FUTURE CHILI PEPPER.




俺の見た水面には既に、

次の地獄の様子が揺れていた。

先ほどとは違う植生の森林。ジャングルのような高温で多湿な森ではない、いわゆる森という以外に言葉が思いつかないが、照葉樹林……と言おうか。それが多分正しい。

傾斜はなく平坦で、妙に綺麗な状態で残った建造物が脇に立っている。

ではなぜ水面と言ったのか、その理由だが……。


「浅瀬とはいえ、一寸先は“海”だったとは……。」


『川が流れてて、その先は海…塔の中なのにそんなことが出来るなんて……』

「とりあえずQ坊、これ食え。いい?」


そう、波打ち際までの再現で終わっており精々膝下まで位の浅瀬だが、しっかりと海がそこには作られていた。

俺が彼に手渡したのは、ナミチスイコウモリのセルリアンの落としていった欠片。索敵をするには超音波が向いているだろう。障害物の多い森林というのがこの結論を出した大きな理由だ。開けた海の方は目視でも問題ないハズ。


『モグモグ…ンンン~超音波~……』


「あと、四神のお二人は出来れば刀の中に。」


塔は四神の力を利用している、四神を狙っている。だからとりあえず、刀の中に宿って居て貰うのが良いだろう、もしくは…


「…我々は一旦、

 残りの救出が終われば下に降りるとしよう。」


そう、塔の外へ出る事だ。そうすれば敵の胃の中も同然の塔にいるよりは安全になるはずだ。なのだが、ただ、そうすると俺達の戦力はぐんと下がる事になる。レイバルさんやネジュンには俺がどうにかなった時のバックアップ要員として出来れば待っていて欲しい、仮に皆で戦闘をすることになり全滅なんて洒落にならない。それに、グレープさんは今は四神の一柱、ビャッコ様に体を貸している。神だとか霊だとか、そういう生物的に捉えられた概念は拠り所を無くすと存在が無くなってしまうのだという話を聴いたことがあるが、それは本当にそうらしい。あとは目的によりけりという所かな。


「塔の外へ、という意味ですか?何故?」


「その通り、というのもじゃな……。」

「簡潔に申すと、確認をしたい、グレープの集めておった資料を見たい。そこにわしらの行く道が示されておるやも知れぬのだ。セイリュウやビャッコ、そしてそれらに身体を貸しておる者を助けるのが先決、その後に、だ。」


『それって、ボクのするべきことも書いてあるのかな?』


Q坊の行動したい欲の出所はまず間違いなく彼の中から、というよりは、彼が追っているものの方にあると思われる。多分この塔の頂上に何かあるんだろう、それなら答えから逆方向に問題まで糸を引いて答え合わせをした方が早い。

そう考えればグレープさんのかき集めていた資料を“神の目線”から見るのは大いにアリだ。概念は変わっていくし、守護けものとはいえ永久の時の波の中で若い老いはあるようなので全てが四神のせい守護けもの達のせいとまでは言わないが、何をやって来たか、何を知っているかという事実確認にも丁度いい。


『……まって……なんかいる!おっきいよ!』


彼が指差したのは 小綺麗な建物の方だった。


「しょうがない、まず、助けることからですよね、お付き合い頼めますか?」

「あぁ参ろう。」

「うむ。」













____________________

























「うぅっ、おぇっ……」


白い便器に顔を近付けて、二回か三回、嘔吐えずいた。自宅の下水の臭いのする個室の水を流して、そのあと口を洗面所の水でゆすぎ、キッチンで注いだ水道の水を改めて飲み直し、ソファへぐったりと横たわり、嗚咽を漏らした。


彼女はテレビをつけて眺めていたが、やがて苛立ったようにリモコンのボタンを押して、散らかった部屋を無視してそのままうずくまった。



シキが塔にビーストを追い登ってから、

3日程経った。

平気な顔をして送り出したが、そう思っているのは上っ面の自分で、平気なんて言葉で片付けられない苦しみが彼女の心を蔦で絡めていった。

平気な顔をして三日も不眠不休で働き続けても死んだことはないが、戦い続きなら死んでもおかしくない。自分の体調が悪いとはいえ、もう指先が一瞬さえ動かない状態かもしれない体を無理矢理に動かして戦っているかもしれないシキのことを思うとつらくなる。


