第8話 メイドと剣

「昼と言わず、夜までと言わず朝まで好きに使っていいですよ!」


徹夜してまで働かせるってブラックすぎだろ!って冗談は置いといて

これは誘ってるのかな?気のせいだった勘違い野郎となって気まずいことこの上ないが


《問題ないです。ヤっちゃってください》


何をヤるんだ!今の俺にそんな余裕はねーよ!!


駆け足で説明を受けたが何故か全部覚えてる


冒険者ギルドから資金と『希望の書』を受け取るために異世界人として冒険者登録をする

必要な書類は今書き終わった


次いでデドラからは戦闘メイドを二人付けられる


これは俺のサポートらしいが、実際は監視だろう

美人すぎることと誘惑するような行動を考えるにハニートラップな気がする


《ハニートラップで間違いないです》


ハニートラップうんぬんは置いといても、美人メイドを侍らせてる状態はトラブルの予感しかしねー!


「メイドが美人だから戸惑っておるのかの?大丈夫じゃ、戦闘メイドに手を出そうとするのは滅多におらんし、手を出したやつが血を見るだけじゃ」


(手を出す奴が居ない事はないのかよ!)


なーんて、心の中でツッコミ入れてもどうにもならないし、

ハニートラップも含めた俺の監視として受け入れるしかない


「そうか、まだ右も左も分からない俺だけど改めてよろしく!」


「はいトウヤ様!頭脳明晰、才色兼備な私、ペイナにお任せください!」


「敬語は苦手、戦闘は得意な私、メージュがトウヤ様の敵を全て倒して見せます!」


ペイナはそれを自分で言っちゃうか、余程自分に自身があるんだろうな

対してメージュは何というか脳筋な感じの挨拶だな、完璧超人のペイナ、脳筋なメージュ、そんな感じの第一印象だった


「ペイナとメージュのことも終わったことじゃし、次はこれじゃ」


出されたのは一振りの剣

日本刀の様に反りがある片刃の剣でカットラスと言うらしい


「これは冒険者になるお主へのプレゼントじゃが、扱いには注意が必要じゃ。

言うより見せた方が早いんじゃが、熱いから気を付けるんじゃぞ」


デドラが剣を抜くと熱いの意味が分かった


「熱いじゃろ?これはお主が戦ったイフリートが作った液体金属を使って出来た魔剣じゃ」


伝わる熱気であの時のことを思い出すが、あの時ほど熱くない


あの時は武器を立てかけてあった木の棚が自然発火するほど熱かったが

今は熱いには熱いが部屋の物が自然発火するなんてことはない

精々、日本の夏の暑い日程度の厚さだ


それはいいとして、あの剣、カットラスらしいが何処かで見たことがある

両手持ちの剣なのか刀身は日本刀より長く竹刀ぐらいの長さがあり、

血管のような赤い筋が刀身に浮き出ている禍々しい見た目の分厚い剣


「ふむ、その様子だと気に入ったかの?これは最近手に入れたんじゃが、剣としては強度が足りんかったのでワシが錬金術で改造した剣じゃ」


「貰えるんなら貰うが、高いんじゃないか?」


「只で手に入れた物じゃし、刃を厚くして強化した程度で改造費もそんな掛かっておらんので値段は知らんぞ。

知りたければ武器屋か質屋で鑑定してもらうんじゃな」


ゲームでもアニメでも魔剣とかいう特殊な武器は高い傾向にあるからこの剣も高いのだと思うが分からないか


《間違いなく高いです。現在の資金で買えるか分からない程度には高いはずです》


只より高いものは無いと言うが値段が分からないけど高い物というのも怖い

あとで値段を調べようと固く誓ったが、武器屋という言葉で気づく


「そうか、剣は貰うが他に冒険者として必要なものはあるか?」


「在り来たりじゃが、防具に野営セットとかじゃな。道具屋にまとめて売っておったはずじゃから其処で買うといいぞ」


(道具屋っていうけどホームセンターみたいな感じかね?)


《その認識で間違えないです》


「じゃあ、後で必要な物は買いに行かないとな」


「ワシの話は終わりじゃから用紙を書き終えたのなら行って来るといい。あ、冒険者ギルドに用紙提出を忘れるんじゃないぞ」


用紙は既に書き終えているので出して貰った紅茶を一気に飲み立ち上がる

貰った剣を背中に背負い、本とお金を持とうとしたところメイド二人に止められた


「また戻ってきますので剣はトウヤ様持っていて良いのですが、本はトウヤ様の部屋に、お金は私が預かりますね」


お金の袋を入れておく物が無いので赤髪メイドのペイナの言う通りにした方がいいと思い頷く

青髪メイドのメージュが部屋の扉を開けると俺は気にせず部屋を出たが二人も付いてくる

やっぱり二人も付いてくるのかと思いながら見ると


「これでお買い物と言う名のデートに行けますねトウヤ様!」


などと眩しい笑顔で赤髪メイドのペイナに言われてしまった

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