私
久しぶりに会う君はあの頃と変わらなかった。君だけじゃない。きっと私も変わっていなかった。髪の色と服のセンスは少し変わっていたけれど、その声も、口癖も、目の色も、仕草も。そりゃそうだ、同じ人間なんだから、とは思うけど、その変わりのなさが不安を誘う。
チラリと目が合う。その瞬間きっと、気持ちが交差した。いつかこうなるかもしれないと思っていた。そして言葉は無くともその思いを互いに発して、キャッチした。
ー今日このあとどうする?
そう、決められた言葉をなぞるだけ。
ー久しぶりだしどこか行こっか!
一度そうなったら戻れないことを知っていたけれど。そして、それ以外、私たちには先がないことも分かっていたけれど。
8月に入ったばかりのその夜はまとわりつくような暑さで、やけにべたつく空気が纏わりいてくる。
本来の正しい道を行くのは君を裏切ることになるような気がするから、なんて言い訳は誰にも通じなくて、それでも自分に精一杯の言い訳をして逃げ道をつくってやった。
次から次に注がれるアルコールに脳みそを預けた気になっているけど、それは勘違いだ。私の心は一ミリたりともそこに浸かっていなくて、意思はハッキリと君を受け入れていて、目の前の展開に期待していた。
根拠のない言葉に身を委ねて、ありがたいことにふらつく足元を見せつけるように、へらりと笑って見せる。
好きじゃないよ。
でも、裏切るのも違うでしょ?
この先も一緒にいたいけど、もう間に合わないみたい。
真夏の夜の温度が誘った、私の体。
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