第2話 デート?

クリスマス当日。

真斗は駅の改札前の柱に体重を乗せながら零を待っていた。

「結構早く着いたな⋯いやぁ、まさかあんなにも調子よくいくとはな」

あの日に交わした零との約束。そのために真斗は2週間珍しく教科書を読み直し、ノートにまとめ直し、問題を解きまくるという事を必死に行っていた。

「真斗。大丈夫?」と真斗の母に心配されてしまうほどだ。それだけ真斗は勉強をしてこなかった。そして、テストが終わり結果発表の日


真神 真斗 25/160位


まさかの40位をすっ飛ばし、真斗自身考えられなかったほどに順位が良かった。

とりあえず、零との約束を果たした真斗だったが

「あ、奢ってもらわなきゃ」

完全に褒美を忘れていた。

正直、約束守らないと殺されると思っていた真斗にとっては「殺されない」ということが1番のご褒美だったが

「なんかクリスマス買い物行きたがってたし⋯んじゃ誘うか」

ということですぐ零の携帯に電話をかけた。

「マジで!?いくいくいくいくいくいくいくいくいくいく!」

とすごい乗り気でOKを出された。

なのでここで待っている。

「おまたっせ!」

と零が勢いよく真斗の腹に飛び蹴りを入れてきた。

「グハッ⋯がっ!」

すごく痛そうにお腹を抑えながら腰を下ろす。

「あ、ごめん⋯ペロッ」

と零が舌を出しながら謝ってきた。

「あのさぁ⋯⋯こっちは殺されないようにテスト頑張ったのになんで殺されかけてんのかなぁ。この殺人ゴリ」

「はい?なんて言った?」

すごく笑顔で真斗を睨んだ。

真斗はそれを見て「はぁ」と息を漏らし立ち上がる。

「んでどこ行きます?」

「うーん⋯⋯買い物!」

「それはわかってる。具体的に」

「ショッピングモール」

「あんま変わってない!」

「えーと⋯⋯最近ここの近くに出来たショッピングモールあるじゃん?そこに行ってから決めよ?」

ほんの数日前に駅前に出来たショッピングモール。

かなり広く、店が約100店舗ほどもしくはそれ以上ある。

「そうだな。まぁとりあえず?何を奢ってもらおうが決めないとな~?」

真斗はニヤリとしながら零の顔を覗いた。

「うっ⋯⋯⋯⋯いいから行くよ!」

少し恥ずかしそうに零は歩き始め、真斗はそれに付いて行った。


ショッピングモール内。

「おぉぉぉおぉ!」

零はすごく声を張り上げた。

ショッピングモール内は大きなシャンデリア。その近くに巨大なクリスマスツリー。それを橋が囲んでいた。

「これはすごいな。俺らんとこ結構田舎だもんな。」

真斗は周りを見渡しながら感心した表情を示す。

「そんな悲しい事言わないで⋯結構JCにはキツいんだよ。その言葉」

零は肩を落としながら言った。

「は?⋯俺にはよくわからん」

「ですよね~男子にはわかんないですよね~」

零は真斗に呆れていた。

真斗は少し苦笑いした。

すると通り人が

「すごい仲良しカップルだなぁ」

幼馴染の間柄。その馴れ合いを人の前でやっているとラブラブなカップル。もしくは夫婦にしか見えない。

その声を聞いた零が顔を赤く染め

「よし!行くよ!」

と真斗を先導した。


映画鑑賞。洋服。ご飯。

真斗達は色々堪能していた。

そして楽しんでいるとやがて夕方になっていた。

真斗達はショッピングモールのテラスにあるベンチで休憩をしていた。

「疲れたね~。もう足が麻痺してきたよ~」

「そうか。楽しそうでなによりだ」

足をブラブラさせながら座っている零を見て真斗は微笑んだ。

「何笑ってるの」

「いやぁ、幸せそうでいいなと」

その言葉を聞いて零は少し黙り込んだ。

真斗は首を傾げて不思議そうに零を見る。

「このまま幸せが続くといいのにな⋯今はインサニティーが、世界で事件起こしたりしてそれに巻き込まれたらと思うと」

少し零は涙目になった。

「もしかして⋯⋯俺のことを心配してくれてるのか?」

前から父親に刀士になれと言われていることを話しているため、もしかしたら今のように楽しく遊ぶことが出来ないんじゃないかと心配してくれているのだと真斗は思った。

「まぁ・・・真斗はお兄さんみたいに刀士になるの?確かお兄さん現代の宮本武蔵とか二刀流の英雄だとか言われてるほど凄いんでしょ?」

その言葉に真斗は頷いた。

「5年前、海外のインサニティーが起こしたテロを1人で解決してね⋯⋯⋯⋯」

真神 真双。真斗の兄で凶暴化した人々インサニティーやその他の警察等では解決出来ない武力を使った事件を解決する刀士という仕事をしている。

5年前。インサニティー100人余りが起こしたテロ事件。真双はそれを二つの刀を使って全滅、解決し、二刀流の英雄と呼ばれるようになったが

「でも今は行方不明でいない。確かに僕が刀士になったら、兄さんの代わりになって、人助けができるかもしれない。けど、余りにも兄の功績が大きすぎて重荷になってしまうんだ。」