この心配はある意味では正しいが、ある意味では杞憂に過ぎない。

彼は溺れかけたり不眠不休で戦い詰めで精神的に追い詰められている。だが、食事は摂らなくても一応は大丈夫、そのうえ撤退という形を取れば戻り備蓄で回復できる。睡眠不足や物理的なキズはスザクの炎である程度ケアできる。


「……。」


彼女は黙り込んだ。流れ出る涙の粒が頬を伝るたびに自分を卑下してしまう。

そのとき、乱雑に積まれた洗濯物の山の頂上に置かれたスマートフォンが、着信音を鳴らしだした。







________________










「くぐぅぅぅっっ…!」

『おっと……大事無いか?』


えぇ、なんとか大丈夫です。

そう答えた俺の目線の先には、バス型のセルリアンが居る。ぴょいんと跳ねてこちらを向いたデカイ不気味な半透明さのある黄色の体は、見掛けの割に動きも早い。その上…


「水も平気だとは…全く。ってか水上の方が元気か?」



それだけでは無い、図体がデカイというのはそれだけで脅威であり、鉄壁の防御力を誇るゲンブアーマーでさえ受け止め切れない。


『恐らくだが、こやつセイリュウとビャッコの力を兼ね備えておる…。能力の波を感じる。だが、このセルリアン一体が一体全体どうやって……。』


あ、どうやら図体のデカさだけじゃないみたい。ゲンブ様が言うには、このセルリアンの体内には二柱分の力があるらしい。巨体の割には高速移動が出来たり、平気な顔して水上を動き回れるのもそこに原因があるんだろう。


「どうします、こいつ?」


『頭脳で一手先を取る…しか無かろう。力量では完全にこちらの負けだ。…もしくは、いや…』


「どうしたんです?うぉっとあぶね、渋ってしまわれて、よっと!」


『…刀と主の体が許せばだが、四神2種の力を使えるのではないか…と思うたのだ。丁度虎の力を宿したように、相手が二種の力を持っておるように…しかしまぁ何、戯言よ、聞き逃してくれてよい。』


いや、

「やってみましょう?」


『方法が違うが……でもアヤツには…翡翠には扱えなかった物だ。それでもやると云うか?』


どうやら先代の剣の主の、翡翠、という奴には、二柱の神を扱う剣の技は扱えなかったらしい。だが、そいつはソイツで俺は俺。やってみる価値はあるだろう!無理なら別をまた考える!


「スザク様、ゲンブ様。よろしくお願いします」

少々間を置いたが、黙って頷いて下さった。


「タイプツー、お前が無理そうだったら強制シャットアウトをしろ、いいな?」

『分かってます、それに私だって出来るだけ頑張ってやります、神パワーだってもうシステムに組み込まれてますよ、なんてったって以前無理しましたからね~!』

「……悪かったよ。ってかしょうがないだろ?」


俺は一息ついて、言った。が…


「装着っっ……ぐぅぅあああああ!」

『むぅ…やはりダメか…!』


ご覧の有り様だ、纏うことさえもしていない、出来ていない、炎が俺の体を走り回り、鉱石が身体にのし掛かってくる。アーマーへと変化する物が起こす負荷に俺が耐えられないのだ。


「はがぁぁっ、づぶれるっ!焼げ死ぬっ!?」

『……システムエラーなし、対応できます。使用者の健康状態、劣悪、ダメージ、深刻、セーブモードへ強制移行、五秒後衝撃波を周囲半径5mに放ち障害を取り除きます、物陰に隠れる、離れるなどして避難してください。

  ピッ    ピッ    ピッ

     ピッ    ピッ   発動。』




『『のわぁぁぁっっ!?』』


耐えられなくなった俺を守ろうとセーブモードが発動し、障害と呼ばれた神そのものを吹き飛ばした爆風で意識が一瞬飛んだ。出した衝撃はサンドスターの衝撃波なのでセルリアンにも効くというオマケもついてくる、同時に、外部への爆風≪それ≫で浄化されて硬質化したサンドスターロウ、用はセルリウムで体表を防御する。そのサンドスターロウの出所はシキリアンだ。


『よっ!神の皆の衆。代弁役のオレだ。』


「あいてて……、というか、呼んでおらん!」

「やはり二柱は無理か……」


『やれやれ~、ほら、起きろ!』

「起きてる、退けよ」


おっと失礼~、そう言って身体の中にアイツは染み込むようにして帰って来た。


「しかしまずいな、セーブモードを発動したとなると、応援要請が他のtype2に飛んでしまう…」


普段の戦闘でこんなとこまで追いつめられることの方が少ない、つまり、逆を言えば、こうなったら俺は死んだといっても過言ではない状態にある可能性が著しく高い。だから救援信号、応援要請の通知を飛ぶようにしてあるのだ。

