あぁ暗闇よ旅を泣く。 3









「はぁ…はぁ…終わったか?」


『残念ながら…まだいますね。』



噓だろう…?

中心には黒々と濡れたように立ち上がっている二体のセルリアンが見える。恐ろしい姿だ。見慣れたものだけど。雄々しい角二対×2。


『ふむ、恐らくはオーロックスとアラビアオリックスでしょうね。マスター、どうなさいますか?このまま戦いを続けるのは無謀でしかありませんよ。』


「うん…そうだね。僕も同意。」


『一旦離脱しましょう、囮輝おとがき発射っ!』


囮輝とはそのまんま読んで字の如く輝きを持つサンドスターをばら撒くそのままの技。煙幕として視界を遮る効果もあるが何と言っても高濃度の輝きに引き寄せられるセルリアン達の生態を上手く利用している。

とっととこの大部屋から逃げよう、とにかく階段まで下がればいいのだっ!撤収!






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ググググググッッ………




___/\『GYULALL!』//__//__



「『えぇぇぇっっっ!?』」



撤収!って叫んだじゃん!こっちくんなよバカ!バーカ!いや多分賢いからこっち来てるんだろうね変に賢くなくていいんだよバカバカバカバカ!

演出かち割ってくんなバァ~カ!!


『ドッッッドッコドンドコドンドコドウンンンどうしますどうしますどうしますどうしますどうしますどうしますどうしますどうしますどうします??????????????待ってください今壁に穴を開けて強行突破は物理的に不可能です!かといって今この絶対絶命のこの流れはどうすれば良いのですか!?!?!?』


「僕に訊かないでよ!なんでこーゆーときに限ってポンコツなんですかねホントにさーっ!しかもしかも囮輝仕事してないんだけどぉぉぉっ!?」


全く引きつけていないってマ?

霧は漂うだけで全く動いた様子無し。

ただ無駄に光輝いている。無駄に。


『『GUNNNNRURURURUAAA!』』


「『死ぬゥ~ッ!?』」

思わず尻餅ついてしまった、

せめて、最期まで、明るく…

☆南無三ッ☆








「それは私達困るんだよねっっっっ!」バッキィン!

「『??????????????』」(音割れネジュン)



「あなたは!?」


「銀盤の狩人、レイバル参上!まったく、単騎突撃はよくないよ?君にも仲間、いるんでしょ?だったら覚えておきなよ?ふんっ!」


彼女は氷の盾を勢い良く振り、

二体を吹き飛ばした。


「…君は一人じゃないんだよ。」


ミオみたいなこと言うな、この人。

「…ははっ、なんだか貴女、僕の知り合いみたいなこと言うんですねぇ?」


「そう?じゃあその友達、すっごく強いでしょ?」

自信満々に言いますよね貴女。


「…?えぇ、まぁ、確かに怒ると怖いかも知れません」


「えっその知り合い私じゃない?」

「なんのことですか…」

「いや、なんでもない。」



とりあえず倒しちゃうよッ!

そう叫んだ瞬間、吹き飛ばされ体制をどうにか整えようと槍を地に突き刺したセルリアン達の周りに火花のようにツカツカとひかる結晶体が生まれた。

そして、核を貫くようにそれは伸び、そのまま貫き、

爆ぜた。







「さて、どうせまだまだいるんでしょ?」


「えぇ、わたくしはここに。」


「えっ……?ってシロサイ!?なんでいるのぉ!?」


セルリアンが喋った!?と思ったら違った、

見た目は中世の騎士の鎧を纏った女性、口調は時代感相応といったところか。彼女はシロサイのフレンズ。

僕の時代では、昔ウチに迷惑かけたお詫びとしてよくしてもらっている。はぁ、ますます現実味を帯びてきた。本当にタイムトラベルしたんだなぁと。(他人事)


