あぁ暗闇よ旅を泣く。 1
「雨だね。」
「あぁ、飴を舐めたいほどに、な。」
研究員の群れの中に、私は立っていた。
なんて洒落た事は言えないの、だって私だよ?
レイバルさんだよ?
カコ博士はなにか難しいこと言ってるけど。
「集まった研究員は……少ないな、もっと呼んでいたはずなんだけれど。」
いままでの常識が通じないことに心躍らせてしまう楽しい研究員様に来てもらっているのできっと大丈夫。
多分!
……多分。
こんな歯切れの悪い言い方になるのも許してほしい。
今日このただでさえ私はあまり好きではない水が降り注ぐ中(好きではないだけでなんなら泳げる)、
【セルリウムタワー(仮)専門研究所第一拠点】略して
[セルム塔研]の建設作業ラストのお手伝いをしなければいけないのだ。ほんとに色々とするのは明日。
つまり今日より増えるかもだし、
減るかも。
ま、いいや。
「そっちは終わりましたか?…もう少しで。了解しました。」
園長さんが見られる。
これ以上の幸せはない。
一緒に苦難を乗り越えるうちに、私は彼に恋していた。
叶わないし、多分他の子の心に敵わないと思っていたから。
我慢していたけれど。
どうしよう。
考え出すと、死にそうだ。
「レイバル?聞いてる?」
「へっ?あ、ごめん!聞いてなかった…」
やっぱり、と言ってカコ博士は私の手をぐいぐい引っ張って出来上がった研究室へ向かった。
“作業も終わったし入ろうか”
そういわれていたらしい。
__________________
『マスター。どうなさいますか?』
うーん。
唸っても仕方ないとTYPEtryはもっともな事を言うが、僕だってよくわからない所に放り出されてしまって困っているんだ。
「とりあえず中に行こう。」
『単騎突撃は些か無謀だと判断致します。』
「そんなこと言ってられないでしょ?行こう。まず間違いなく進まなきゃ進まないよ。」
『侵入しなければ進展しない、という解釈でよろしいですか?』
問題ないよ。
そう言って雨の中、一人で塔へ乗り込んだ。
もう6階くらいだけど、全くといっていいほど進展が無い。
とりあえずは。
『UGURURURURU…!』
「…唸ってるアイツをぶっ飛ばさなきゃあ。だね」
『全システムエラー無し、装着者の状態良好、準備完了です』
「了解。『try-half Ready?』
…装着っ!」
『!?uralalalal‼』
「お前は…多分ツキノワグマだな?覚悟ぉっ!」
棒を呼び出して相手を足を掬うようにしながら攻撃する、相手は野性を思い出しているのか、愚直に突撃しかしてこない。
脚を頑張って殴れば大抵壊せる。
「せいほい!とあっ!」
バカァン!と固い音がすれば効いた証。
一気に突っ込んで来ようと直線だから、さっといなして(なぜか)転がっている岩にぶつける。
「自分から突っこんでいくのか…」(困惑)
流石に大ダメージとはいかないが、セルリアンらしく単調だと攪乱もしやすくていい。
それにしても、
平坦な地面、程よい遮蔽物…
「戦いやすいね、ここ」
『平原、と言ったところでしょうか。』
『GAGAGAAAAA!!!!』
『来ますよ、マスター。』
「わかってるよっ!」
サラリと避け、クマのセルリアンの背中を勢い良く棒で突いた。
これで壊れはしないけれど、でも確実に行ける。
すぐそこまできてる。
『相手の損傷部位、背中、足。何かしらの方法で動きを止め、背中から破壊を試みることを推奨。』
「最適な能力は?」
『検査結果、ロードランナー。』
「了解、行きましょう!
『try-half Ready?』
装着。」
僕のsystemなら、Try-halfならサンドスターだけでアーマーを呼び出せる。さぁこい!
「ミッミッ!行きますよ!」
『Beepフェザーショット!』
腕の装填してあるモジュールから細かい突き刺しのような連続で弾ける羽根型弾を発射、これでもろくなった脚を壊すっ!
『IGAAAGAGAGAGGAAAGA!?』
「破壊しちゃいけないなんてルールは決めてないですよ。」
がら空きの背中に、トドメ。一発で、百。
『Violent attack of the condemnation!』
宣告の猛攻。
必ずとどめを。
『GYAAAAAA!!!!』パッッッカァーン!
『コンプリート。』
「上出来ですね?」
『…いや、もう一体?』
「えっ?」
振り向いた瞬間、僕のアーマーのすれすれをすっ飛んで行った鋭い刃物が一つ。
「なるほど、ダチョウで手を打とう」
『了解、Ready?』
「装着」
超高性能卵型AI【OTSUGE】によって、常に相手の行動を予想して動く。
もちろん機械だからその場凌ぎの発想は人間達に劣るけど、的確で堅実な判断を下す。
【まぁかせてくださいっ!】
ちょっとうるさいかな。
「ふんっ!」
【走って砂埃を立てて、敵の位置を探る】という方法を導き出した、本来煙幕は敵の動きから外れる物、駄菓子菓子!細かい砂が間違いなく相手を捉える。
「アンタは、色変わっちゃいますよね?…見えてますよ、パンサーカメレオンのセルリアン…」
パンカメリアンとでも呼ぼうか、悔しそうにしたのち、砂埃が沢山くっついてしまい全体的に湿った茶黒い平原の色のまま、そいつはゆっくり現れた。
「…来るの。わかってますよ」
ソレはまるで予知。
素早く処理されたモニターに
【飛び道具に注意して、45°左に駆け出し、一気に蹴り倒してくださいっ】と出るころ、まだ予備動作もしていない相手の手が動くのを確認して、
僕は飛び出した。
「ふんっ!」
『!?』
『体制が崩れましたっ!』
【今でぇす!決めて下さぁい!】
一気に近づき、そして蹴るッ!
「助走、距離、完璧!」
『Divine message kick of the egg!』
(卵のお告げキーック!)
『フカク、御免。』ぱっかぁぁん!
さて、
「まだいますね?」
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