第1話 真神 真斗

雪積もる季節。周り一面真っ白になる季節。

学校帰りの学生、雪遊びする子供、腕を組みながら歩く子供など沢山の人が歩いていた。

「真斗?マトくん!!!」

黒髪で学ランを着、マフラーを首にかけた真斗は声をかけられ、まるで電流を流されたように体を震わせた。

声の主は少し背の高い女子。茶髪で首にマフラーをかけ、バックと長細い何かが入った袋を持っていた。

「びっくりさせんなよレイ。」

「いや話の途中にボーッとしてるのが悪いと思うんですけど?え?違います?」

零はすごい可愛らしい笑顔で真斗を睨みつけてきた。真斗と零は幼馴染という関係である。年少の頃から二人は揃って遊んでいた仲だ。

「そういえば、もうすぐクリスマスだな。」

「話を変えんな。逃げんな。殺すよ?」

真斗は困った顔をした。「殺す」と女子に脅されたこともだが、幼馴染の女の子に言われるというのは男にとってものすごく天敵なのだろう。

「いや、流石に殺さないでほしい。これでも結構昔に死にかけてるからね?まぁ兄さんと遊んでてだけど」

「まぁ死にかけてるならいっか」

「お前本気だったのか⋯⋯」

真斗は苦笑いしながら街を見渡す。

もうすぐクリスマスということもあり、街は赤や白を模様した看板や車。宣伝で紙を配っているサンタなど色々いる。

「クリスマスかぁ⋯⋯どっか行く?」

零が話を持ってきた。

「彼氏彼女っていう関係でもないのに・・・わざわざ勘違いされに行くのか?」

「失敬な!!!!!!」

零は顔を真っ赤にして

「何?私みたいな彼女はイヤってわけ?何?自分じゃ迷惑かけるからヤダだから?何?何?何?そもそも私のこ⋯⋯」

早口で様々な問いかけを真斗にしていた零だったが「こ」という言葉を発した直後黙り込んだ。

(何を言おうとしたんだろう?)

真斗は首を傾げた。

「もしかして殺すだったりする?」

適当に真斗は思い当たる言葉を言ってみた。

「なんで私の殺すなのよ!意味が分からない!そもそもだけど私を殺人鬼呼わばりするな!」

「いや、さっき俺を殺すとからさ⋯⋯」

「別に⋯⋯ホントに死んでほしいとか思ってないし⋯⋯別に体が死んでくれればいいし」

零は後ろで手を組みながらモゾモゾし始めた。真斗はその行動をすごく悲しい目で見つめる。

「おい、ツンデレかヤンデレどっちかにしろ」

「うるさいわねっ!」

零は怒って自分の顔を真斗に近づけた。そして睨みつけるが自分がものすごく真斗に顔を近づけていること、(零的に恥ずかしいこと)をしているのに気がつき頰を赤くしながら顔を離した。

そして顔が普通の状態に戻った零に真斗はこんなことを聞いた。

「そういえばお前って好きな男いないのか??」

真斗はふつーの人間ならいやらしそうにもしくは照れながら聞いてくるような内容を真顔で言った。

「いや⋯⋯いるけど⋯⋯えっと⋯⋯」

零はまた頰が赤くなった。

(何でこんなこと⋯⋯聞いてくるのよ⋯⋯言えるわけないじゃないだって⋯⋯)

零はこのまま真斗が好きということを考えてしまうと自分の気持ちを伝えそうになり、そのことが恥ずかしく考えないようにした。

「クラスの奴か?イケメンの高城とか?」

真斗はとりあえずクラスで屈指のイケメンと認識している高城という男を例に挙げてみた。

「いや、あいつすごいムカつく」

零はかなりの嫌悪を示した。

「なんで?あいつ結構良い奴だぞ?今日だって女子が体育で怪我してたのを運んでたじゃねぇか?」

「あれは演技だよ。昔、あいつが女をおもちゃだみたいな発言してたから・・・それがあってすごい嫌いになった」

(初耳過ぎてすごく鳥肌立つんですけど)

と真斗は驚いた。

すると零が

「んじゃあ、アンタはいるの!?」

と聞いてきた。なるべく話を帰る方向に持っていかないと自分が自爆することになると思った零は少しでも路線が変更できるように努力しようとしたが

「そりゃあ、いるわ。そんなもん。」

零ビクンと心臓がなって苦しそうにまたもや頬を赤くした。

「えっっじゃぁあ誰なの?」

と少し苦しそうに聞いたあととんでもない言葉が帰ってきた。

「そりゃお前に決まってんだろ?」

ビクン!!!!!とまるで銃弾が心臓の中から発砲されたように痛くなった。

「え⋯⋯⋯⋯え。」

まさか好きな相手に告白されるなんて⋯⋯とすごく零は感動した。

「だって幼馴染だし、女友達お前しかいないし」


バンッッ!


