1000と0 その4⁰+1!







「あっ、畜生待ちやがれ!」







刀…そう、塔でセルリアンが渡してきたこの刀が光った途端、あのビースト達は逃げて行った。

一体全体何が起こったのか判らなかった、判断のしようがない、眩しい閃光が起きたのだから。


「おにーさん!大丈夫!?」


友絵さんが走って駆け寄ってきた。


「生憎あんまり大丈夫じゃないですけど…」


その後ろからかばんさん達もやって来る。


「…さっきの、どこから来たんです?」


俺は友絵さんに訊いた。

彼は下を向いた。


「わからない…」


「じゃあなぜ友達がどうとかって?」





「だって…みんなフレンズでしょ?」


俺は思わず溜息をこぼした。


「…少しは危機感を持って下さい、貴方の人の良さってのは勿論良いことですけど、でも、自分が襲われているんだから。」


「ごめんなさい…でも、なんか敵って言うのは可哀想だし」


敵って言うのは確かに可哀想だが、

…やっぱり敵だしなぁ、襲ってくるんだったら。


俺は刀を腰にかけ直した、

よくよく見ずともミスマッチな服装である、

白衣の男の腰に刀だ。

ダサいと言えばその通りである。




「くぁぁっ!?」



また刀が光った、

これは、

さっきより強い光だ。

さっきよりもっともっと強い。


「何に反応したんだ……?」


その答えは、すぐに分かった。

「あぁぁっつ!!??」

「つめたぁっ!?」

「おぉぉっも!?」


そして。


「うぉわぁぁああああ!?」


「グレープさぁぁぁぁぁん!?!?」

飛んでくるのか…。


火の粉が舞い、

水が流れ。

地面が揺らぎ、

風が吹き荒れる。


「いってて…な、なんで急に…?」


「…そうか、俺達だ。」


よく見れば風を纏っているのはグレープさん本人だし、熱風も流水も地震も全部“以前認められた”彼らの周りから発生している…!




…きっと、俺達なんだ。

あの伝承にもあった。




波立つ 輝ける島

輝きの島 ある時 黒雲立ち籠めん

その黒雲 輝きの山より出でる

闇の中 黒雲 裂く三英傑現れり

奇怪なる相棒 携えし若人

轟音の磁場 山崩す若人

氷上の狩人 舞う若人

三英傑 黒雲切り払い 楽園を導く

四神 金輪際 それ起こらぬよう

輝きの山 封印す

封印の力 いづれ弱まらん

四神 その山に化身安置す


四神 その山に言い残したり

『我らの力を欲する者よ

 6人の選ばれし若人を集めよ

 1つ 奇怪なる相棒を携えし若人

 1つ 未だ旅を歩む友の若人

 1つ みずに認められし蒼髭持つ若人

 1つ ほのおに認められし朱尾持つ若人

 1つ かぜに認められし耀毛持つ若人

 1つ 大地だいちに認められし黒鱗持つ若人

 6人の若人集いし時

 虹にも似た煌めきが

 山を覆い尽くす

 その時 黒雲を封印せし壁

 完全無欠の称号を持つだろう』

と。


やがて6人 若人集い

山に 虹の雨降らん

かつての黒雲 役目を果たし

外界の光 その身に浴びん


神も仏も居ないなら

在りし四神 捜しだせ

土を纏うその石に

見合う覚悟があるならば

伝説に名を刻め

神も仏も居ないから



そう、これだ。

ここにある6人、

それが俺なんだ。俺達なんだ。


「うっ…あぁ…。」ドサァ


「っ!?セルリアン!?」


急にだ。

突如としてグレープさんがぶっ倒れた。

振り返って何故かいつの間にか治っているアーマーを鳴らしてSlaMpNumを構えた。

が、敵らしい敵は居ない、

これならば先ほどの衝撃で、目眩でもしたのか

と説明出来るがそれは違う。


「うぐっ…うぅ」

「おい!タコっ!?どう…し…うッ…」

「鳶矢さ…ング…ん……。」


俺、友絵さん、かばんさん。

3人と、

かばんさんに着いてきたサーバルさんは起きている。逆に言うと残りの4人が起きていない、皆気を失った。急にだ。


「息はしてる、ただの失神か…。」


「とりあえず、皆さんを安全な所へ運びましょう。サーバルちゃん、手伝って?」

「はーい!」

「ボクもやるよ!いよっこいせ…」


気を失った4人をどうにかしよう、

とりあえず研究所まで運ぶこととなった。




_________________________








「そっちの仮眠室のベッドなら空いてますよ?」

「お水持ってておきますね」

「シキさんも大変ですなぁ…」

最近入ってきた新人の研究員くん、といってももう大分一緒に仕事しているけれど。

名前はえっと…

伊東いとう 益砂えきさくん、

根古ねふる 華霧李けむりくん、

衛守えもり 永気えいきくん。


三人は仲がいい、それもとっても。


さてそんな俺と実は歳がそう遠くない彼らに四人を一旦任せておいて、

俺が聞きたいのは…


「ビーストって…なんだ?」


研究所の所長である姉さんは言う。


「ビーストは、1/1000の確率で生まれるフレンズの…言ってしまえばなりそこない。あの子達は常時野生解放をしている状態に近くって、寿命はフレンズと比較すると短いの…確か1/5だったかしら?」


「対処法はある?」


「ほぼ猛獣よ?野生動物みたく麻酔で捕獲するなり…あとは殺処分かしら……したくないけど……」


そう、か。

俺は下を向いた。


助けられない……


そんなことはない、

自分にそう言った。

言って聞かせた。

敵だとはいえ、

救えるかもしれない命だから、

そうやって聞かせて黙らせた。


「でも……1000回に一回の確率よ?そんな珍しい物が二体も出てくるなんて……そんなことあるのかしら。偶然とするのは無理があるし少し現実的じゃないし……かと言って…うーん。」



悩んでいる姉さんを見るのはもはや慣れたものだけれど、

さすがにこんな現象は初めてだ、

ビーストが発生すること自体稀であるし、

最近は噴火もしていない。


一体…なにg

「アッッッッッッつい!?」


⁉今のは益砂えきさくん⁉


叫び声は仮眠室、

ようはさっきの四人のところからだ!


「おぉぉぉぉい大丈夫!?」


あわてて四人の所に向かったら、益砂えきさくんがあわててで出てきた。

「大丈夫じゃないですぅ!なんなの!?急に燃えたり水飛沫が飛んだり!?情報多過ぎでは!?」






『……えるか!?…い!』




泣きそうな彼の顔の向こうで、

四人の口が動かないまま何かを言っている。


『私何処に入ればいいのよ?』

『お主は向こうへ行けい!狭い!』

『我はここにするぞ』

『久しぶりよのうグレープ…』


…。

「あのぉ~……。」


この覇気は…まさに。


『『『『んんっ!』』』』


『我ら四神!名乗り省略!』


「四神の皆さんが…どうなさったんですか!?」


『細かい事は後じゃ!お主がカコの弟のシキとか言ったな?突然だが…助けに来てくれ!!!!!』


「あの、何処へ!?」


『塔よ、あの塔。私達はそこに…はいないけど…』


「あの、どういう状態ですか!?」


『その辺は後で説明してやろうぞ、とにかく!』


「…姉さん、俺、行くよ」

「気をつけて。約束よ。」

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