Friend Ship


呼んで数時間だ、噴出される強い炎の音が聞こえてきたのは。



「来たし、聞いたよ!やっぱり女王絡みだよね…読みが当たってよかったと言えば良いし」


「間違いなくややこしい話だから悪い話だ。という事ですね。」


集まって四人、

これからどうにかここの塔を、

さっさと突破しないといけない。


「シキ、要請の件なんだけど…」

「大丈夫そうですか?」

「問題なし!ハンター組が頑張ってくれるらしい。塔にも呼んだら助けにきてくれるってさ。」


良かった。

胸をゆっくりとなで下ろした。

塔に集中してしまうほどまわりのセルリアンの対処が出来なくなってくる、それではいけないので本業の彼女達にお願いしておいた。きっとどうにかしてくれる。そう信じるしかない。今は。


「どうするの?これから。」

「というと?」


「…この塔のてっぺんにはよくわからないバケモンがいるのは…知ってるよね。あいつのせいで近寄れないんだ。」


正体不明のセルリアン。虹色の雲の切れ目から時折ちらりと姿を現してはまた消える。ある人は赤い鳥を見たといい、ある人は白色の猫のようだと。


「分厚い雲が厄介でさ。見えないんだ。それでも、それでもわかるのは、この塔が思ったより小さいってこと。あってあと数階だと思う。」


思ったより登ったんだな、見上げた時は絶望しかなかったが。

そうと決まれば俺たちがやることはただ一つ。


「これから頂上まで勢いを殺さずに、一気に駆け上がりましょう。この一大事を、一刻も早く終わらせるんです!」

「それを待ってたよシキ!やっぱり頼りになるね、僕より若いのにカッコイイが過ぎるぞ?」

「よぉぉし、私だって頑張るよ!だってサイコーのチーム、最高のフレンズがここに集まってるからね!」

「僕もやります、自分のためにも。みんなのためにもね!」


目の前の向こうへいこう、踏み出した一歩がそろわないのも俺ららしいだろ。引っ張り合うんだ、手も足も、後ろ髪も。



____________________________




「どうせ相手は三体さ、このまま行って終わらせるぞ!」


木組みの大きな部屋、ご丁寧にベッドや絨毯が敷かれ、半透明のガラスのような塔の壁が外の遠くを見せ、むき出しの壁は少し湿っている。


『おっと、一筋縄なんてそうはさせないよ?』

『名探偵ト!』

『名オーナーですカラ~!』


さぁ寝心地のいい思い出のベッドのあるロッジだ。

ジェーンさん怒らせちゃったのもあるか。


「俺は連戦してるのもあって、LBの状態が悪いので遠くから援護します!いいですか?」


「了解!僕はどーしましょお兄さん?」


「ネジュン、君はキリンアンを頼めるかい?グレープさんは対空が出来るからアリツリアン、そしてレイバルさんはオオカミアンを!できる限りの事をします!」


「無理しないでね!調整終わってからで大丈夫だし!」

「焦りは禁物です、まぁ、お兄さんなら大丈夫だと思うけど。」



「行くぞぉぉ!久しぶりにダイバー!」

『いいでスよ、来テ下さい?ワタシだって飛行は得意ですもノ!』


グレープさんが戦い始めた、

とりあえずそっちに付こう。


「この飛行速度に付いてこられるかな?僕のダイビングは荒いぞぉ!」


『なんのナンノ!ほいっ!ほいッ!』


アリツカゲラはキツツキの仲間…、瞬間瞬間の回避でグレープさんの攻撃を避けて、


『そりゃりゃりゃりゃぁ!』


「痛った!いでででで!?は、速い!?」


超高速の突きを繰り出す!

フレンズやセルリアンは恐らくサンドスターの膜を作っているんだろうけれど、元動物は、己の突きの衝撃を吸収するために、頭蓋骨をクルッと囲むような形で舌が付いているらしい。

とんでもない構造だが、一回つつく度にトラックにぶつかった時ほどの衝撃を受け、それを秒間何回と繰り返すのだからそこまでしなければならないのは生物として当然だ、ないと死ぬんだから。


…ってそれを喰らったの!?


「グレープさん!大丈夫ですか!?」


「流石の耐久性だよ!なんとか平気!」


『まだマだァ~、です!』


「平気だけど、ちょこまかしてて攻撃になんないよ!コレじゃいつまで経ってもトドメのメの字が見えてこない!」


自力でそこまで追い詰められる自信はあるんだ。

まぁそれを言ってしまうのはヤボだね、助けてあげよう。そのための俺だ!


「タイプツー!アフリカオオコノハズクアーマー使うから準備しろ!」


『以前使用して痛い目見てたじゃないですか!』


「いーから!!ほら、セット!」


『アフリカオオコノハズクアーマー!

  カモーン! 

   コノハズクストーム…?

 …あの、この「改」ってのは?』




「改良版さ、使い勝手アップだ!」




装填する矢を変えられるようにしたんだ、どうにかこれで戦っていけるはず!

まずは下準備、通常の矢じりを使う!


