第10話水の妖精

・小話・

記念すべき第十話。

未熟だった1話から早くも十話に突入しました。イェーーイ!!!


今回はみんなに、10と言ったら思いつくものを聞いてきました。


氷河火炎:分からん!

雨風雫:二分の一成人式

音色響喜:俺の彼女の数(嘘)

氷河由紀:初めて剣道の試合で優勝し

た歳

疾風:ピェーー


あっ!そう言えば、疾風は、(はやて)と読みます。決して(しっぷう)では、ないです。

小話はここまで本編をお楽しみください。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

俺たちを下ろすと、疾風は小さくなり由紀の肩に乗った。


「でも伝説が本当だなんて思わなかったな〜。」

「確かに、私もてっきり嘘だと。」


響喜と雫の言ったことは、本当に納得できる。伝説ってのは知ってたが、まさか本当にいるなんて思わなかったし、伝説以上の強さとでかさで正直、まだ嘘だと思っている。


「でも伝説のいきものがペットになってくれたから嬉しいし、相当な戦力になったんじゃないかな。ね〜疾風。」


由紀はそう言うと、肩に乗った疾風に頬をすり付け。疾風も笑顔で体をすり付けた。

そんなの和んだムードの中で突然、疾風が前を向いた。何かを察したかのように、キリッ!と遠くを睨む。するとものすごいスピードで向いた方向に飛んで行った。


光の様な速さで飛んで行く疾風を、ギリギリ視界に入れて、必死で後をおった。


「おい待てよ疾風どこに行くんだ!」


泣き言を言いながらおって行ったが、

その答えは、直ぐに出てきた。

ピッ!っと背筋に氷が走った。

能力感知が働いたのだ。でも寒気のする能力なんて感じたことない。

大きく、そして凍り付く様な殺気。

普通じゃない!


奴に近づくにつれて、どんどん能力が濃く大きくなって行く。周りの人とは、明らかに違う、能力のデカさ。

しかも何か交戦中なのか、大きな能力の周りに、住人と一緒ぐらいの大きさの、人が数人いる。


どんどん、どんどん能力が濃くなって行く。そして濃くなって行く能力は、絶えず殺気を出している。

何か誰かを近づかせない様な、ましてや近づけない様なそんな殺気だった。


疾風は、曲がり角でピタッと止まった。目的の場所に着いたのだ。

俺たちも遅れて着いた。がそこは、地獄だった。男が一人たっていた。途轍もない能力は、あの男からだ。


男の身長は165cm程と小柄だが、ひげが生えているため、40半ばのおじさんに感じる。

髪は、緑色でボサボサだ。


男の周りに、KSLの人たちがいたが、男に向かっては、倒されていた。ライオンに立ち向かうアリの様な、そんな光景だった。男の後ろには、大きな龍が出ていた。多分相手の能力だろう。その龍は体は青色だが、どちらかと言えば紺色に近い色だ。


周りの家は焼け、泣き叫ぶ子供や、助けてくれと叫ぶ物の声でそこは、埋め尽くされ家が焼かれている音なんて聞こえもしない。ただ、悲鳴だけが聞こえた。


「そんなこんなの無理だよ。

勝てるわけない。能力差が大き過ぎるよ。」


口に手を当て震えた声で雫は言った。

確かにこんな光景は見たくないし、たとえ戦っても勝てる訳がない。

圧倒的な力の前にただ手も足も出ないまま倒れるだけだった。


「うわーん助けて〜」


絶望感に浸っている時声が聞こえた。

声のした方向をみると、小さな男の子がいた。それも2か3歳の子供だった。そのこの前には、大きな龍。

あの男の能力の龍だ。

絶対絶命の状況。KSLの人たちは?

まだ気づいていない。

誰か気づいて助けてあげてくれ。

他人任せに願って、1秒1秒と時間が過ぎて行った。


また目の前で人が死ぬのか?

助けられないまま見殺しにするのか?


