日和-10 海水浴日和

えっ、この人誰だ?みらいのお父さんかな?

「あっ、パパ!帰ってきてたの?」

「あぁ、みらいのパソコンの調子が悪いって言ってたろ?だから仕事終わらせて飛んできたよ」

いいお父さんだなぁ。てか海外に居るらしいから、本当に文字通り飛んできたになるな。というかまた調子悪くなったのかな?

「パパ、その事なんだけど、ここに居る日和ひより先輩が直してくれたの。せっかく急いできてもらったのにごめんなさい」

あー、あれか。確か電源コード切れてたっていうあれか。

「え!?君が直したの!?あのPCの中身は、自分しか触らないだろうとかなり適当に配線を終わらせていたはず・・・」

確かに、配線適当だなとは思ったけど、私のよりかは全然きれいだったしな。

「あの程度の配線なら私でもなんとかなりました。それに、昔何気なく破棄予定のPCをもらってバラして組み直したりしてたときの知識とパーツが有ったおかげですぐに直すことが出来ましたし」

え!?なんかみらいのお父さん、凄く驚いているんだけど。

「というか、みらい、今この子のことを日和先輩って言ったよね?」

「え?う、うん」

「そうかそうか・・・君がみらいからよく聞く日和君だったのか・・・確か、みらいの1つ上って聞いたから、高2かな?」

「そうです」

どうしたんだ?てか、日和君なんて呼ばれ方、初めてなんだけど。

「就職先とかは考えている?」

「いや全く考えてません」

「ちょっと日和!せめてどんな感じのところに就きたいかくらいは言ったほうがいいよ」

「いや、だって、何も考えていないのは本当だしなぁ」

さすが綾乃あやのだな。でも本当に何も考えていないんだよなぁ。金欲しいから絶対どこかには就こうかとは思うけど。

「ははははは、いいよいいよ、正直でいいじゃないか。日和君、うちにこないか?」

ん??????????え????

ちょっと待って、状況把握ができない・・・

確か、みらいのお父さんはonglの社長さんだったはず。

「まぁ、急に言われても困るよな、頭の片隅には置いといてくれ。そうだ、みんなは、海に行ってみたかったりするかい?」

「え!?海!?」

陽香はるか、すごい食いついたな。

「えっ、でも、今はまだ春だし、海水浴には早いんじゃ・・・」

確かに。綾乃の言う通り海水浴にはまだ早い時期だよな。

「あぁ、その点は安心してくれ。日本の海じゃないからな。赤道付近の島だよ」



「おぉぉぉぉぉ!海なのです!暑いのです!」

「太陽・・眩しい・・・」

なんだかんだいって、沙侑さゆも含めたクッキー作りのときにいたメンバー全員が来たな。

「ありがとうございます。本当に来ても良かったのですか?」

「何を今更。お礼を言わないといけないのは僕の方だよ。みらいと仲良くしてくれてありがとうな。そうそう、日和君、ちょっと来てもらえるかい?みんなは遊んでいていいから」

「わかったのです!」

「わかりました」

「はーい」


 呼ばれたからついてきてみたけど、何なんだろう。何かまずいことしたかな?いや、心当たりないし。

「日和君、きみに聞きたいことがある。みらいとどやって出会ったのかい?」

えっ、全く想像もしていないような質問が来た。

「えっ、みらいとは、学校の部活でですね。PCの使い方を教えてくれって言われたのが最初だったと思います。どうかしたんですか?」

「みらいから声をかけたのかい?」

「はい」

「そうかそうか・・・昔、みらいは人に声をかけるどころか声をかけられても怯えて僕によく隠れていたのにな。君はなにか特別なのかね。みらいから昔のことは聞いたことあるかい?」

「はい、なんだか思っていたより重い話で聞いちゃいけないかなって思いました」

「みらいが自分から話したならいいんじゃないかな。あの子は自分についてあまり喋らない子だし」

「でもなんでこんな質問を?」

「すまんな、最近みらいからよくメールをもらって、そこに君との話がすごく多くなって、”友達ってなに?”と聞いていたみらいに友達ができたんだなって思って。学校ではみらいはどうしている?」

あぁ、確か、公園にまで行ったっていうあれか。

「学校では、クラスのみんなに囲まれていますよ。海外からの超美少女が転校してきたら嫌でもそうなりますね。みんな色々質問をして、それに怯えているような感じですね。それで、私と綾乃を見つけると、助かったというような表情でこっちに来ますね。お昼も今までは綾乃と2人だったんですが、今は、私と綾乃とみらいの3人でお昼をよく食べていますよ」

