サバンナ最強の名前



塔の階段、正直とても壊れそうなようには見えない。

硬く中でゲルが呻く。


地上1階からカウントすると、ここの階は3階といえばいいか。塔の最上階はまだまだだろう。風も無いが涼しい。汗は流れることを忘れているようだ。



「喉渇きました…お水、お水…。」



水筒は俺も持っているのだが、自分自身が必要ないので…まぁ彼女にあげようかな。

それにしても…。

ジェーンさんの子供、か。


もしかしたら、俺がジェーンさんにバブみを感じてしまうように、存在としてのママなのかもしれないし、動物の頃の記憶なのかもしれない。もしくは異世界の話だろう。

そう考えるのが、妥当。

それ以外…考えられ、ない。





さて、また開けている。

戦いのフィールドはここらしい。



「ネジュン…って呼んでたや。呼び捨てでもいいかい?」


「ふむ、いいですよ。貴方に呼び捨てされても、悪い気はしないのでね。それで?なんか用事ですか?」


俺は真ん中の辺りの沼のようになった場所を指さした。


「この流れ…恐らく次に来るのはカバのセルリアンだ。カバはスピードもパワーもあるし多少の攻撃じゃびくともしないだろう。そこでだ、ネジュンには前に出て防戦をして欲しい。」


「女の僕に前に出ろって!?…気が利くじゃあ無いですか。うずうずしてましたよ、戦いたくて!んじゃ、援護射撃任せましたよ?」


闘争を好む女の子がジェーンさんの子どもな訳無いだろう…いや、もう良いだろう。




______________



「やあカバさん!突然でごめんなさいだけど、かち割りに来ましたよッ!」


ロッドを勢いよく振り、横腹にヒット。

シャカンッっと軽い音と共に相手の組織がガコンと壊れる。

ロッドの両端は黄色い嘴のようになっており、刺さるととっても痛いのです。折れそうですがきにしちゃだめ。

というかこの武器折れても再生効きますし、今までも乱雑に扱ってきたものです。


「ふっ!やっ!」


お兄さんは銃である程度の援護と誘導をしてくれているみたいです。カキンカキン、ドスドスと銃弾が当たっているのがわかります。



やられっぱなしって訳にもいかないのでしょう、カバセルリアンは僕に大口の如き両手を向けて来ました。

この攻撃を…っガードです!


「んりゃっ!棒を咥えてモゴモゴしてな!さぁお兄さん、今ですよ!ガラ空きボディにダイナミックにぶち込んじゃって下さいッ!」




「よしナイス!久しぶり、StarsSaber!」


『セット!PPP!カモーン!StarsSaber!』


「滅多斬りにしてやる!王妃の怒り、その身にしかと喰らうがいい!」


『Hey!Royal!』


王妃の命令だ…お前はここで終わりだッ!


『「裂咲ささき 魅恋みこい斬り!」』

「ウリャァァァァァァァァァァァァァァァッァァァァァッッッッッッ!!!!!!木っ端さえ残してやらねぇぞォォォォッッッッ!」


サバンナの穿てぬ城も、姫の前では無力よ。



パッッカァァン…!



____________________




___________________



____________



__________



_________












「ね…ねぇ、ジェーン、落ちついて?きっと無事よ、大丈夫よ!」



「プリンセスさんは!皆さんは!旦那様帰ってきているからそんな事が言えるんでしょう!?シキ君は…リネン君は…私の…私の愛して止まない人は…!ここには居ないッ!声も聴けないッ!無事かさえ分からないッ!判らない事がこんなに不安だなんて…。こんな状況で!冷静でいられる訳ないでしょう!?シキ君は、簡単にへばる人じゃ無いのは私が知っています。でも、人一倍無茶してボロボロになって全部背負って爆発してすぐにペタンと地面に顔をくっつけてしまう人間でもあります。ソレも私が一番知っている自信があります!カコ博士だって…ほんとは泣きたくて泣きたくて仕方ないんです。きっと。だから…私だって。私だって、私だって。泣きたくて泣きたくて泣きたくて泣きたくて泣きたくて仕方ないんです。」



「ねぇ、ジェーン。コレ、リネンの枕なんだけどさ。もしかしたらもっともっと想いが溢れるかも知れないけれど、でも少しでも楽になるなら…使って?あの子、怒りなんてしないから。」



…はい。


今にも泣きそうな声は、

いつかその枕に沈められて行った。



「えぐ…シキ君…どうか…無事でいて下さいね…帰ってきたらご馳走です。ハグを沢山しましょ。キスも沢山。綺麗な山を眺めておいしいお茶を飲みましょ。今度こそ離してあげません。…結局、忙しくてシキ君にお誕生日も何もお祝い事出来てないですもんね。


…この匂い…。私とおそろいのシャンプー。ふさふさでぼさぼさの髪の毛…細くて硬い私の一番頼れる身近な背中…。」





待ってます。

ただいまって言われるの。

泣いてしまうかもしれません。

でもいいんです。

シキ君の腕の中で泣けるなら。

だから待ってます。



あなたのただいまがききたくて。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る