でもなぜお嬢様(勝手に僕がそう呼んでる)が?飛行できなくとも侵入できるのはわかったけれど、フレンズがここにいる必要がない。


「少々面倒な事になっておりまして…。ヘラジカ様とライオン様が、塔にはセルリアンがたくさんいるから力比べついでにシキ様方のお力になろう、と仰ってですね。」


「じゃあこの先に?助けなきゃっ!」

食い気味でレイバルさんは訊く。


「いえ、今は城に。まぁ、普通勝って帰ってくるものだろうと思っていたわたくし達も問題なのですが……その、まるで生気がない瞳で『あれは、自分だった』と……」


ぐぐぐ、と少し拳を握るのが見えた。



「それって、輝きを奪われた…?王が……?」


「えぇ。そこでわたくしが情報を伝えるため、そしてどうか倒していただけるよう、ここに。他のみんなは手当てしてくれています」


「僕らの後ろから来たのはそういう…。」


「私そっくりなセルリアンは倒しておきましたわ。すごく手強い相手でしたが、なんとか。ただ、わたくし如きでは王の肩書きのあの方々の輝きを持つセルリアンなど……。」


「わかった。ありがとうシロサイ。行ってくる。」


「お気を付けて……!どうか、不肖シロサイをお許し下さい。」


レイバルさんは一気に駆けて行った、

地面を薄っすら凍らせて滑るように。


「……そういえば、初めましてですわ。」


「えぇ、僕はネジュン、覚えておいていただかなくても結構ですが。名前のかわり、僕の質問に答えてほしいです。いいですか?」


「えぇ、かまいませんわ。」


少し困惑と、あとは師の安否を案ずるような表情だ。


「安心してください、あなたを襲うわけではありませんし、あなたの尊敬している師匠の仇は僕が。」


ありがとうございます。

そう返してきた表情は安心の奥、悔しい目をしている。


「あなたが会ったのは一体だけのセルリアンで間違いないですか?」


「えぇ、一体です。わたくしに似たセルリアンが一体。」


「そうですか。じゃあ、塔ができてから、貴女達の能力に変化は?」


「いえ、特にないですわ。酷い疲れを感じた事もありませんし。」


うーん。フレンズの輝きを食い漁っているとも考えたけれどちがう……と。


「とっても参考になりました。ありがとうございます。」


「お役に立てたのなら本望ですわ。」


「あとはお任せ下さい。僕にね。」


僕は、ミオに教えてもらった氷で滑って移動するという技で駆けだした。そういえば、レイバルさんは同じことをしていたように見えたが……?


いまはそんなこと、いいか。




__________________________





「やっときた、階段の下で何話してたの?」


「すこし、気になったので聞いたんです。塔の中にセルリアンがいた時、元のフレンズの体調に影響があったのかな、と。」


ふぅんと言った。わかってないな、この猫。


『フゥン、二体カ。』


結局セルリアンも喋るんだ。

輝きを取り込んでるから?


『ワタシタチノテキジャナイ。イクゾ!』


そのセリフは、

「こっちのセリフですよ。ね?」

「もちろん!」


『王には王、キングコブラで行きましょう、マスター。』

「おっけ~覚悟ッ!ヘラジカリアン、貴様は僕が相手だ。」

『ネジフセテヤロウ。』


「それじゃあライオリアン、私は私でいくよ。」

『セイセイドウドウブチノメシテクレルッ!』



____________



激しい攻防が繰り広げられる。

両者引かない、僕だって王の力を借りているのさ、負けてたまるか、あのシロサイさんのやるせない顔、晴らして見せる!


「来いっ!キングベルジュ!」


手に呼び寄せた剣はキングベルジュ。

蛇王の神経毒を纏わせた波打つ刃は相手に食い込み灼くような痛みと共に破壊する。フランベルジュという剣がモチーフになっているのだ!


