第9話 メージュの一計

「これでお買い物と言う名のデートに行けますねトウヤ様!」


などと眩しい笑顔で赤髪メイドのペイナに言われてしまった

裏表の無いような良い笑顔だった


買いに行くのは防具、野営セット、日用品と多いため

鞄が無いと不便なのでショルダーバックを用意して貰い

赤髪メイドのペイナは渋ったが持ってもらってる資金と用紙を鞄に入れて出発


《金貨200枚は大金です。盗まれる可能性を考えると戦闘メイドに持たせた方が安全です》


エイがそういうが自分のお金は自分で持つべきだと思う

それに持ってるのが危険な金額なら余計男である俺が持つべきだと思う


前世から持ってきたその認識が間違ってると後悔するのは少しした後だった


「まずは冒険者ギルドに向かいましょう。そこで用紙提出して冒険者カードを発行して貰い、お金も預けられるので資金の半分を預けるのがいいと思います」


町の案内は赤髪メイドのペイナ、青髪メイドのメージュは護衛として周囲の警戒

正直、街中で警戒する必要なんて無いんじゃないか?

っと思ったが、その感覚は治安の良い日本のままだった


「そういえば転生して外に出るのは初めてだな」


ここは周辺最大の都市アーバル、正確には迷宮都市アーバル

迷宮の上に建てられた都市で常に冒険者が街中に居る、

そう説明されたがヴォイニッチ邸の門を出て町を見ると何処か殺伐としていた


「どことなく殺伐としてるような気がするが気のせい?」


「気のせいではありませんよ。現在アーバルは避難民の受け入れによる治安悪化、食糧不足と物資不足による値段高騰などがありますね」


「近くの半島、その北半分が海龍に占領された弊害」


「それって買いに行く物も高騰してるってことか?」


「トウヤ様は大丈夫ですよ。高くても十分な資金がありますし、この町で私たち戦闘メイドを連れて行けばぼったくる店はありませんから」


…それって知らなければぼったくる酷い店があるってことじゃーねーか!!


《この場合は知らない方が悪いと見なされます。ご主人様の場合はその都度、私が教えますのでご安心を!》


ヴォイニッチ邸から真っ直ぐ進むと大通りに出て右に進むと冒険者ギルドが見えた


「トウヤ様、あの剣と杖交差して中央に盾がある紋章が冒険者ギルドの紋章です」


冒険者ギルドには3つの旗があり一つが冒険者ギルドを示す旗で他二つは国と地域(領主)を示す旗なのだとか


(何となく大使館をイメージするな)


そんな目立つ施設だが門は無く大きな扉が開かれ開放的になっている


アホ面して見てたせいなのか走ってきた少年に気付かず打つかってしまう


速度上昇クイック


ボソッと喋ったと思うと、あっと言う間に人ごみに紛れて見えなくなる


「ちょ、メージュ!?」


青い顔をして赤髪メイドのペイナが青髪メイドのメージュを見るが知らん顔をしている


「トウヤ様、ここは前世とは違う、油断すれば今みたいな目に合う」


「メージュ、どういうつもりですか?」


「ここはトウヤ様にとって異世界、貴方の生まれた常識や当たり前は通じない」


「メージュ、もう一度言います。どういうつもりですか?」


どこから取り出したのか赤髪メイドのペイナは日本刀の様な包丁を取り出し青髪メイドのメージュの首に当てる

一触即発な雰囲気だがこれには訳がある


俺の資金が入ってた鞄が盗まれたのだ


ショルダーバックだったので肩に掛けて手で持ってたのだが

少年にぶつかった時に一瞬緩めてしまい、隠し持ってたハサミで肩紐を切られて

気づいた時には持っていかれて姿を見失ってしまった


「トウヤ様はまだ前世の感覚が抜けていない、なら言うよりも体験したほうが早い」


「だからと言ってと見逃したのですか!!あれは無くなれば身売りすら覚悟する額です、わかってるのですか!」


「安心してペイナ、手は打ってあるから」


「手は打ってあるってそれは…」


「ぎゃああああああぁぁぁぁぁ!!!」


赤髪メイドのペイナが最後まで言う前に叫び声が聞こえる


「思ったより遠くへ行かれた、面倒」


「メージュ、後で覚えときなさい」


包丁を袖に収め叫びがあった方へ向かう赤髪メイドのペイナ

そのあとを追いかけるように付いていく俺だが、赤髪メイドのペイナが袖に収めた包丁がどうなってるのか気になる


《袖の下が異空間のアイテムと繋がっています。包丁はその異空間に収めています》


エイの言葉を聞きつつ周りをよく見て警戒してると後ろから付いてくる青髪メイドのメージュが笑った


(メージュの思惑通りってとこか)


《その通りです。ご主人様は警戒心が薄かったので良い傾向になっています》


(うるせえよ)


叫びの現場に到着すると俺の鞄を盗った少年が泡を吹いて倒れていた


「どうなってるんだ?」


「簡単です。本に付いてる防犯用の呪術をトウヤ様の金貨袋に仕掛けました。それに引っかかって毒蛇に噛まれこの通り」


毒蛇?防犯用呪術?

なんかヤバいものが仕掛けてあったっぽい?


《盗んだ者に発動する呪術です。発動条件を満たしたものが自動的に呪術の攻撃対象になり最悪死にます》


「思ったよりヤバイやつだ!!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る