ランペイジ・レイジ
…この景色が僕は好きだ。
たまに泊まりで遊びに来た。
この景色は、そんな時不思議な夫婦と友達で見たのだ。今はそんな事してないけど、ちょっとしたい。
遠くがよく見え、
ココアを飲むと風に馴染んで落ち着く。
「…お、まだ起きてたの。目が硬いねぇ?」
「あぁ…どうもグレープさん。夜風が心地良くて良いですね、ココ。」
湯気の上がるコップを2つ持って
古廉家の大黒柱は僕の隣へ並んだ。
「へへ…そうでしょ?ほら、ココアでも飲んだら?ホントはフルルの分だけど、あの子はすやすや眠ってしまった。君にあげよう。」
どうも、と言って受け取った。
甘い香りが鼻を癒していく。
今日僕はここに泊まらせて貰っている。
正直自分の家でマトモに居られる気がしないので飛び出してきた。お母さん…ではまだないジェーンさんに気に入られてしまった時はどうしようかと思った。
…そういえば前に、お兄さんに「ジェーンさんは僕の母だ」と告げていたのに何も突っ込まれ無かった。
まぁお兄さんは僕が娘だと思って無いだろうし、
きっと世界単位のよそ者だと思われているに違いない。
「…はぁ。」
「悩みかい?」
いつでも彼は鋭い。
のほほんとしているようで、人を見ている。
モモだってそうだ。
彼女は親の割にはガツガツしているけど、
人を見ているのは同じだ。
「まぁ、そんな所です。」
僕は少しだけココアに口をつけ啜った。
「…グレープさん。貴方は、僕がタイムトラベラーだと言ったらそれを信じますか?」
少しだけぶっ飛ばしてみる。
「ほへ?凄い事言うね、気に入ったよ。」
未来で幼い頃に同じセリフを吐かれた。
確かその時は、
どうして僕のお父さんはずっと寝てるのか、って訊いたんだっけ。
その時彼は、
『頑張ったあとって眠たくなるでしょ?お父さんはすっっっごい事をしたんだ。それは一日丸々寝ても、たっくさんお魚を食べても取れない位のすっごい疲れる事。だから寝かせてあげな?』
とか言ったんだ。
[いつか起きるかな?]
って訊いた僕はまだ片手で歳を数えられた。
「僕は君を信じてみたいな。」
僕が思い起こす間を使って考えた彼は言った。「何故ですか?」
もう一回ココアを飲んで言った。
「…根拠は無いけど。強いてあげるなら僕にとって君は不思議でたまらない存在だからだ。」
ビビビ、
と彼の目に電流が流れたように見えた。
「君は塔の上から来たんだろう?知っての通りしばらくあそこにはバケモノが居て一般人がうろちょろ出来た場所じゃ無かったはずだ。なのに君は上から来た。来ることができた。最初は君を敵だとさえ疑ったよ。だがそうでもない。だったら、あの塔のせいで世界単位のよそ者がこっちに来たかあるいは塔という存在が安全なものになった所からやって来たか位しか思い浮かばなかった。」
どうだい?僕の仮説さ。
と言った彼は、
判ってたぞと言うようにこちらを見た。
「…僕は貴方に、グレープさんに勝てる気がしません。凄いですねぇ、ホント。」
「そんな事無いよ?僕はいつまでも未熟さ。」
…彼になら、話しておいて良いだろう。
「僕のお父さんは…リネンは、将来命を落とす事に…いや、落としかける事になります。彼は一人であの塔の中を駆け上がり、塔を破壊してパークに平穏をもたらし…目覚める事の無い眠りにつきます」
「ちょ、ちょっと待って?急すぎないか?」
今…今は。
「今は貴方にしか託せない!僕を知る貴方にしか!だから協力して下さい…僕はお母さんが一人で背負っている荷物を少しでも減らしてあげたいんです!英雄の…英雄である父の瞳にまた光を宿したいんです!身勝手なのは百も承知です!でも、神が与えてくれたこの偶然の時間旅行を偶然のままにするなんて僕には出来ない!たとえこの旅の終わりが悲しい物であろうと!僕には放っておけないチケットなんです!きっと彼は、僕の父は同じ未来を導いてしまう!だから僕らの手で変えるんです!未来を!」
「…嘘はないみたいだね。」
彼は一呼吸置いて言った。
そして、こう言った。
「きっと壊すぞ。悲しい未来を。」
塩味が効いたココアを飲むのは始めてだった。
よく、眠れた。
____________________
イーックシィン。
くしゃみが出た。
「シキ君風邪ですか?無理せず休んで下さいね?」
「大丈夫だと思いますけど…イーックシィン!」
今日はさっさと寝よう。
かわいらしいパートナーをゆっくりと抱きしめて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます