第1章

第6話 変異

……ッドン、ガタガタ、ガタガタ


地震だ、結構デカイ………、眠い…


「トウヤ様、起きてください、朝ですよ」


地震で目を覚ましたが二度寝しようとすると体を揺すられて起こされる


《おはようございます。》


おはようエイ


「「おはようございますトウヤ様」」


「……おはよう」


ん?反射的に挨拶し返したがどういう状況だ?


ベットから目を覚ましたら美人メイド二人が待機していた


「トウヤ様、右手を見せてください」


赤髪メイドのペイナに言われベットの端まで寄って手を出してみるが特に何があるでもない、普通の手だ


「失礼します」


青髪メイドのメージュが手を取り、何かを確認しているが何も無いのを確認する

確認する際に腕が胸に触れたような気がしたがメージュは気にしてないようなのでこちらも気にしないことにする


「トウヤ様、痛いところや違和感を感じるところはございませんか?」


赤髪メイドのペイナがそんなことを言いながらボディチェックのように触って確認している

確認する際、また胸に触れたような気がしたがペイナも気にしてないようなのでこちらも気にしないことにする


あれ?誘惑でもされてる?

気のせいだな、胸がデカイから偶然そうなっただけだろう


「問題はなさそうですね。寝起きですみませんがデドラ様がお呼びです。ドアの外で待機しているので、そちらにあるクローゼットの服に着替えてから外にでてください私たちがご案内します。」


赤髪メイドのペイナがクローゼットに顔を向けると青髪メイドのメージュがクローゼットを開ける


「クローゼットの服は好きなのをどうぞ。話が終わったら朝食だけど嫌いな食べ物、苦手な味とかありますか?」


「嫌いな食べ物はないな」


「それはよかったです。私達は外で待機しているので何かあればお呼びください」


そういってドアの前でお辞儀して出て行く

メイド二人を見送ってから改めて体を見るが何も無い

目覚めたばかりで頭が回っていなかったのでメイド二人がやっていたことが分からなかったが着替えるときになって分かった


昨日イフリートにやられた腹の傷がない、手の火傷も後も残らず回復している

一日で直るとは思えないので回復魔法でも掛けてくれたのだろうか?

それとも戦闘用ホムンクルスとやらに異常な回復能力でもあるのだろうか?


《訂正を求めます、闘技場で戦ったのは二日前です。イフリートにやられた傷は戦闘用ホムンクルスの自己治癒能力で回復しました。》


お、おぅ、二日も寝てたのか…、参考までに一日ならどの程度治るんだ?


《不明、データが不足しています。》


そうか、……データを取るために自傷するのも嫌だし、元々の体質が強化された程度に覚えておこう


まずは顔を洗って、歯を磨いて、………歯ブラシは無いから諦めるか

髭は朝食を食べた後でいいな、起きて早く剃ると夕方頃に伸びてくるし


そんなことを考えながら鏡を見ると


「誰だこれ?」


まだ目が覚めてないのだろうか?鏡の前には俺の嫌いなイケメンが居た

テレビで出てる歌って踊るアイドルグループに居そうな顔をしている


「………」


頬を引っ張ると当然だが鏡に移る顔も頬を引っ張られる

手は俺が見るものと一緒だし鏡の前に居るのは俺なんだろうが、記憶にある俺はこんな顔をしていない


なんていうか歳の割に老けて見え、顔はゴツく、強面だったようで不良に喧嘩吹っかけられ買うこともあった

今は短髪になっているが、髪を伸ばせばチャラい感じがするイケメンになっている


《ご主人様は戦闘用ホムンクルスにされました。

転生です、転移ではありません、今のご主人様は生まれたての赤ん坊です。育ち終わった顔と比べると違うのは当然です》


転移ではなく転生、なら顔が変わっても変では無いのだろうか?髪と瞳の色が変わってるのは違和感しかない

ブロンドの髪に青い瞳、顔はどこか女性的で自分の顔に見えない


(髭……、生えるのか?)


《髭が生えるのか不明、他の無駄毛もどうなるか不明》


パッと見た限り、さわやか系イケメンなんだがコレが自分の顔となると評価が変わる

自分がイケメンと思うほどナルシストではないのだから客観的な感想がほしい


(さわやか系?とか前の俺と真逆で違和感しかない)


イケメン死ねとか思ってたが自分がイケメン?らしき者に生まれ変わると複雑な気分だ


………イケメンだよな?


《美的感覚はご主人様の生前と変わりません。ご主人様がイケメンと思うならイケメンです》


自分の顔のことだが深く考えないことにしよう

うん、そうしよう、そのうち慣れるだろ


ふと、顔が変わったってことは元の顔に戻すことも出来るのでは?っと思ったが自分の顔の詳細を覚えてないことに気づく


(そういえば、記憶も穴だらけなんだっけか)


《転生の際によくある弊害です。他には「死」のトラウマなどが有名です》


記憶障害、これは生前の記憶を持ってる方がおかしい訳で記憶障害程度はあっても不思議ではない


問題は二つ目の「死」のトラウマだ

これは寿命と病死を除いて、全ての転生者が「死」の際に経験したことをトラウマとして植えつけられる


交通事故は、轢かれた車と同じぐらいの大きさの生物や乗り物が苦手

水死などの溺死は、人によって差はあるが溺れた場所(海や川)が苦手なのと水の中に潜るのがトラウマで泳げなくなる

転落死、高所恐怖症

殺害された場合は、人間不信など(人によって差はまちまち)

地震の場合、建物に押しつぶされた場合は閉所恐怖症や暗闇恐怖症など


俺の場合は殺されたので人間不信と刀剣恐怖症らしい

特に首を斬られて殺されたので首に刃物が当てられると我を忘れて暴れるとか


(最初に異常なほどムカついたのはそれが原因か)


そんなことを脳内でエイと会話しつつ身支度を終えて案内されたのは応接室と思わしき部屋、壁は本棚で埋め尽くされ正面手前にテーブル、テーブルを挟んで左右にソファ、奥に執務用の机、その後ろは大きなガラス張りの窓になっている


うん、戦闘テスト前に案内された部屋だ


「おはよう。体は大丈夫のようじゃな」


前と同じように爺さんが座って待っていたので勝手に座らせてもらうと青髪メイドのメージュが紅茶を出してくれた

案内してくれた二人メイドは何故か爺さんではなく俺の後ろに控えている


「おかげさまで異常なぐらいピンピンしているよ」


「そう睨な、ワシも悪かったと思っておるがどうしても必要じゃったのじゃよ」


そう言いながら紅茶の隣に出されたのは金属が入った袋と本


「なんだこれは?」


「当面の資金と、一部の転移者『帰還希望者』達が書いた本、『希望の書』(日本語版)じゃ」

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