煌めく色の刃
「そうなってくると、リネンが塔で見たって言ってた、ビーストを抱えていたセルリアン?も気になるわね。……シキリアンも気になるし。」
ども、ネジュンです。僕は今カコ先生の研究室を訪ねています。自分で自分の足の爪先を見つめる博士の姿は、どこかで見たような気がしますが、それはまぁいいとして。
「シキリアンとは?」
「あら、見たことない?リネンの身体に出入りできるそっくりな顔したセルリアンの事よ。ホントはサンドスター・ロウをアーマーに使うために用意した防御特化型アーマーがあるんだけど、最近だとその状態で乗っ取るみたいにして振舞ってるわね。」
「あぁ、アイツの事か……いましたね。」
塔のジャングルっぽい階層でお父さんの身体を使って動いてたセルリアンが居ましたね。あれをシキリアンと呼ぶのは……多分本人達が呼び始めたんでしょうね。ネーミングセンスの微妙な感じはなんともそんな感じです。
「それで?あのセルリアンが、どうかしましたか?」
「うーん。ちょっと、ね。ほら……色々。」
「『人のセルリアンなんて。』って事ですか?」
カコ博士は頷いた。確かに訳の分からない話である。ヒトのフレンズは特殊条件下で生まれるということが判明しているけれど、ヒトセルリアンなんて……。聞いたことはあるけれど、それは机上の空論というか、ありえなくはないというか、創作やおとぎ話に近いような、神隠しにも似たような話だったような。
「なにか仮説は?」
「一応あるわ。けものプラズムがあれば可能だとは思うの。四神か、他の守護けものか、化石種、絶滅種か、とにかくどんなフレンズだっていいんだけれど。ただ、リネンの中にそれがあるかと言われれば……。」
彼は自他ともに認める本当にただの人間で、なにをどう検査してもサンドスターが検知されることはなく、影響もないらしい。せいぜい、もともとの髪色より最近すこし明るい茶色になってきたくらいだという。それは僕が見ていても納得できる事です、じゃあ彼の何処にセルリアンが宿っているのやら……という事になる。
「私、あのシステムの声の主を知らないのよね。」
「あのちょっと生意気なAIの事ですか?」
「そう。あの声、当時の同僚でも、私でも、ナナちゃんでも、ミライちゃんでも、園長なんかでも、フレンズの声でも、なんでもない。だったらロボットの声かしら?その割には、今考えてる事をしっかりと、その場で何か道具を使うように行う。もちろんシステムは、システム通りにちゃんと動くんだけど。なんていうのかしら……。脳と回路がくっついているみたいで……。」
「不気味、ですね。」
「ええ。本当に…………、まるで付喪神のよう…………。」
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『へっくし!』
「どうした?人工知能がくしゃみするとか聞いたことないぞ。」
『おおよそ噂でもされたんでしょう。』
珍しく、このうるさい奴と意見が合致した。俺も今しがた丁度何かしらで寒気を感じていたところだ。やはり噂かなにかされたのだろうか。
「シキくーん、入りますよ~?」
「どうぞ~。」
俺は今、自室で剣とにらめっこしている。何故かわからないけれど、条件なしに引き抜けてしまった四神刀と答え無し勝ちの見越しの来ないエンドレスにらめっこだ。少し前に似たようなことをした気がする。あれは抜けなかったことに関して悩んでいたので、今回はその逆ということになる。悩みとは尽きないものだ、ジェーンさんの入れてくれたお茶をすするとそんな感情になる。どう飲んだって味は変わらないのだが、なんだか日によって違う気がしてしまう。変わり映えのない問題と直面していても、まるっきり同じ問題が目の前に降りかかるなんてことは滅多とない。今回のトリガーを引いたのはなんだったのだろう。
「埋め合わせを頂きに上がりました。何か進展はありましたか?」
「この前と違って……全くという感じです。」
埋め合わせと称して俺の話を期待してくれていたらしいけれど、こちらが全く進んでいない今のような状況では、申し訳ないけれど何も言ってあげられない。
「……しょうがないですね、また何か分かったら教えてください。」
何もわかっていないから、そう言ってしまうけれど、仮説を語ることくらいなら出来る。俯いて、唸って、どうにかして、やれば。やれれば。
そうだ。
「あのネジュンって子、やっぱり……。」
「そんな気はしますよね。なんというか……。」
話すことが無い訳じゃ無かった、ネジュンの存在と、あの塔について。それくらいなら、振り返ってもう一度乗り込む心の用意くらいならできないだろうか。
「だって、やっぱり。あの子の目の色は貴方にそっくりだし、顔のだいたいの感じは私のような気がするし、なにより!しゃべる腕輪って、グレープさん達と似てますよね!」
