第16話 検査
「あの、今7時ぐらいなんだけど外が明るいのは何でだ?」
「それは今が白夜の時期だからですよ」
「白夜ってあの白夜か?」
「はい、一日中、日が沈まない白夜ですよ」
《ここは北極圏の白夜や極夜がある地域です。呼ばれた夏至の日から後一か月ほど太陽は殆ど沈みません》
「なるほど、白夜の時期って…」
そんなことを話してると廊下から足音が聞こえてきた
「トウヤ様ー、ご飯できましたー!」
小走りで来る青髪メイドのメージュ
「メージュ、廊下では走らない!」
注意するため赤髪メイドのペイナが魔法で弾丸ぐらいの弾を作り発射する
それを後ろも見ずに風魔法で迎撃、向きを反転させ反撃をする青髪メイドのメージュ
「ちょぅ!………変な声でちゃった」
思いも寄らない反撃で変な声を出すが、火の魔法で氷を溶かし迎撃に成功する
青髪メイドのメージュは俺に抱き着く様な勢いで腰に手を回し、そのまま俺の後ろに隠れる
「トウヤ様失礼しました。メージュ、トウヤ様の後ろに隠れてないで出てきなさい!」
「ペイナさんどうかしたんですか?」
「それが聞いてください、メージュが………、食事前に話す内容ではないですね」
「?」
「えっと、後で話しますので先ずはお食事を!」
なんだか誤魔化されたがお腹が空いてるので皆で食堂に向かった
食堂ではデドラの爺さんとメイド二人が待っていた
「遅いのう、先に食べてしまおうと考えてたところじゃったぞ」
「悪いな爺さん」
そういって食事が用意された場所に座るが用意されてるのは二人分だけだ
「なんとなく言いたいことは分るぞ、でもダメじゃ。メイドと一緒に食事は取らない、これは常識じゃし慣れてもらわんとのう」
料理があるが数に対してフォークとスプーンが多い
(これはマナー気にしないとダメなヤツだな)
《フォークやスプーンは外側から、フィンガーボールの水は指を洗う物に使ってください》
「まさか、ここで食事のたびにコレじゃないよな?」
「ただの練習じゃ。毎回コレでは肩が凝るのでやらんが一週間ぐらいはやってもらうぞ」
「うへぇ」
まずは前菜(オードブル)から始まり、スープ、魚料理、シャーベット、肉料理、デザートっと言ったコース料理
肉料理というとステーキなどを思い浮かべたが何故かハンバーグだった
「ハンバーグとか異世界人は好きじゃろ?その辺どうじゃ?」
「おいしいな、ソースが元の世界の物にも勝るとも劣らない感じだ」
「ふむ、その様子だと味覚に問題は無さそうじゃな」
「味覚(の問題)ってなんだ?」
「味覚とは舌で感じる味のことじゃ、甘い、苦い、辛い、酸っぱいっと言ったことじゃよ」
「違う!そういう意味で言ったんじゃない、味覚の問題についてだよ!」
「紛らわしいのぅ、味覚の問題というのはお主の顔の問題と同じじゃよ」
「はい?」
「顔が異世界召喚された直後と今じゃ変わってるのは気づいておるじゃろ?顔が変わっておるなら五感も変化しているかもしれないじゃろ?っと言う話じゃ」
「そういうことか、見た目以外変わった気はしないけど変わってるのか?」
「思ったより冷静じゃのう、いいことじゃが、
そんな話をしながらコース料理を食べ時々注意されつつもエイのアドバイスと前世の知識でマナーは合格を貰った
夕食の後、五感のチェックをすると連れてかれた部屋で検査することに
視力検査は前世と同じ方法だったが聴力検査は違った
「トウヤ様、私たちの声は聞こえていますね?」
検査するメンバーは何時もの赤髪と青髪メイドの二人
「聞こえてるな」
「次ですね、失礼します。
両耳が水の中に入ったようになる
これは魔法によって両耳だけに水球を作り覆ってるからだ
「トウヤ様はヘタレって言って聞こえてる?」
「ヘタレって何でだよ!」
「ただの検査、気にしないで」
さらっと暴言を放つ青髪メイドのメージュ
赤髪メイドのペイナは苦笑いだ
次の為に両耳の水球は解除され魔法で乾かされ聞く準備が整う
「次はコレ」
いくつかある笛で聴力検査をすることになった
(最初からこれでよかったんじゃ?)
《耳が水に使った場合、最悪耳が悪くなったまま治らない可能性もありました》
なるほどっとエイの言葉を聞きながら笛の聴力検査をやった結果、視力聴力ともに問題ないどころか常人より良いっと結果が出た
常人がどの程度か分からないが問題ないならいいだろう
触覚の検査は全身触られ感想を聞かれるぐらいで終わり、味覚は問題なさそうなので飛ばされ
嗅覚の検査をすることに
用意されるのは幾つかの香水と薬品と思われるビン
「では、これらを嗅いでみてください」
香水は花の香り、動物性香料、柑橘系の香りなどがあり検査というよりは好みを聞かれてるような検査だった
薬品は消毒液(エタノール)、腐った臭い、刺激臭、酒の臭いなど色々な種類の臭いを嗅がされたが問題は無いみたいだ
だけど一つだけ気になる臭いがあった
黒い液体が入ったビンの臭いだったのだが何というか興奮する臭いだ
そのことをメイド二人に言うと
「それは良いことを知りましたけど、他の人に言ってはいけませんよ」
「そうそう、言っちゃダメだよ。これは人の血だからね」
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