以前、テストとしてグレープさんに研究所の3階、多分大体10mくらいの高さからアーマーを纏わせたマネキンを落としてもらった時に発動して、はぁなるほどこの高さだと大変なことになるんだな、とヒヤヒヤした事がある。……まぁ、単純な衝撃前提だから持続的な攻撃に関しては計算外だけど、このケースじゃ十何トンも体に力が入るんだ、そりゃそうなる死にますよ。自殺しようと思うならこれより上から飛び降りればとりあえず冥府行きは安泰だろう……。


「せぇぇいっ!……と、これで良いな。お主はとりあえず少々休み策を練るのだ、相手はかなりの強者と見える。今張った大結界もいつ破ってくるか我にも予想が出来んが…ま、お主の仲間じゃ、じき飛んできて作戦を以てどうにかしてくれよう。」


先の話の通り、来てもらえるのはいいが全滅は避けたい。どうにかして被害を抑えて協力してセルリアンを倒すか、さっとスザク様に治してもらって自分でどうにかするかの二択。周りは10:0で、間違いなく協力を選ぶだろう。だが俺は後者を選びたい……。


「あの、スザク様、俺の傷を治して下さい。」


「言われずともやるから少々待て。……というかお主、まさかとは思うが自分で突っ込んで行こうと思っておるのではなかろうな?」


「そのまさか、です。行かせてください。」


「馬鹿者。救援を待てばよいだろう、そんなに味方が信じられぬのか?」


「信じているから、こっちで俺が出来ることは済ませようと思うんです。単身で突撃したいのはただの俺の我が儘じゃなくて作戦ですよ!」


『そゆこと!

 あーあー、聞こえる?久しぶり!』


炎が先ほどとは違う力で、優しく俺を撫でて、負った傷を治していく。火傷でも火で治るってちょっと絵面がおかしいけれどまぁ気にしちゃダメ。今さっき通信を繋いだタイプツーからは、おそらく火山麓の研究施設に居るであろう、明るいレイバルさんの声が聞こえてくる。


『シキ~、大丈夫なの?』


「えぇ、大丈夫です。スザク様やゲンブ様もいらっしゃるし、お二方の結界のお陰で暫くは時間がありそうです。」


『そっか、了解…あ、ジェーンちゃんめっちゃ心配してたから、無茶しないようにね。あとそうだ、スザク様達~、聞こえる?』


「聞こえるぞ、久しいの。…今はそれじゃないな、来れるのかサーバル?」


『キーッ、レイバルだってば!んまぁーいいけどさ。えっと、私は行けるよ!でもグレープとネジュンは行けないからね。シキの怪我は治してあげて?』

今しがた済ませたところじゃ、とスザク様は言いながら、俺の体の最後の傷を治して下さった。


しかし、ネジュンは行けないというのは?グレープさんが来れないのは、四神に身体を貸しているから。だが、なぜ彼女が?別の戦闘で負傷しただろうか、いや、レイバルさんといて、ただでさえ最近弱体化しているセルリアンと戦って負傷……まずもってそんなことはあり得ない。


「何故ネジュンは来れないんです?何か問題でもありましたか?」


『あぁ、それなんだけど、ジェーンちゃんがちょっと体調悪いみたいなの。シキがいないわ、前から仲いいグレープは寝ちゃってるわ、マーゲイはPPPのお仕事の調整とか、そもそもキョウシュウは今お客さんは入れないからホントはフレンズもあっち行ったりこっち行ったりするべきじゃないとかで、とにかく手が開けられなかったから、代わりにててもらおうと思ってさ。』


なるほど、確かにいい判断ではある。だが…もし、もし万が一この間の仮説が正しいならば……そう、彼女がジェーンさんと俺の間の子供というのが合っているのなら、いや、確証は無いが、とにかくそうだとしたら、彼女には、ネジュンにはとんでもない仕事を任せたことになる……むむ。


「そうですか、わかりました。ありがとうございます。……戻ったら、彼女に謝らないと。」


『うん……謝ってあげた方がいいよ。』


レイバルさんはきっと、ジェーンさんに謝らないといけないという意味で取ったのだろうけれど、いや、もちろんその意味もあるけれど、ネジュンにもちゃんと謝ってあげないと。仮説が合っていようが間違っていようが、迷惑をかけたことには変わりないし。


