第10話 死体処理
「本に付いてる防犯用の呪術をトウヤ様の金貨袋に仕掛けました。それに引っかかって毒蛇に噛まれればこの通り」
毒蛇?防犯用呪術?
なんかヤバいものが仕掛けてあったっぽい?
《盗んだ者に発動する呪術です。発動条件を満たしたものが自動的に呪術の攻撃対象になり最悪死にます》
「思ったよりヤバイやつだな!!」
金貨袋を盗んだ少年は泡を吹いて倒ているのを確認したら、周りの目が突き刺さり気になってくると
「トウヤ様!
周りに知らせるよう大きな声で報告し、頭を下げる青髪メイドのメージュ
その普段と違う青髪メイドのメージュに驚きながらも「分かった」とだけ返す
まずは盗られた物を確認しようと肩紐が切れたショルダーバックに手を伸ばそうとすると
野次馬を掻き分けて冒険者と思わしきグループがやってきた
彼等は装備こそ不揃いな物の、皆お揃いの紋章入りの肩当を利き手側に装着している
「俺たちが一番乗りか、野次馬は散れ!見世物じゃないぞ!」
注意を受けるが野次馬は距離を広げるだけで去る気配を見せない
それほど期待していなかったのだろう。周りを一瞥しただけで諦め、少年を一目見た後俺たちに顔を向ける
「失礼、俺、ゴホン、私たちは冒険者ギルドから衛兵の増援として呼ばれた冒険者だ。よろしければ状況を説明してもらいたい」
「状況は簡単、その少年がトウヤ様の鞄を盗んで逃走、条件で発動する呪術を食らってそうなった」
冒険者達は少年が抱えてるショルダーバックの肩紐が切られてるのを確認
さらに大きなハサミを所持しており青髪メイドの言う通り盗品だろうということは明らかだった
「つまり自己防衛だったと?」
「そういうこと」
「そっちの言葉を鵜呑みにするわけには行かないが、少年は?」
「ダメだ、脈はないし呼吸はしてない、回復魔法も掛けてみたが効果はない」
「分かった、首だけ取って保管、他は…「私たちが処理します」」
俺は目の前で話が決まっていくが話に付いていけない
いや、話そのものは理解しているんだが、人が死んであっさり受け入て淡々と処理してるこいつ等が信じられない
《これがこの世界の常識です。力ある者が正義で力無き者は死んでも文句は言えない、生きたいのなら力あるものに従うのがルールです》
青髪メイドのメージュが魔法で死体を凍らせてから首を切断する
死んでると分かってても首を切断されるときには目を逸らしてしまった
「トウヤ様、人を殺すときは目を逸らしてはいけません」
青髪メイドのメージュから淡々とした注意を受けるが、頭だけで理解してると気づいているのだろう
特に咎めることもなく処理を続けてく、それは“持ち運びに不便”だからと死体を持ちやすい大きさに解体していく
周りの人間も興味が失せたようで徐々に減っていく
最初に凍らされたので血は出ないが何処か、冷凍肉の解体を連想させた
地面は土魔法で元に戻し、首以外は青髪メイドのメージュの袖の中に仕舞われ、首は冒険者が持ってた布の袋に入れ処理が終わった
俺は死体が袖の中にあるというのに嫌悪感の一つも出さずに平然としてる姿に恐怖を覚える
「さて、処理も終わったことだしお前……、ゴホン、貴方がたには念の為に兵舎の方で嘘が無いか魔道具で調べさせてもらいます。
問題は無いでしょうか?」
「私たちは問題ありません、そうですよねトウヤ様」
「ああ、盗られた荷物は…」
「肩紐が切られてしまったので私がお預かりしますね」
青髪メイドのメージュが預かるというので頷く、その時に俺は顔を正面から見れなかった…
兵舎の中で水晶のようなの前で受け答えして問題ないと解放されたのが
それから一時間後だった
「トウヤ様、私のことが怖いですか?」
兵舎から出て冒険者ギルドへ向かおうとしていたら後ろから唐突に青髪メイドのメージュから声を掛けれらた
「トウヤ様の気持ちは分かります、初めて人を殺した時は私もトウヤ様と同じ気持ちになりました」
「いや、俺は……」
最後まで言わせて貰えずに抱きしめられる
「ちょ、メージュ!?」
「メージュ?」
「落ち着きましたか?」
上目遣いで落ち着いたか?と言われて落ち着ける状況じゃねーよ!!
「なら仕方ないですね」
そのまま青髪メイドのメージュの顔が、いや唇が近づいてくる
徐々に、徐々に近づいて来るのでそのまま受け止めようとすると
「そこまでです!」
手のひらが前に出たと思うと強引に引き剥がされてしまった
「メージュ、あなたは往来の真ん中で何やってるんですか!?トウヤ様も雰囲気に流されないでください!」
酷く残念な気持ちになりながらも、
それまであった恐怖心みたいなのが無くなっていた
不思議に思い青髪メイドのメージュを見ると微笑むだけで何も言わなかった
これを狙ったなら大した小悪魔っぷりだと思いつつギルドへと向かった
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