「そうか、今後ともみらいをよろしく頼む。学力的には何も心配していないんだが、生活の面で君たちがいると安心だ」

「もちろんですよ」

「ありがとう」

そして陽香たちがいるところへ戻った。


「あっ、ひよちゃん戻ってきたのです!」

「おかえりなさい」

「日和先輩、何だったんですか?」

「あぁ、PCのことをちょっと話していたよ」

あういう話は本人にはしないほうがいいだろうし、適当な理由をつけた。

「みんなはもう着替えたんだね」

「ひよちゃんも早く着換えてくるです!」

「わかったよ」


着替えてきた。

「ひよちゃん、ひよちゃん、どっちが早く泳げるか勝負なのです!」

「いいよー、こんなのでも中学校までは水泳をやらされていたから負けないよー。綾乃、スタートよろしく」

やっていたじゃなく、やらされていた。ここ重要!

「はいはい、よーい、ドン」



━━━━━━━━みらい視点

「日和先輩早いですね」

もうあんな所まで。

「日和は、あんなのでも一応水泳やってたからね」

「綾乃先輩はなにかスポーツとかやってましたか?」

「いや、私は特に何もやってないよ」

正直、日和先輩より綾乃先輩の方がスポーツやっていると思っていたけど違うんだ。

「私は中学校のときから生徒会に入っていたからね」

「なるほど、綾乃先輩らしいといえば綾乃先輩らしいですね」

でもすごいなぁ。生徒会の仕事って大変らしいし。


「さて、私達も折角海に来たんだし、ここでしかできないなにかをやろう。何をする?」

あ、沙侑さゆちゃん。

「砂の城作ってみたい····」

え、お城作るの!?あれ、お城ってかなり大きいのに。

「よし、じゃあそれをやってみようか」

そんなに軽く言ってるけど本当に作れるのかな。

メンバーは、私(みらい)と綾乃先輩と沙弥さんと沙侑ちゃんだね。


「砂の城ってどうやって作るんですか?あの、重機とかいりますか?」

「重機!?あの、みらいさん、重機なんて使いませんよ。あっ、でもスコップとかそんな感じのものならあった方がいいかもしれません」

と、ということは手作業!?一体どれ程の時間をかけて作るつもりなんだろう。

「で、では、スコップと石垣を用意しますっ」

「石垣!?リアリティここで求めちゃうの?いや、全然いいんだけどさ」

「え?綾乃先輩、どういうことですか?お城に石垣は必要ですよね」

「ちょっと待って。これ絶対話食い違ってるよね?みらいちゃんは、どれくらいの大きさの砂の城作るつもりで言ってたの?」

どのくらい、ですか。確かにサイズのイメージは必要ですね。というか、石垣は単に石を積み上げたら完成になるのかな。作り方も調べないと。

「あの、みらいさん、私達が想像しているのはどんなに大きくてもこのくらいのものですが」

と、沙弥さんが、スマホの画面を見せてくれた。

「あっ、ごめんなさい。砂の城というものを見たことも作ったこともなくて」

「だ、だよね。びっくりした。みらいちゃんは人が入れるくらいの大きさの城を想像してたでしょ」

「はぅ、ごめんなさい」

「いいよいいよ、そりゃ見たことも聞いたこともやったこともないって、勘違いの1つや2つするもんね。私も、日和と話してたら、今のみらいちゃんみたいな感じになることもあるしね」

「そ、そうなんですか」

あ、そういうことか。日和先輩のパソコンとかゲームの話についていけないってことかな。

「じゃあ、とりあえず作り始めてみよ」



━━━━━━━━戻って日和視点

おいおい、陽香思ってたより凄いはやいじゃん。これ、50mクロール40秒台後半は余裕でいけるぞこれ。

というか、これ、どこまでが競争範囲なんだろう。

あっ、

「陽香!!!」



今は海上で、浮きながら陽香を支えている。

「ごめんなさいなのです。準備運動を忘れていたのです····」

何が起こったのかというと、私の少し後ろを泳いでいた陽香が急に遅くなった、いや、止まったからどうしたのかと見てみると、足つっちゃったみたいだ。

「とりあえず向こうに戻って休もうか」

「はいなのです····」

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