「じゃあ、とりあえずよろしくお願いしますね。“例のモノ”も頼みましたよ!」


『はいはーい。』

「……“はい”は一回でいいんですよ」

『はーい』

「短くていいんですよ?」

『はいはい』

「両方いっぺんに出来ないんですか!?」

『はーいはいはいっ!』


「『っ…www』」


何をやっておるんじゃ、

さぁな…わからん。

と、小さく聞こえて来た。

少し前に台本も打ち合わせもしないまま似たような会話をして大爆笑したことがあった、どうにも俺達3人組の笑いのツボにハマったのでやってしまう、緊張感がないわけじゃないぞ!リラックスの手段!



「はぁ、じゃお願いします。」

『んふ……わかったぁ…』


よし、来るまでは俺がどうにかする。それまで待ってるわけにもいかないし、準備もある。

「よし、タイプツー。やるぞ?」

『やれやれ全く、付き合いますよ、とことん!』

「ゲンブ様、よろしいですか?」

『主が阿呆ではないことは了解しておる。主が行くというなら、わしはただ生けるものの一つとして主に味方しよう。ただ無理はするでないぞ、よいな。主が思うておる何倍も友は主を想うておる。努々、忘るでないぞ。』


「わかってま…いや、わかっているつもりです」




『ホォォォゥ…グググ…』


なんとも特徴的な鳴き声ですこと、なんというか、猛禽類っぽいし、呻いていて気持ち悪い。

この声を長く聴かなくてもいいように、さっさとケリを付けよう。


「四神刀、ゲンブッ!」

『我が大剣の成す大地の怒りを以て、残り二柱の力、返して貰うぞ!』


『グググモッ!』


相手はバスらしく突っ込んで来る、ゲンブアーマーは機動力が無いので少々厳しいが、このアーマーじゃなきゃダメなんだ、出来ることが色々関わるからな、行動!作戦開始ッ!


「蛇ちゃん、亀ちゃん?今からコイツをどうにか上へ吹き飛ばします、なので、その飛び上がった辺りにラインを引いて下さい。」

『わかった、と。』


ふよふよと塔の壁の辺りまで飛んでいって貰えた、かわいらしい見た目に反してめちゃくちゃ働き者である。


『吹き飛すというのはわかったが…一体何をしようという?』

「種明かしは後でやれる事を願って…。とりあえず、今はやりますよ!」


『グムモォゥッ!』


バスは突っ込んできて、それを俺が避けたり、いなしたりする。やってることに特に変わりは無いが、自分が考えている作戦が成り立つ事を証明しなければならない。

アイツはバシャアアアっ、と浅い水の中へ突っ込んで行き、そしてこちらに勢いよく向き直した。


「なるほどそこね、蛇ちゃん!セルリアンの上の辺りで待ってて下さい!亀ちゃんは蛇ちゃんのに真反対の方へ!」


了解、というように空中でとぐろを巻いた黒い蛇ちゃんには興味がないのか、バスはまた突っ込む準備をしてこようとしている。水の上で器用にも浮き、タイヤをまるでケモノが足を使うようにしてその水を掻いている。相手に感付かれると面倒な事になるのでトライ回数は今からのお試しと本番の二回までになるハズ、つまりミスは許されない。行くぞ!


「隆起ッ!セルリアンの足元から、勢いよく!」


ゴバァァァッッ!っと地面を割るように角柱を隆起させ途中で止める!高速でセルリアンを捉え、打ち上げるッ!ガツンと行けッ!


『ゴモォォオオッ!?』


「ビンゴッ!」


大当たりだ、だいぶふっ飛んでくれたんじゃないかと見上げると、おおよそ満足の行く場所に分かりやすい宝石の線が入っていた。しかもご丁寧に、あれは翡翠だ。翡翠輝石、みどりが強いのでクロムが混ざってる硬玉の方かな。

吹っ飛んだセルリアンは壊れることはなかったが、少々の足止めにはなっただろう。


『~!ーー、~!』

『蛇ちゃん達が記してくれたぞ、やったぞ、これでいいのか、シキ~!と舞っておる。』

「大丈夫です、ありがとうございます!」


俺はサムズアップしながら機嫌のよさそうな神の使いに礼を言った。

これが確認できれば作戦は50%成功したみたいなものだろう、50%って言うほど成功率としては高くないけど、これは作戦遂行率だから。ゲームで言えばアイテムコンプリート率とかそういうのだから、成功確率ではないから。


