第18話 魔法訓練その1

お風呂で事務的に洗われた次の日

俺は屋敷の訓練部屋に来ていた


外には訓練場があるのだが今は火山灰を含んだ雨が降っており使えないからだ

訓練部屋の大きさは学校の教室ぐらいあり筋トレ用の道具などが置かれている


「今日はトウヤさんに魔法を教えたいと思います」


パチパチパチパチっと三人分の拍手


「教えるのは私、ペイナとメージュ、ついでにエメラです」


「次いで扱いは酷いと思います!」


そう、今日はいつものメイド二人に昨日会った緑髪メイドのエメラがいる

なんでも「今朝起きたら非番になって暇なんです」っと言って訓練の見学に来た

彼女の普段の仕事は庭の手入れで、雨で出来ないなら屋敷の清掃に回されるのがいつものパターンなのだが

今日降ってる雨は火山灰を含んでいて明日に備えて急遽休みになったらしい


「あなたは明日火山灰の撤去に追われるのですから部屋で読書なりゲームなりしてていいんですよ?」


「ゲームって相手にしてくれる人が居ないじゃないですか」


「そうですね」


「それなら一人で読書してるより先輩達を手伝ったほうがマシです」


「人手は足りてるけどね」


「メージュ、余計なこと言わない」


ペシっと叩かれる青髪メイドのメージュ


「あとで手を借りるかもしれませんが暫くは大丈夫なので見学しててね」


「はい、わかりました」


そんなやりとりをしたあと魔法の基礎授業となった


「まずは魔法の基礎、魔力について説明します」


魔力はこの世界にあって元の世界にはない万能原子だと思われてるが詳細不明

この世界には全ての物質に魔力はあり、この世界で食事することで転移者も魔法が使えるようになる


「トウヤさんは特殊な転生者なので最初(転生直後)から魔法が使えています。

使ってる魔法は身体強化魔法ですが完全無詠唱で使ってますよね?意識的に身体強化魔法を使えますか?」


「使えるけど今やる?」


「お願いします」


《補助しますか?》


(いらない)


基礎段階で補助を付けてたらいつまで経っても魔法を使える気がしない、それじゃダメだろう

身体強化魔法を使ったときは………


《身体強化発動確認》


なんとなくできたが感覚としては人間の潜在能力を使うときに似てる?

……これ負の感情を起爆剤にして使うから戦闘(ケンカ)以外で使うと暴れたくなって仕方ないな


「ありがとうございます。その状態で力の加減などはできますか?」


「やったことないから分からん」


「では、明日にしましょう。室内でやるには危険です、身体強化を解除してください」



《身体強化解除》


「魔法は使えるようですが、まだ魔法に振り回されてますね。ただ魔法を使ってるだけです、使いこなすぐらい出来て初めて魔法が使えると言えます」


「じゃ、続きは私がやる!」


途中割り込んできたのは青髪メイドのメージュだ


「メージュ、私が教えてるんですよ?」


「理論は教えた、なら実践は私の出番!」


単純な戦力順だとメージュ>ペイナ≧エメラなので間違ってはいないように思える

実際に理論とか飛ばして覚えたメージュは感覚的なことを教えるのに適している


「う~ん、魔力の操作方法とか感覚的なことが多いからメージュ先輩の方が適任ですね」


「…エメラが言うなら変わるけど大丈夫?」

「大丈夫」


最初は魔力操作というものを学ぶと思ったが、魔力と言うものは見えない(感じることはできる)ので見えるように簡単な魔法を教わって

魔法を操る過程で魔力操作が上手になっていくのがいいらしい


「じゃ、簡単な魔法を教えるけど使うのはライトの魔法でいい?」


ペイナもエメラも大丈夫と頷いている


「最初は呪文を使って発動させる、慣れてきたら無詠唱で、無詠唱も慣れたら完全無詠唱に挑戦!ライトの魔法なら完全無詠唱でも難しくないからトウヤなら大丈夫!」


詠唱は呪文+魔法名、無詠唱は魔法名のみ、完全無詠唱は無言で発動可能になる


「いくよ、………………光あれ」


ブフゥー!!聞いた瞬間三人して吹いてしまった


「聖書、創世記の有名なセリフじゃねーか!!」


「メージュ!変なタイミングでふざけないの!!」


「先輩、それはどうかと思います」


今のは完全無詠唱に別の間違った呪文(冗談)を言うという完全無詠唱が使えるのを利用した高等テクニックなんだが、

青髪メイドのメージュが無駄にギャグに走った結果、三人から非難されている


「ちょっとした冗談なのにみんな言い過ぎ」


「次は真面目にやってくださいね、メージュ!」


「………………呪文ってどんなだっけ?」


「まさか……」


ライトの呪文ぐらいだったら使わないほうが多いですから忘れてしまったのですね」


「事前に忘れてる呪文は本で思い出しなさいと言っていたでしょ!」


「忘れてた!」


「メージュ、そこで正座!」


メージュが庇ってほしそうにチラチラこちらを見ているが自業自得なのでペイナに任せる

そのまま暫くメージュがお説教されたので訓練は中止されたままになった

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