The sand iron dances like a snowstorm. その1



「涼しげなかんじだね、なかなかいいじゃん。」


遠方の景色、うらうら~っと水面が揺れている。

気がする。


「見たところ湖畔地方っぽいね~。レイバル、ここだったら誰が出てくると思う?やっぱあのコンビなのかな?」



やあ!読者諸君お久しぶり、グレープだよ。

…え?覚えてない?



「んー…やっぱりビバプレかな。」



まあいいや。

僕のとなりの今喋ってる子は覚えておいてね?

レイバルっていうんだけどさ。

よろしくね。僕はグレープだからね。(念押し)


さて、湖畔地方だ。

よく見れば足元は水で湿っており、少し穴が。

だがそれは半分の話。

もう半分は、木でできた床と、原木が何本か積み重なっている。


…嫌な予感がする。

足元がここのエリアだけ土、いや泥だな。

どろどろでべとべと、脚がとられてしまう。



「…でも、階段で待ってる二人の位置からだいぶ離れたよね、全然出てこないよ。ちょっと気を付けたほうがいい気がする、音がする。」


「ほんと?…僕じゃ聞こえないな。」


「私のサンドスター使って、聴力と脚力上げといて。たぶんこれがあれば多少マシだから…多分、たぶん。」


『セット!レイバル!』


アーマーが大きな耳のように変形する。

集音器のはたらきをする大きなこのアーマーは、装着者の耳につけられたワイヤレスイヤホンへ拾った音を伝えてくれる。


…確かに聞こえる。余分な塔のゲルが動く音も聞こえるし、階段のほうで話をしているシキ君たちの声も遠いけどうっすら聞こえる。

だがそれ以上、それ以上に聞こえる。


地の下で、なにかが動く音が。

水を泳ぐように、塔を、塔の壁を動く音が。

地面を掘って動く音が。


「狙いは奇襲だ。音が近寄ってきてそのあとするする離れていった。」

「つまり上ってカンジ?」

「あぁそうだ、やるぞレイバルッ!」

「はいは~い!任せちゃって?」



ズバァァァ!!!!

大きな音を立て壁から飛び出してくる。

片方は穴を豪快に開けて、

もう片方は水を跳ねさせながら。


「「読めてるよ!」」


掴みかかってくる相手を僕は剣で、彼女は爪でガツンと弾く。

黒い黒いからだが泣いている。

砕いてあげようじゃないか、コピー元のためにもね?


ラブラブのふたりの為に…ね?



百合営業なんて訳じゃないけどパークでも二人の仲の良さは有名。

というか、もう知らない人などいないだろう。


「さて、いっちょばばばと決めますか!」

「おーけー、僕らの最速ダイビングに付き合ってもらおうか!」


ちょっと!決め台詞とらないでよ!

と、鳴く彼女を置いて僕は飛び出す。

ぐっとSlaMpNumを握って。


「おいでLeptaClaw!あぁ!もう!勝手だなぁ!あそこのカップルはトラベルメーカーかなんかなの!?ちょっとくらい人の苦労も理解してほしいなぁ!私猫だけど!」


後ろできゃいきゃいニャーニャー騒いでいるらしいがいまは関係ない、また潜らせてしまっては僕たち二人の勝機はないといっていい!

とりあえず潜行と潜水を封じるのだ!


「君たち秩序無きもどきカップルに約束された未来はない!」


「はいはい、決め台詞多すぎでもう潜られてるよ鳥頭君。」


えぇぇ!?し…失敬。


「え、えと。気を取り直して。行くぞセルリアン!」

「私たち、とっても速いので!」



また、壁の中の音を聞くんだ。

迫ってくる音が近くなってきた。


ん…

近くなってきたって…。


「まずい足元だ!」


ゴバァァァ!!!

と、足元の黒い土を掻き分け飛び出してきた。

殴られるだけでも十分なダメージなのに、突進のスピードが加わって、装甲をぶち抜く弾丸となる。文字通り間一髪だった。


「あっぶなー…っと、レイバル、こいつらどうやって切り抜ける?」


「【The sand iron dances like a snowstorm.】」

「へっ?」


「【砂の鉄は吹雪のように踊る。】…私達、史上最強の勇者が今まで倒せなかった敵なんていた?」

「山のようにいるね。僕の記憶だと。」

「そのとーり。でも死んでないでしょ?」

「ん…まぁそうだね。死んでちゃ僕は何なの。」

「ごめん、今の話題グレープにはきついよね。」

「は?どういうこと?フルルのこと?」

「忘れて!それより、来るよ!私たちも本気で行こう?」

「変な事言うね…ま、いいけどさ!」


「磁結ッ!」

    「氷結ッ!」


今回の相手は個別に戦うことはできなさそうだ。

こちらもバッキバキに迎え撃つぞ。


『トツゲキ アリマス』


前言撤回!