そんな言葉と、あのカブト虫の男の顔が脳裏を横切った。


不意に、足が出た。怖さなんて考えもしなかった。感じなかった。ただ、あの男の子を助けるために。


考えるよりより先に体が動いた!!


間に合え!間に合え!

脳の中でその言葉だけが出てきた。


龍が攻撃する直後で


「この距離ならいける!届く!

龍の吐息!!」


[龍の吐息(りゅうのといき)

手から火を出す中距離技。かなりの威力でしかも消費も少ない。]


不意の攻撃に一瞬ひるんだ龍は、主の元へ帰って行った。


「痛いな〜まあ実際は痛くないけど。君があの人の言ってた火炎君か〜他のゴミとは、違って強いから殺しとくか。」


「あの人、ということはあいつの使いか。何がしたいんだ関係のない人まで巻き込んで。」


「あいつ?お前があの方をそんな呼び方をしていいと思うなよ!あの方は、神だぞ!」


俺が馬鹿にしたと思い怒って龍で攻撃してきた。防ごうと戦闘体制をとっていると


「誰だ君、こんなところにくるなんてどうかしてる!ここは、子供のくる場所じゃない!」


今絶対いうことじゃないだろ。

戦闘体制をとっていたのに、KSLのおじさんにきつく言われたが、とっさに言葉が出た。


「うるせー!

子供のくる場所じゃないことぐらいは、分かってる。だからと言って、この子を見殺しにできるか!」


張り合っている間に、油断が産まれ龍に近づかれていた。

やばい攻撃範囲内だ!

火盾でガードしようとした瞬間!

龍がひるんだ。


「おい何美味しいとこもってておいて、死にかけるんだよ。」


「そうだよお兄ちゃん!少しヒヤヒヤしたんだから。」


「由紀、響喜。助かった。ありがとう。ほらここから離れて安全なところに行ってこい。」



目の前で何もできずに、ただ立っていた。足が動かなかった。


雫は、目の前で圧倒的な戦力差に抗って、命がけで戦う3人を見て自分を比較していた。


このまま、ずっと見ていてもいいのか?

あっちにいっても足手まといになるだけで何も役に立てない。

雫の脳の中でこの二つの考えが戦っていた。


この旅に出てからそうだった。

最初は、悩みを聞いてあげるだなんて、かっこいいこと言ったけど、

白風森で動物に襲われた時倒したのも、あの3人だった。

ただ守ってもらってただけだった。

今回もそうだ。

能力が弱いからと言ってずっと言い訳付けてた。


このまま立ってるままで何もできない自分が情けない。


雫は、旅に出てから何も役に立てない自分と、3人を比べて、次第に自信を無くしいたのだった。


でもこのまま役に立てないままで誰かを死なせたくない。役に立てなくてもいいから、誰かを助けたい!


あの時の火炎君の様に・・・


脳の中でこの言葉が大きく出てきた。


その時、時間が止まった。自分は、動けるのに、他の物は一切動かない。

泣いている子供、戦ってる人、何もかも動いてない。さっきまで悲鳴で埋まっていた音も、聞こえない。

ただ聞こえるのは、自分の声と、心臓の鼓動だけ。


「何これどういう事?」


突然のことに雫は、驚いた。

すると目の前が強く光、1匹の小さな女の子が現れた。


女の子はとても小さく、耳はとんがっていて背中には、羽が生えていた。

髪は青色で腰ぐらいまで伸ばしていた。


「あなたは?誰?」


雫は、驚きつつも聞いた。


「私は、水の妖精ウンディーネ。そなたは、雫という名前だったかな?まあいい。そなたは、自分とあの3人を比べて自分の力不足に、挫折しているだろう?。

でもそれでも役に立とうとするそなたの気持ちに、私は、心を動かされた。私の力を使うがいい。」


あの小さな身体からは、想像できない程落ち着いた声は、抱擁感を帯びていた。


そう言って妖精は、雫の頭に手を当てた。

また目の前が強く光、時が動き出した。


「これで私も戦える!」

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