たのしいさびしい



「まわりの風景、一気にジャングルっぽくなりましたね?てことは各ちほーをまわる順路に沿ってるのか…。この次高山で、そのあと砂漠なら間違いないですね。」


「かばんさんの通った道って事か。…そしてジャングルってことはつまり…ネジュンッ!後ろだ!群れで来るぞッ!」


そう、ジャングルってことはそういう事だ。


かばんさんの通った道順ということは、会ったフレンズが居る。会ったフレンズがセルリアンとして俺たちの前に立ちはだかるのなら、ジャングルちほーは群れだ。

今までのフレンズ型セルリアンの登場の方法からして間違いないだろう。



「さぁかかって来なさいッ!全員僕がクレープの生地みたいにこの棒で伸ばしてあげます!美味しくなりたい奴から前に出ろっ!」



「俺も頑張ろうかな、よs…」

『ハイまて、オレなんもして無くて暇なんだよ、ランチタイムに付き合え。』

「…仕方ないな。重着ッ!」



装甲のサンドスターロウがセルリアンのオレ、すなわちシキリアンで形作られていき、脳に直接アイツの触手がささ…る。


ここからオレだ。

生の空気はやっぱりうまい。



『ンンッ!あ”~この感じ良いなぁ…コピー元の体程使いやすい物はないなぁ!』


「お兄さん…戦いになると感じ変わるタイプです?」


『…そーゆー事にしといてくれ。ほらッ!来るぞ!』


まずは…フォッサだな。コイツからだ。

デカい尻尾、ちょっと利用するか。


『よっ、ほいせ。グッと、掴んでェ…お前はハンマー役だ。』


尻尾を握りしめて、ハンマー投げの要領で振り回す。


「お兄さん豪快ですね!僕もまわるぞぉ~ッ!ポールダンス回し蹴りだぁっ!」


パカァン!パカァンンッ!

軽い音を立て、吹き飛ばされたトカゲやオカピのセルリアンが弾ける。


『ウリャァァァァァァ!』


投げ飛ばして数体巻き込む。

フォッサ、ゾウにコアリクイ、コブラか。


「っ!オセロット!マレーバクですね。」


『オレの飯だァァァよこせッ!』


肌色の表皮から黒いサンドスターの触手がヌウヌウと伸びていく。

我ながら気持ち悪いが仕方ない。


グサッと刺さった。中からゲル状のサンドスターロウが溢れてくる。一気に腕で吸い込み体に馴染ませた。


良い気分だ。ネコ科ハンターのお陰で爪がシャキンと燦めいてくれた。



「凍れッ!セルリアン!」

後ろではクジャクとタスマニアデビルが青黒い姿になって、その後飛び散った。



『おっとぉ、残り二体か。』


「お兄さんはジャガーをお願い出来ますか?コツメカワウソは僕に任せておいて下さい」


ハァ、このガキムカつくな。

まぁ良いだろう。


ジャガーと見合って隙を窺うなか、後ろでは既に濁流を舞っていた。


たのしいたのしいと馬鹿みたいに奇声を上げながら殴ってくるという変わり種だったが、ガキが振り抜いた脚に腹をやられ呆気なくコアを突かれてはじけ飛んだ。



さぁてジャガーもオタケビをお上げだね?


『グルルルルァッ!一撃で決めてやるッ!』


突っ込んで来ることだけにしか能のないジャガーなんてただのカモだ。その頭骨をへし折ってやるっ!


『いただきますッ!』


オレは一気に体をこね上げ、宿主シキをコアに置き、そのまま大きなタイリクオオカミの口を開いて呑み込んだ。

クチャクチャとゲルが流動するとともにバキバキとコアが割れる音が腹の中からした。

一滴も残さなくて正解だ。

向上心に溢れたフレンズのセルリアンは良い

ふぅ。美味しかった。満足だ。


「お兄さん…セルリアンなんですか!?」


『オレはな。』

「オレは?」


ぼうぼうと目が霞むが、俺はしっかり答えた


「そう、

俺は俺の中にセルリアンのオレが居る。」




__________________






僕は…



このお兄さんの何を知っているんだろう。


昔から、知ってる気がする…?




僕は目の前で怪物になった男の緑の細い目に、何故か安心感を抱いていた。

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