兄の功績は凄すぎ、現在行方不明になった兄の代わりになれば人は安心に暮らせるかもしれないが、兄のように強くなれるか分からない。

それがすごく真斗には重荷だった。

「刀士になると重荷っていうことは⋯他でもいいんじゃないの?」

「え?」

涙の跡が残る笑顔を真斗に見せながら零は言った。

「なら銃士でもいいじゃない?昔、よくエアーガンとかで撃ち合い勝負したじゃない。懐かしいなあ。8歳の時さ、私が弓道をやってたっていうのもあってどちらが動体視力がいいかとかで対決したよね。まぁ最終的に追い抜かされちゃったけど」

零は手をもぞもぞ組みながら下を見て言った。

「私はさ、君のお兄さんみたいな私達を守ってくれる人。すごく好きだな」

下を向いていた顔を真斗に笑顔を見せながら言った。

その言葉が真斗にすごく心に刺さった。

「そうだな⋯⋯そうだよな!」

真斗は零の肩を持って零の体に向き合う。

「ヒエッ!」と頬を赤くしながら零は驚いた。

「俺は銃士になる。そして⋯⋯お前とこうやって遊べるように⋯⋯幸せに感じるように努力する!」

真斗は真剣な表情で零に決意表明した。

真斗の大胆な行動に恥ずかしかった零もその気持ちを受け止め

「うん」

と優しく微笑んだ。


「ただいま」

真斗はあの後、零を家まで送っていき家に帰ってきた。

「おかえりなさい。どうだった?零ちゃんとのデ・ー・トは?」

真斗の母はすごくニコニコしながら真斗聞いてきた。

「あぁ。楽しかったよ」

真斗は着ていたコートを脱ぎながら言う。

完全にコートを脱ぎ片手でコートを持った瞬間に

「あ、父さんいる?」

と母に聞いた。

「え⋯⋯一応帰ってきているよ。今テレビを見てる」

「わかった。ありがとう」

真斗はコートを近くのクローゼットにかけるとそう告げ父のいる方へ向かった。

「父さん⋯⋯話がある」

「なんだ?」

普段着を着て、テーブルに左肘を付きながらテレビを見ている父がそう返事した。

「刀士になれっていう件だけど」

真斗が言った瞬間、父は驚き、その後ニヤリと笑った。

「なんだ?心変わりして刀士になることを決意したか?」

「いや」

真斗の言葉を聞いて、父は少し顔を顰めた。

「刀士じゃなくてもいいかな?」

「どういうことだ?」

父はあまり内容を察することが出来ず、率直に真斗に聞いた。

「刀士であると、兄さんの影響ですごく荷を背負ってしまうだから・・・」

真斗は少し黙り込んでしたに俯く。

(なんて言われるかわかんねぇけど!)

真斗は決意して顔を上げる。


「《銃士になりたい》」


と力強く告げた。

「ほぅ・・・兄の影響による責任だけで銃士になるのか?」

父は何かを試しているかのように真斗に問う。

その事は真斗も感じていた。

「いや・・・銃士は沢山ある防衛系の職業の中で1番最弱と聞いている。だから」

真斗は大きく深呼吸して言う。

「それで銃士最強になって、刀士や拳士などよりも成果を、人を助ければ父さんはそれでいいだろ」

真斗は強く言い張った。

その息子の言葉を聞いた父は少し俯いた。

そして顔をあげ言う。

「銃士最強にはならなくていい。だが⋯⋯助けられる人は必ず助けろ。いいな?」

父は笑顔で真斗に褒める時に見せる笑顔で言った。

真斗は嬉しくなった。

「わかった!絶対その約束守ってみせる!」

そう真斗が宣誓すると、父が拳を差し出してきた。

父は真斗に顎を突き出して「ほら」と合図をする。

父は必ず約束をする時、拳を重ねて約束をする。

兄 真双が刀士になる時もそうだった。

その事を思い出し、真斗は笑顔で

「おいよ」と拳を重ね合わせた。

「成長したな。真斗」

父が褒めた。

「あぁ、当たり前だ。二刀流の英雄の弟だからな」

と真斗が応える。

「さっきそれが重荷って言ってたのにな。そういうところは成長していないな」

父が笑いながらいじってくる。

それをされて「うるせぇ」と笑いながら真斗は返した。

その光景を母は嬉しそうに見守っていた。

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