「イッタァァァ!何すんだよ!」

真斗は零に思いきり、頬を叩かれた。すごく痛かったらしく叫んだあと顔を腕に埋めるように痛みを堪え始めた。

「聞いた私がバカだった⋯⋯アンタはいつも私が嬉しがるような勘違いしてくれるわね⋯⋯」

「え?嬉しくないのか?」

「別に嬉しくないわ!もう死ね!」

「えぇ⋯⋯」

真斗はすごく反応に困った。友達と思っていた奴に「友達と思われても嬉しくないわ!」という趣旨の発言をされたからだ。ホントに真斗は零の心が読めなかった。零は何故真斗が恋愛対象として好きという話をしているのに、友達として好きかどうかという話に変えたのか不思議に思った。真斗の行動ら流石に最低と呼ぶには酷かった。

「んでさ」

真斗はほっぺたを抑えながらその場を立ち零と歩き始めた。

「遊びに行きたいところとかあるのか?」

真斗は零に聞いた。零はとりあえず先程の「友達と思われても嬉しくないわ!」という趣旨の言葉を忘れたかのように話を続ける。

「うーん⋯⋯ショッピングモールとかでお買い物とか?」

先程怒ってたとは思えないほど普通に答えた。

「そんなもん一人で行けばいいだろ?」

「1人じゃ寂しい⋯⋯」

「ほぅ⋯⋯ってかそういうキャラだっけ君?」

真斗は零にいやらしい顔をした後、先程の強気な姿勢から弱気な姿勢に変わったのが突然過ぎて動揺を感じていた。

真斗はこれが零の弱みなんだなと理解した。

かなり長い時間一緒にいても案外零の弱みはわからなく初めて弱みを知ったことで真斗は結構面白がっていた。

「何よ⋯⋯いいじゃない別に」

(ホントは嘘だけど⋯⋯真斗の性格上こういうのは放っておいてくれないから利用するしかないよね)

零は真斗と遊びたいからとはいえ、流石に演技するのは恥ずかしかったが

「んじゃあ行くか?」

その真斗の言葉で恥が吹き飛んだ。

「ホントに?」

「あぁ。そんぐらいいいだろ?お前には結構世話になってるし、こんぐらいさせてくれ」

零はすごく嬉しかった。

(やっぱり優しいし楽しいな⋯⋯真斗といると)

「そういえばお前は今日剣道場。行かないののか?」

とひと段落ついた頃合に真斗は零に気になっていたことを聞いた。

「まぁね、今日は家の手伝いあるからね。」

「珍しい。いつもは成績上位維持してるぜっていう風にイキリながら剣道場行ってるのにさ」

「イキってないし!大体アンタさ!どうすんの?全然成績取れてないじゃない」

怒りながらも真斗を心配し始める零。

「あぁ⋯ね。まぁ、どうにかするさ」

頭を掻きながら真斗は返答をする。

その光景を零はすごく心配していた。

真斗はかなり勉強出来ない(というよりかはしない)人間で昔から零が「勉強したら?」と言っているものの全くしようとしない。何故かは零にもわかっておらず、真斗の家族はそれよりも重要なことがあるらしく、勉強しろとはあまり言われてないらしい。

「まぁ頑張ってよ。もうすぐテストだし」

と零が言った直後

「んじゃあ、真斗が成績上がったらなんか奢ってやるよ!」

とものすごくキラキラとした目で言った。

「⋯⋯どのくらい成績上がればいいんだ?」

「うーん、アンタはしたから10番くらいだから上位40番くらいに入ればいいよ!」

「うわっ、きっつ」

真斗が言った直後に零は真斗にデコピンをした。

真斗は「うっ」と声を漏らす。

「そう言わない!とりあえず頑張って!」

真斗はこの零の頑張れアピールに流石に負けて

(これは取らないと流石に殺されるかもな⋯⋯⋯)

と思っていた。

「んじゃあ、頑張るわ」

「うんうん!」

2人は約束し、このあと仲良く帰った。


真斗の家

「ただいま」

真斗は旅館かと思わされるくらい大きな屋敷入った。

ここは真斗の家だ。

なんと立派な日本豪邸というべきだろうか。玄関や廊下はかなり広く、そして和風の家独特のい草の匂いが鼻をくすぐる。

「おかえりなさい。ちょっとこっち」

居間から出てきた母が真斗を手招きしていた。

真斗はその通りに母の誘っている方へ行き、誘われた今の中を覗く。

「真斗。ここに座れ」

テーブルの前にあぐらをかいて座っていた真斗の父が言う。

そして真斗はテーブルの前に座る。

「もうすぐ刀士の試験だが・・・お前は将来どうする気だ?」

真剣な表情で父は真斗に問う。

「いつも言っている通り、俺は刀士にはなりたくない。兄と同じ道に進むと期待の荷が重すぎるからな」

真斗はそう答えた。

「なぜそうやって逃げる?私もこの国の防衛機能ディフェンサーの人間だ。この家は代々この国や正しい人々を守るために努力している。そのをお前は断ち切るのか?」

真斗の父はすごく険しい顔をして真斗に問う。いつもは全く怒らなく、真斗が良いことをすると褒め、周りから良い父親と絶賛されるほどだ。

?ふざけんな。インサニティーは元々正常な人間なんだろ?そいつらを助けるのが仕事と言うべきだろ。俺はそういうことを言うお前のことが嫌いだ」

真斗は父親の人格は好きな方だったが、唯一この父の考え、いやこの家の考え方はすごく嫌だった。

母は父親を「お前」と言ったことに対し、怒り始める。

「あなた!生みの親になんてことを!」

だが父に「待て」と手のひらを向けられ、母は黙り込んだ。

「別にお前がそう思うならいい。だが将来お前が危険さらされても⋯⋯⋯⋯⋯⋯

父はとても真剣な表情で言ってきた。

(この顔⋯マジだな)

家族で生まれたことから一緒にいるとなるとこういう顔つきは何を考えているかというのはよくわかる。

だから真斗はこれは嘘の顔つきではないなと感じていた。

「わかった」

真斗は立って部屋に向かう。

「真斗!」

と母親は真斗の背中を追いかける。

その光景を父は真剣な表情で、真剣な思いで眺めながらも、心の中では

(あの子が持っている才能を使わないわけにはいかないが⋯⋯⋯⋯)

家の伝統だからと思いつつも、家族という大切な思いを父は真斗に抱いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る