『ソンナホソッコイブキデワタシニカテルトデモオモッテイルノカ!?ハハハハッ!オモシロイヤツダ!ゼンリョクデムカッテコイ!』


「思ってなきゃ使わないよ!たァァッ!」


斬りかかったがまずは武器で弾かれる。相手は…何だ、杈と表現するのが正しいか。うん。僕も詳しくないし調べてほしい。今は戦いの最中だしつまり避けてしまえば勝ち。


『フン!ナカナカヤルナァ!』


「相手を順当に評価するその姿勢、嫌いじゃ無いですよ!」


『ナラバコレデ!ウォォォォォッッッ!』


おい待て突進だとぉ!?

こっち剣細いし盾とかないんだって!

ヘラジカの突進っておっきなトラックぶち壊せるんでしょぉぉぉぉ!?


「止まれぇぇぇっっっ!」


こうなったら尻尾で応戦!剣はすっ飛んでいったが今はいいや。

キングコブラの長い尻尾はアーマーにしっかり搭載されてるぞっ!これでしばいて動きを止めて縛り上げだぁ!

『ナニィィィ!?』


「ふんぐぬぬぬぬっ!」


ここで止めて……そして……


「レイバルさん!そっちぶん投げます!」


「よぉしかもーん!ライオリアン!ちょっとジッとしててよ!」


『『ウワァァァァッ!?』』


両者をぶつける!やったぜ。計画成功だ!


『アタマノマワルヤツラダ…』

ライオリアンの息が上がってる、レイバルさんの氷は熱帯地方の相手には凄まじい特攻力だったのか!相手のトドメにトドメを刺すぞ…

今がとびっきりのチャンスだ!


「決めるよ!ハァッ!」


『「Free-Z Zero_Dry!!!!!!!!」』

「with 蛇王死毒煙キングデッドスチーム!」


絶対零度の毒を喰らえッッッッ!


『グッ…オォォッ!』


ライオリアンに当たる!そう思った瞬間。


『オォォッ!!!!!』

凄まじい雄叫びと共に走ってきて、ライオリアンを弾き飛ばしたヘラジカリアン。

冷気を凝縮したビームと、僕の毒の濃霧が合わさったこの攻撃を総てその体に受け、核を貫かれた。ライオリアンはどうしていいのかと、そのまま見ているだけで、僕らは想定外ながら一体討伐できた事に嬉々としていた。


「…よし、想定外だけど。このまま攻めるよ!」


『ヘラジカッ…オマエ…ナンデ…!』


セルリアン同士でも、こんな事するのか。

輝きって、恐ろしい物だ。


『ワタシハ【森の王】、オマエハ【百獣の王】。オマエノホウガワタシヨリウーントツヨイ!ダカラ…オマエハゼッタイニアンナコーゲキデシンジャイケナイ…ワタシハ…オマエヨリツヨイヤツ…シラナイカラナ……』パカァン!


『ワタシハ…カツ!オマエタチニ!』


「うぉっ突っ込んできた!?」


「僕が行きますッ!来いっキングベルジュ!」


『獅子秘伝 閃爪ノ見切リ!』


「王蛇 二輪月影大回転ダブルムーンブレイクっ!」


一直線に走ってくるライオリアンに敢えて正面から向かい走る!蛇らしく少し蛇行しながらね!

そして、今っ!


「とぁっ!」


『ナニィ!?』


目の前まで走った所で大きな尻尾を使って大きく跳躍!蛇行しておけば万が一ぶつかりそうでも横に避けられるのさ!


「満月を描く!剣の軌跡で!」


空中で相手の背中に一発大きく円を描くように斬る!縦に斬るんだ、満月を描くように!これが一発目!


『グッ…アァ…ウォォォォァァッッッ!』


読み通り、

つかみかかろうとしてボディがガラ空きだ!

ここに、回転斬りッ!二つ目の満月ッ!


「敵将ッ!討ち取ったりィィィィッッ!」


パッッカァァン!



剣は銀の太陽のように、痺れ、まだ燃えていた。

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