不許可03

 雨の日の駅のホームで、列車を待つまばらな人々の中、静かに、静かにしとしとと雨粒が線路に染みいる。

 ホームの端で受けた雨は、黄色い線を越え、側面に至り、ホーム下の鉄骨を経由して線路へと染みいる。

 僕はその様子をぼんやりと見ていたのだけれど、ある一点において、様子がおかしかった。

 明らかに白い液体、どろりとした樹液のような液体が、一点から、漏れていた。それは雨粒に混じってホームの端から流れ出て、糸を引いて線路の敷石へと沁みていった。

 僕はその様子を、母さんにも伝えず、じっと見ていた。

 ずっとずっと見ていた。

 だから僕は未だに思うんだ。駅は生きてる。人の営みを受けながら、駅は生きてるんだって。

 未だにわからないけれど、あれは駅の涙なのか、それとも血なのか。

 僕には多分、一生わからない。

 でも、あの、樹液のようなどろどろとした液体は、その時確かにホームから流れ出て、線路に染みいっていたんだ。

 それだけは、確かなんだ。


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