少年



その人は僕の目を覗き込んで言った。



―綺麗な目を、しているのね。



そう言えばあの人も同じことを言っていた。

その声色を、僕はハッキリと覚えている。



目は口ほどに物を言うなんて言葉があるけれど、それなら、どうして僕の目は綺麗なんだろう。



僕にはいつだって欲しいものだらけだ。

だけどそれを手に入れる方法を、簡単に知り得てしまう。

そして少し手を動かすだけで、それはもう、すぐに手中におさまっているのだ。


つまらないね?

まったく、つまらないよ。


だから僕は、いつだって退屈している。

血の滲むような努力とか、下積みとか、そんなこととは無縁な人生なんだ。




―綺麗な目を、しているのね




そんな残念な言葉を、僕に残さないで。




もっと奥を。瞳の奥を、覗いて欲しい。

僕の底はそんなに綺麗なものじゃなく、どろどろしていて、冷たくて、汚い。



今隣にいるあなたには、少し、期待しているのだけれど。


「ねえ。こっち向いて。」


ふいに声をかけられれば、小さく微笑んで視線を絡める。


「ほんと。」


そうして、あなたは、にっこり笑った。


「綺麗な目、してるよね。」


だから僕も笑って見せた。





神様。

神様、どうか。

欲しがる僕に蓋をして、本当の僕を見つけてください。


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