不許可04
その日、私はデパートで買い物をした。これといって記念日という訳でもなかったが、まぁ、強いて言うなら自分へのご褒美として。商品の購入までは時間がかかった。とても悩んだし、店員さんも付きっきりで説明やおすすめをしてくれて、本当に充実した買い物だった。
でも、帰り際、私はどこかから聞こえる、小さなラジオ音源のようなものが耳をつくのに気がついた。私は普段イヤホンなども持ち歩いていないし、私のケータイはラジオを聴ける仕様ではない。だから、街のどこかでラジオを流しているのだろうと思った。でも、何処まで歩いてもそれは聞こえ続けていた。
それで気付いたのは、どうやら購入し、ラッピングまでしてもらった箱の中から、聞こえてくるのではないか、というものだった。確かに箱に耳を近づけると、何かぼそぼそと誰かが話している声がしている気もしないでもない。
どこか気味の悪さを感じた私は、引き返し、デパートに向かって行った。そうして先ほど接客してくれた店員さんを呼び止め、箱の中から音がするのです、と訴えた。ただ、その頃には音は消えていて、店員さんが箱を開けてみても、結局以上はなかった。
箱の中には何も入っていなかったのに、それなのに音は確かにその箱から聞こえてきていた。
店員さんがいぶかしげな表情をし始めたので、私もそそくさと、ラッピングも断り商品を受け取ってデパートを出た。
デパートを出て、町中の喧噪に紛れると、やはり自分に対して、どこかささやきかけるような、語り書けるような、そんな声がし続けているのに気付いた。
でも、確かに、箱の中には、何も入っていなかったのに。
私はそれから数時間、町中をうろつきながら、ずっと考えている。
これをこのまま持ち帰るべきか、ずっとずっと、考えている。
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