第15話 『希望の書』後編

《寂しいですか?》


(寂しくないと言うと嘘に思えるかもしれないが、寂しくないな)


記憶がない


俺は死んだ、首を斬られ……、いや、正確には喉を掻っ切られ窒息死した

転生して記憶がある方がおかしく、俺には家族や友人の記憶がない

前世の一般的な記憶はあるようでエイが言うにはエピソード記憶がないそうだ


だから元の世界に未練や寂しさなどない、ないはずだ

仮にあったとしても未練ごと記憶を失っている

それが気になるだけだ


気にしても仕方ない問題なので『希望の書』の続きを読む


冒険者ギルドと帰還希望者ことは前読んだことに加えて

細かな注意点が続いてるだけなので割愛

次の項目の魔王について読んでいく

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

この本を読んでる転生、転移者は魔王と言われている存在は知っているだろうか?


魔王とは、この世界の最強の存在だ

恐怖の象徴と言ってもいい


魔王は必ず転生、転移者した異世界人の前に現れる

それも異世界に来て日が経たない内にだ


もしかしたらこの本を読む前に遭遇したのかもしれないが

基本的に魔王は異世界人に釘を刺すことしかしない

圧倒的な力を見せつけ逆らうことの無意味さを思い知らされる


奴らが最初に異世界人に会う場合は圧倒的な力を見せたあと高笑いして去るだけで

何に対して釘を刺してるのか分からないが、、魔王達の行動は邪魔をするな!

魔王達は過去に一人で国を滅ぼした記録がある化け物どもだ


私達異世界人には不思議なほど敵対しようとしないが敵に回すな

異世界チートでどうにかなるレベルではない、繰り返すが行動は邪魔をするな!


これを破って魔王に殺された異世界人も居るがそんなことは些細なことだ

過去何度か数か国の同盟軍を結成して魔王討伐をやろうとしたが全て失敗している


異世界召喚され、特別な力を手にしたとしても、その国の王に頼まれたとしても魔王討伐やるな!

魔王を倒すなんて夢物語だ、例え世界が滅びると言われても魔王と闘うな!


ただし、これは【序列第五位】までの魔王だけだ

最近新しく生まれたとされる魔王は上記に含まれない


一部の者が【序列第六位】の魔王と言っているが一人で国一つ潰した記録はないし、

他の魔王と比べると明らかに劣る


それは【序列第六位】の魔王ヴェスタが元人間だからだ

彼はアンデットとなり人間のフリをして英雄■■■■■■■■■■(塗りつぶされている)を殺したがその程度だ

人に化ける能力は面倒だが正面から戦えば何とかなると言われている


魔王は注意しなければならないが、日常生活で関わることは(一度目を除けば)ないだろう

雑学程度に知っておくのは序列と名前に種族までで充分だ

以下古い順から



【序列第一位】 魔王オントン(種族不明)


【序列第二位】 魔王スライム(スライム)


【序列第三位】 魔王アルリム・トゥトゥ(ドラゴン)


【序列第四位】 魔王リリカ(サキュバス)


【序列第五位】 魔王セキエン(オーガ)


【序列第六位】 魔王ヴェスタ(アンデット)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

魔王の名前が分かったあたりで本を閉じる

この後は魔王が起こした事件などが書いてあったが興味はない


『希望の書』は確かに役に立つことが書いてあった


お金の価値、元の世界との時間の違い、迷宮都市アーバル周辺の危険な魔物、国の武器や兵器、異世界人の影響、冒険者ギルドの成り立ち、帰還希望者たちの希望、魔王と言う存在と危険性

これだけ分かったんだ異世界に来たばかりには十分な知識だ


俺は本を閉じ時計を見る

数字は見慣れたアラビア数字で午後7時を指していた


《時計の見方は前世とほぼ一緒です。違うのは24時(午前0時)から1時間止まるだけです》


高級時計には止まる1時間も表記する時計もあるらしいがこの時計は違うようだ


コンコン


「トウヤ様、夕飯のご用意ができました。」


「ああ、今いく」


案内に来たのはいつもの二人ではなく緑髪のメイド


「はじめましてトウヤ様、私はエメラと申します」


彼女はおかっぱな髪型だがウェーブを入れてかわいく仕上がってる

顔は童顔なので幼く見えるが何となく年上な気がする


「知ってると思うがトウヤだ、よろしく」


「はい、存じております。ペイナとメージュは食事の準備をしてますので私が呼びに来ました。」


そのまま案内されたが何も喋らないのもアレだと思い気になってることを尋ねる


「あの、今7時ぐらいなんだけど外が明るいのは何でだ?」


「それは今が白夜の時期だからですよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る