑張って根拠を述べてみた。
「わかりました。頑張りますね」
桃の返事に真斗はコクリと頷いた。
そして窓を見た。
(武器を慣らすって⋯⋯初っ端から武器を振り回すのか?)
自分の無知さが少し恥ずかしく、心の隅でそう思っていた真斗だった。
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