突撃兵をさっさと倒すところからだ。

ぐるぐる腕を回して突っ込んでくる、どう出ようか。


「特攻だね?壁を作ればいいかな!?」


レイバルは突っ込んできた相手を止めるように、空気中の水蒸気を一気に凍らせ、大きな壁を作った。


「って!オグロリアンとビバリアン一緒に閉じ込めちゃダメっしょ!?」


「うみゃ~~~~!!?!?!?!?!?!そうだった!!!!!」

「バカ!バカネコ!」

「きぃぃぃ!うるさいやい!」

「そもそも今のできるなら隔離するとか、拘束するとか、そのまま突き刺して倒してしまうとかさ…いろいろあんじゃん!!」

「んー!人に言うのは行動してからにしてよ!」

「考えてたんだよぉッ!」

「ハァイストップ!…耳すまして?」


ん、耳をすませば…


{ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリトントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントンぎーぃっぎーぃっぎーぃっぎーぃっごゴゴゴッゴオゴオゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオ!!!!!!}


『ウゴク アリマスヨ』

『イケル ッスヨ』

『トツゲキ アリマス』

『リョウカイ ッスヨ』


「「やばばばばば…!!!」」


ピキピキと音を立てて氷の壁はもう限界。

音がバキバキに変わった。

一瞬気を緩めることが出来る猶予さえない、壁の向こうから聞こえる音は工事現場というか工場のようだ。


『『トッパァァァ!!!!』デアリマス!』


「「いやぁぁぁぁぁぁぁぁッ⁉」」


遂に突破された!

大きな音とともに吹雪くかの如く氷の大壁は粉々に吹き飛ぶ。

その壁の奥から出てきたのは。


「材質スキャン………って木材!?100%!?マジ⁉」

「マジじゃん…」


『対侵入者用木造兵器 

Army Corps General Command完成!!!』


オーマイガー!(それっぽい発音)

セルリアンの能力ってこんな幅広く応用できるの?

わけてほしいんだけど?


大きなハンマーのような右のアーム、

先端が尖っているツルハシのような左のアーム、

そして、肢はドリルのようになっている。

見ただけの感想だと、

でかい木でできた蟹型ロボット。


「うわー…勝てる?」

「いけ…る?」



僕とレイバルは顔を見合わせた。

「「むりぃぃぃ~~~~!!!」」


「私火とかむりだよぉ!?」

『シンニュウシャ ハイジョ アリマス』

「おいおいおいおいおい…!」

『ヤルッス!イザァ!』


どうしようかどうしようかと言っていても埒が明かない。

バックヤードの二人に意見を求めよう。


「こーりんぐ!こーりんぐ!おーいシキ君!聞こえるかーい!」


『はい、どうしました?』

「頭脳派のセルリアンにやられてる!言葉じゃ表せられないし、とりあえず映像データを送るよ!」



_____________________________________




そう言われて俺は、LBの映す映像を見た。思わず噴き出してしまった。


「わーお…こりゃすごいですね」


ネジュンもあんぐりとしている。

まぁ無理もない。木のロボットがガシャコンガシャコン動いているのだ。冷静に考えなくともセルリアンのオーバースペック感がやばい。


『対処の方法は!?僕らはどうすればいいんだ!?』


「このままカメラを回した状態を保てますか?」

『できるよ、なんか分かったら言って!』


敵と戦うなら幾らか情報がないと、まずは観察だ。


体の材質は木で、動きは遅いけど破壊力に優れている。

繊維のように加工された木材が大きなボディ同士を組み合わせており、かすれ合い擦れてるっぽい。


『確かに焦げ臭い…それに木くずが舞ってるね。なんというか、建築現場のような、ノコギリを使った後の技術室のような…。』


「その例え、通じる人少ないのでは?…まぁいいや、木くずの大きさは?」


『物にも寄る…かな。大きな破片もあれば、ほんとに粉みたいなものもあるね』


木くず…

粉末状で…粉塵…

粉塵爆発…


いけるか…?


粉塵爆発

粉塵爆発(ふんじんばくはつ、英: Dust explosion、独: Staubexplosion)は、ある一定の濃度の可燃性の粉塵が大気などの気体中に浮遊した状態で、火花などにより引火して爆発を起こす現象である。

非常に微細な粉塵は体積に対する表面積の占める割合(比表面積)が大きい。そのため空気中で周りに十分な酸素が存在すれば、燃焼反応に敏感な状態になり、火気があれば爆発的に燃焼する。炭鉱で石炭粉末が起こす炭塵爆発がその代表例である。また小麦粉や砂糖、コーンスターチなど食品や、アルミニウム等の金属粉など、一般に可燃物・危険物と認識されていない物質でも爆発を引き起こし、穀物サイロや工場などが爆発・炎上する重大事故を引き起こす。日本においては、アルミニウム、亜鉛を始め多くの金属の粉末は消防法上第2類危険物(可燃性固体)として、小麦粉やコーンスターチなどは複数の自治体によって指定可燃物として指定されている。(みんな大好きW○k○p○d○aから引用)

小難しいことを連ねるとよろしくないし、ぶっちゃけ専門外の知識なので危険物取扱者の資格があるだけの俺ではしっかりと説明できるかわからないが、ようはガソリンなどの可燃性の気体が爆発を起こすのと似たようなモンである。ある程度の可燃性をもつ粉塵がある程度の濃度で空気中に存在するとき、火気やそれに相応の高温状態になると粉塵が燃えて、そのエネルギーが連鎖的に周りの粉塵も燃やし、一気に燃焼させる…というわけ。まぁわかりやすく例えるならドミノ倒しってところだろう、集合している物のうち何処か一点が倒れる(=燃える)ことがきっかけで一気に広がっていく…。どうだろう、やはりわかりにくいか…。



これを、生かせるか…。






























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