拝啓、未来の僕、過去の貴女へ

しろねこ

未来なんか……大っ嫌いだ!

 僕が共和国軍に配属されたのは終戦5分前だった。

 配属されてから終戦までの5分間について少し話そうか。


 軍には僕の幼馴染が一年前から配属されていた。

 僕は、配属されると、すぐに幼馴染に会いたいと思った。

 でも、会えなかったんだ。

 半年前に死んだのだそうだ。

 僕は自暴自棄になっていた。

「もう……もう明日なんて来ないでくれ!」

 また笑いあって話せない未来なんてもう……来なくていい……。


 そんなことを思っていると、僕の軍の長官が来た。

 すらっとした体に、顔立ちが整っている綺麗な人だった。

「君の大切な人が亡くなったのは残念だが、それでも明日は来る。また明日に向かっていくんだ。実際、私も大切な人を失ったことがある。その時は全てが嫌になった。でも、明日は来る。どんなことがあっても未来を歩き続けなければいけないんだ」

 僕はそれを聞いた瞬間、目の前の黒い霧が晴れた。

 辺りはとても美しい景色だった。

 また明日に向かっていこう、そう心から思えた。

 まだこの人とこの景色を見ていたい。

 これが夢でないならば……。

 しかし、長官はまた最前線へと行ってしまった。


 と、まあこれが終戦までの話。話が下手ですまないね。

 ところで、長官はどこに行ってしまったのだろう。

 探しても探しても、見つからない。

 いつかは見つかるだろう、そう思い続けて10年。

 期待しても、未来は、現実は残酷だった。

 あの時の景色をもう一度見たい。

 あの人のいない世界なんて、未来なんて来なくていい。

 そんな時、あの人の言葉をふと思い出した。

 そして、僕は願った。

 あの人とまた美しい景色を見られることを。


 今日も暗闇にまだらに光る星を見ていた。

 オレンジ色の星の前を流れ星が通った。

 流れ星が消えないうちに僕は呟いた。

「今日という日をいつか思い出せ」

 気が付いたら一筋の涙が流れていた。

──Fin──

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