ということでこれからはこっちとも連絡して。

『よーし到着!これからどうするの~?』


「翠のライン、判ります?」


『うん!このシキの目の色みたいなやつね?』


「それです。その辺で待機してて下さい、印を撃ち込みます。」


印はスザク様にお願いしよう、自分でやらないのにはちゃーんと理由がある。


「炎で印となる植物を塔の外側の壁に生やしてほしいんです、後は周りの壁を植物が満足に育成出来るほどの柔らかさにして貰いたいのですが、出来ますか?狙いは、今蛇ちゃん達が居る所で、ライン上です!」


「御安い御用ッ、ッ!」


ボシュウッ、と音が立ち、壁の色が少し茶色く変わった。後は外の彼女に訊いてみよう。


「判りますか?」


『コレ~…かな?うん、唐辛子?』


そうじゃ!という声を律儀にマイクが拾った、

あとは外せないこれをお願いする。


「文脈に関わらず、今だ、と俺が言ったら行動開始でお願いします。」


『グググ…』


「待たせて悪かったよ、

     …それとも、回復出来たか?」


『グモウゥゥッッッ、ウヴヴヴヴ……!』


「エンジン全開ってわーけーね…!?」


水飛沫をあげている、

風が吹いてきている。

それが集まっている。

エンジンのような音が風によって起こされて、突進の準備を始めているのだ。

チャンスは一回、これに賭ける!



『グゥゥゥウゥッッ!!』


音がでかくなり、そのすぐ後に突進をしてきた。

突風が俺を襲ってはいるが、ゲンブアーマーの重さのおかげでなんとか耐えられる、あとはしっかり避ける!一回!


「よぉいしょ!」

『グモォォ………………………!』

『二回目だ!』


分かっていたぞ、ここからだ、慎重に見極めなければ勝てやしないだろう、だから、冷静に、絶対の一撃を放つ!


「ゲンブ様、俺が次に“装着”と言ったら、あなたは剣から出て、アーマーを解除してください。お願い、できますか?」

『……承知した。』


来た。いなすッ!


『グモォゥゥ……!』


予想どおりだ、こいつは振り向くとき、

一回ジャンプし、空中で方向転換する癖がある!

そして、こうなら!


「行くなら今だ、打ち上げろッ!」


ダァァァッン!

先の要領で打ち上げるッ!そして!


『グモァオオア!?!?!?!』

「装着ッッ!」


ぼっかーん!


『よっと…って、な、なん………!?』

「なんじゃこれはァ!?」


『~!?~~~!?!?!』


飛んで行ったセルリアンの身体をぶち抜いて行った重々しい黄色のワイルドなソレは、突撃後分解していき、俺の特殊アーマーへと変化する!


『TYPE-GEAR…!』

「さァ!歯ァ食いしばれよォォッ!?」


『『ヒッ!ヒィィィィィ!?』ナノデス!』


分解されたセルリアンの破片。それぞれが一方は突風を白い翼に、もう一方は深い青の水流を大きく静かな翼に宿していた。二柱分の力があったのは、合体していたから、という訳らしい。


『もう一度行くデスよ!助手!』

『了解デス博士!』


「……いや、お前達に、もう一度はない!」

『TYPE-GEAR-FULL-THROTTLE!』


吹かせエンジン!

纏え輝き!

取り込んだのはさっきの唐辛子!

あの唐辛子が発生させられる痛みや辛みというようなエネルギー、カプサイシンの発生させられるエネルギーをそのまま出力に変換する!神パワー入りで中々の火力ッ!


「スザク様、ゲンブ様!同時にお願いします!」

『了解!我の炎にて葬ってくれる!』

『承知!わしの岩石にて封ず!』


飛び上がって、決める!


「セイヤァァァァァァッ!」

『溶炎!』

『噴石!』


放たれる無数の弾丸!

俺が放った必殺の蹴りっ!


『かっ!からいのですゥゥゥ~!?』

『はっ、博士!今はどちらかというと、つらいですゥゥゥ~~~!!!!!!!!!!!!!!』


パッカァーーーーン!


「ナーイスシキ!外にも出られるようになったよ?流石頭良いね?」


「それほどでも無いですよ?」

「いやいや!天才だよ!遠慮しないでよ?」

「はーい。」

「はい、は短く!」

「はいはいっ。」

「一辺に出来ないの!?やっぱアホ?」

「はーいはいはい。」




…んふふっ。

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