「うぉりゃ!せいっ!」


軽量化して持ち運びも便利になった、

クッと引き絞っては撃ち抜くんだ。


『おわわワ!横槍は頂けまセンネ!』


「今だぁっ!ぅうりゃあ!」


バション!と吹かされたマフラーからの勢いが見事な体当たりを喰らわせた。

グレープさんらしくっていいね!


『なんのぉ…!』


「させない!モーキンクラッチ発射!!」


モーキンクラッチとは、

猛禽クラッチと書ける。

(クラッチはがっしり掴む、などの意味の英語)

コイツは、弓の矢じりの一つ、

「クロウヘッド」を使う。

ロープをくくり付けた矢を勢いよく発射し、着弾と共に急速な巻き上げを行い自ら…を運ぶのは物理的に無理なので、巻き上げ装置に付けた硬質の材料で出来た刺で敵を攻撃し傷を付ける。

さっくり言うとこんな感じ、わかんなかったら作ったやつに訊いてね。(←お前だよ)


『いたァァァァい!?』


「バランスを崩しました!今です!」


「任せろぉ?

内部エンジンフル稼働、

マッハブルーマリンで決める!!」


彼自身が突撃するつもりってとこね、

行けよペンギン!

音速の海の矢じりになるんだ!


『ワタシの対応できる物件とオ相手は陸上の方に限りますぅぅぅぅゥゥゥゥゥ!』パカァーン!



「断末魔それでいいの…?

あと、僕陸上生活の方が長いけど…。」

いやホントだよ、ちょっと笑ってしまった。





「お兄さんっ!こっちお願いしていいです!?

結構つよいっ!…おわっと!」


「んっ!了解、すぐ行く!」


『セット!ライオン!

 SlaMpNumマグナムモード!』


『ホワイトライオンです、Ready?』

「装着っ!キリンの天敵はライオンなはず!」


長い脚、そこから打ち出されるキックが強いのだ。それは成体のライオンの頭蓋骨を木っ端微塵にしてしまうほどの威力。


「獅子王焼炎弾!」


ならば縦横無尽な獣王の燃える咆哮を喰らえっ!


「キンキン棍棒でlet'sベースボールだ!

ふぅぅぅんっっっ!」


打ち返す先はセルリアン!

カコォン!と打たれた獅子の弾丸は!


『コノ程度デ…ヘコタレヤシナイ!』


「っ!?強い…!」


防がれたか、クソ。


『アリツサンノ仇…!』

『私も協力しよう!』


待てー!という声が少し向こうに鳴った、オオカミは群れを好むからそこの関係もあるのだろうが、面倒くさいし何より強い!

ロッジのこの3人はなんだかんだいつも一緒にいるイメージがある。無理矢理引き剥がすと生まれるのは怒りか。それが強さか。


友の強さか。


「グレープさんはフリーパマグロウの準備をお願いします、レイバルさんは硬い氷の精製を!ネジュンは一回バックに戻って回復!補填は俺がやる!」


「ありがとう…でも、大丈夫なんです?」


「調整済みだよ、安心してくれ!」


『セット!グレープ!』


ならばこちらも仲間と切り抜ける!


『ナンノ真似!?』

「そう易々と止められないよ!だって頑張るって決めちゃったんだから!」


そう言ってレイバルさんは地面に腕を突き付けた、と言っている間にみるみるウチに氷の壁が出来上がる。

どんどん準備していくぞ!


『卑怯な真似はやめろっ!』

「申し訳ないけど、卑怯じゃないと勝てないのさ!」


グレープさんはまわりの氷の壁をバキバキ砕いて、その崩れた中である程度人の乗れそうな大きさの氷に磁石を仕込んでいく!

これは俺達の狩りの技だ、卑怯であろうがそれでいい、それが生き物としての知恵だ。


「グレープさん!俺の脚に磁石を、右Nの左Sでお願いします!レイバルさんは相手を足止めするみぞれのような状態の氷を!ネジュン、君はその氷にキングコブラアーマー辺りで毒を仕込め!」


「「「了解わかった!」」」


足にくっついた磁石を使い氷を三角跳びする、磁石は磁力オンオフを繰り返していく訳だ!


「グレープ!私達を運んで!」

「任せろ!磁石便です、捕まってろよー…」


ぶっ飛んで行って3人は相手の近くの氷の壁にくっついた!


「キングコブラさん、また借りるよ!」

ぶしゃああああああ!と毒霧を、

「うみゃぁぁぁあああ!」

レイバルさんの霙に合わせ放つ!


「「「今だ!」」」


了解わかったっ!」


ビュンっ!

一瞬の蜃気楼、まずは右足を!

そして左足っ!

アスレチックのような狩りの最終地点は、敵の真上!いくら首が長くてもこれには届かまい!


「ドリルアクセルッ!」


ガガガガガガガッッッ!パカァーン!!


「ひゅー!カッコいい!10点!」

「僕も10点にしとこ!」

「じゃー僕も10点。」


キュッと、凍りかけた豪華な足場をフィギュアスケーターのように止まった。

虹の煌めきの歓声と、焼け付いたバーナーの口の煤がほのかに希望を教えてくれた。

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