「似て非なる、とも言えますが。でも無関係とは言えなさそうですね。」
ネジュンが暦の上で何年から来たのか、それが分かればいいのだけれど。それが分かれば、俺がどう生きるべきかも、わかるような気がする。いや、わかる。きっと、俺が背負わなければモノの濃さをも、知れるような。そんな気がする。
「ジェーンさんは。」
「はい?」
「貴女は、その未来も良いと思ってくれますか?」
それが、
明日か、一分後が、
二千年後かは、わからないけれど。
「……貴方が居れば、どこでも、なんでも。」
「そう、ですか。」
大丈夫なような、そうでもないような。危ない橋を渡っている気がする。
「なんだか、シキ君の手、冷たくありませんか?」
寄り添いながら、俺の手を握る彼女。普段は冷たいなんて言われないが、寒い部屋で作業していたせいだろうか。彼女の手の温かさがすごくよく伝わるから、これはこれで好きなんだけれど。
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「へくちっ!」
「あら。花粉症?それとも風邪?魔風邪恋風邪なんて文言があった記憶があるけれど。」
「うー。そういうのでは無いと思います。誰かに噂されてるのかもです。」
なんなら噂話返しを喰らっている気がする。今家にはお父さんとお母さんの二人がそろっているから、何かしら話してても何にもおかしくない。背筋を伝うのは冷や汗の形をした嘘つきのレッテル。必要だとはいえ、仮面を被るのって大変ですよね。
「ほらティッシュ。あとそうだ、影の話をしなくちゃ。」
「影?」
影、光あればあり。なら、サンドスター・ロウあるところにサンドスターあり、嘘あるところに真実あり、仮面あるところに素顔あり。影といえば、そんな事を考えてしまいます。
”塔は、星の記憶が覚えている何かを写しだす”
その中での影とはなんなのでしょうか。僕もお
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「塔の中で見かけたあの影が気になるんです。黒い白衣……ってちょっと言葉がヘンテコですけど、とにかく、そんなものを身にまとって、何処かに消えていったアイツ。『こんなに早くくるなんて想定外』だって言ってたんですけど。」
「何者なんでしょう、セルリアンなんでしょうか。」
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「おそらくは、そうよ。何故かはわからないけれど……セルリアンを狩っているなんて噂もあるのよね。しかも、塔が現れるよりももっと前から。」
「おかしくないですか?同じ勢力なはずなのに。」
「言ったでしょ?『時間的時空の歪みが何らかの原因で起こり、その歪みの向こうから今はもう観測されなくなっていた昔のセルリアンや異界の物体が漂着する。』それがありえるのだとして、今いるセルリアンと、昔か、未来の、または全然違う世界のセルリアンが現れるのだとすれば?」
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「なるほど……勉強不足でごめんなさい。」
「大丈夫です。どちらにせよ砕く対象ですから。」
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「その影の持っていると言われている武器は和風の刀のような物だって聞いたわ。」
「黒く影で、そういう武器を持っている……それって、僕が見たアイツ!」
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「黒くて影で、そんな武器を、って。それ、シキ君が言ってたあの……!」
「復活、なんでしょうか。」
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「それとも、違う同じ物か」
「なんにせよ、どうせあの子も命令された休暇が終わればすぐに行くって言うと思うの。」
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「えぇ、直ぐではないですが、向かいます。」
「ちゃんと帰ってきてくださいね?」
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「分かりました、博士は、そういう風に僕らが動くと皆さんに連絡していただけますか?」
「任せて。」
総て、変えてみせる。
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