6:ドリィムエックス
半猿半機の王様と科学者ゴリラの女王様。スプーキーをはじめとした奇妙な姿の住人達が暮らす国は、そこを治める人(?)もやはり個性的だった。
「あ、あのっ」
「言ワナクテモ解ル。外ノ世界カラココニ飛バサレテシマッタノダロウ?」
「実は最近あなた以外にも同じような方がいるんですよ。つい数日前にも……」
私が自分の置かれた状況と、元の場所に帰りたいという旨を説明しようとすると、事情を察した二人は口々にドリィムランドの現状を話してくれた。どうやらこのドリィムランドには最近わたしのように外の世界から人が飛ばされてくる事件が何件か起きているらしく、この二人も対応に追われているとかなんとか。
「ええと、それじゃあ元の世界に帰る方法は……」
「アァ、残念ダガ私達ニモ解カラナイノダ。」
「そんな……」
王様がゆっくりと首を横に振る。左半分が鋼鉄に置き換えられたその顔が表情を変えることなかったが、声のトーンから申し訳なさそうにしているのが伝わってきた。
「わたし、これからどうしたらいいの?知らない場所で、家族も友達もいない……」
「いま国中の科学者達が原因を調査しています。それが済めば帰る方法も見つかるかも知れません。」
「ウム、ソレマデハ此処ニ住ムガ良イ。家ハ此方で手配シテオク。」
「は、はい……」
わたしは首を縦に振った。幸いここには人が暮らしていけるような環境が整っているようだし(素敵なカフェもあるしね)、こうなった以上は帰れる方法が見つかるまでここで生きていくしかない。そんな風に私が決意を固めていると、この部屋に入ってからずっと大人しくしていたスプーキーがようやく口を開いた。
「ところで王様、この子に”あれ”は渡さないノ?」
「ソウダッタ。女王ヨ、”アレ”ヲ。」
「えぇ……はい、どうぞ。」
女王が白衣から液体の入った容器を取り出す。その透明な容器は科学の授業で使われるような試験管に似ており、中の液体は青く澄んだ色をしていてかき氷にかけるブルーハワイのシロップを連想させた。
「あの、これは?」
「コレハ"ドリィムX"。女王ガ発明シタ薬品ダ。」
「ここに来るまでの間にドリィムランドの住人達を見たでしょう?彼らの容姿はこのドリィムXでそれぞれの望む姿に変化したものなのです。」
「僕も元々はキミと同じ人間の姿だったんだけどネ。」
人間があんな姿に?いくら何でも非現実的じゃ……と思ったけれど よくよく考えてみれば今までの出来事の一から十まで何もかも非現実的なのだから今更だった。それに塔の入り口やエレベーターに使われていたあの仕掛けを発明できるだけの技術力があるのなら人を異形にする薬を作れても別におかしくはない、のだろうか?
「この国の方には無料で配布しているものですので貴女もどうぞ。あっ、元の姿に戻る薬は既に開発済みですので安心して下さいね。」
「まぁ、そういう事なら……」
わたしは容器を受け取り、それを口元に運ぼうとした。その時だった。
「加奈子ッッッ!!」
「きゃあっ!」
聞きなれた声が部屋に響き、それと同時に持っていた容器が粉々に砕け散る。突如この場所に現れた声の主は――
「お、お父さん!?」
わたしの父だった。
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