Want you, Rock you, I LOVE YOU.


「はぁー…」


今日はフジツボのヤローに酷く使われた…

一日中あっち行ってコッチ行って、飛んで走って駆けずりまわっていた。

お陰で足がパンパンでそろそろ使い物にならない、棒きれになるぞコレ。


俺は…親の金をほとんどパークの事業につぎ込んだ。経営費、備品の調達、餌等。


ごく一部、生活費だけを確保した。


親?大丈夫片方は息の根止まってるし、片方はジジイの仕事が乗っかってぷちっとくたばった。

オレはそもそも仕事を任せられていないので知らない知らない…(ガン無視は出来ない)



そんな訳で帰って来ました。

我が家…とはちょっと違う。


「いつ見てもすごいなぁ…」


綺麗に整備されている。

鉄で出来た扉をゆっくりと押す。


「おっかえりー!」


頭部の黄色の羽、小柄なフレンズな彼女。

ピンクの靴を履き、

尻尾をふりふりしている。

真っ赤なエプロンを着て、ニッコリスマァイル

ハタからみれば兄妹くらい、頭ほぼ一個分の身長差だが、意外にも料理が上手な器用な俺のお嫁さん。


…お嫁さん候補が正しいけど気にしない。

大好きだしぃ?心許し合ってるしぃ?


察しのいい人なら分かるだろう、

ここはPPPの楽屋。

借りてた所を出て、ここに住み着いている。


「疲れたーご飯しよご飯」


「お腹減りましたよ~、ねー姫ちゃん?」


「そうね…アコウ、い”く”わ”よ”っ”!」

「ま”か”せ”て”!」


こちらはロイヤルプリンセスプリンセスペンギンこと姫ちゃんことロイヤルペンギンのプリンセスさんと、その恋人のアコウさん。

紅学青光、というそうだ。同居人。

シェアハウスでポッキー!と言った所だ

(何がだ)


そう、彼らもまた恋人。


同じ屋根の下に同じ思いの二人×2がいるなんて、よくよく考えればすごい。

会社も学校も塾も宿もみんな一つ屋根の下にいるけど、心許せる友なんて、ホンの一握り

みんなライバルで仲間の域を出なくて上司部下先輩後輩とうるさい奴ばっかりだ。


それ故にこの関わりは無くしたくない。

捨てたく無い。

俺の心安らぐ場所。他愛ない話で笑えてどうでも良いことで怒れて別に飛び抜けて美味しいわけでも何でも無い料理を食べてまた笑って癒されて心に泣いてそのまま夜を明かす。


そんなどうでも良いヒトにとってはどうでもいい生活に俺は飢えていた。

幸福でお腹いっぱいになりたかった。

なれた今、俺は大きな富を手に入れた気分である。赤く輝いて止まない宝石、金と深黒に輝いた飾り羽…もとい、俺を受け止めてくれる、言の葉が綴られる巻物、時を告げる甘い御香


今なら天下統一も出来そうである。

多分出来る。


「ほーい白身魚をフライにしたぞ~!」


ヒャホーイ!アツアツにあがったしゃおっしゃおのさっくさくのじゅわわはわわなこの味と加減…!

ビューティフォー…!ウマイ




___________________



「ん~…ほわぁ…おやしゅみ」



深夜。

深く深く闇と影を抱え、その空に瞬きと月光が浮かぶ。


イワトビペンギンのイワビーは疲れ果て俺の隣でロックさを微塵も感じさせない顔をする

腕は俺の体に優しく巻き付き、離してやらないと言わんばかりにぎゅぅぅっと服を掴む

唇が薄い桃色に染まり、ぷるぷるとみずみずしさまでも感じる

瞳は瞼の奥へ消え、目元から雫が流れる。

なんだ、イワビーも…そうなんだな。


「はぁ、疲れた。でも…落ちつくなぁ。」


すぅぅぅぅぅっと俺の匂いを嗅ぐ。

俺も彼女の髪の毛の匂いを嗅ぐ。


「んぅ…寝よう、ぜ?」

「うん。おやすみ。」


腕の中にゆっくりと滑り込んでくる。

抱き心地はしっかりとしている。

それなのに、柔らかくてもちもちして。

気持ちいい…

尻尾がピコっピコっと動き、顔はどこか嬉しそうで、俺が鼻を当てた彼女の髪の毛は流れる。


「んっ…///ふぇっ…///」


ぺちゃ…ぬちゃっ…むっちゅ…


いつの間にか唇に彼女の唇が重なって、卑猥な音を立てる。今日はそんな日じゃないのだがどうしたものか。


腕の中で暖かい吐息を漏らして眠る。

愛おしい気持ちを抑えに抑えて抱き締める。

ほんとはこのまま身の服を剥いで抱いて眠りたいのだけれど。

頬をつつき、ぷにぷにを楽しみ、んぅ…と少し不機嫌な表情を見て理性もギリギリである。


今 澄み渡るような 僕らの夜空


ふと夜空を窓から見上げて思うのだ。

光は白く白く瞬き、闇は遠く遠く遠く何処までも暗く更に暗く暗く。

白と黒の狭間、僅か紙一重の中に虹が架かる


俺の色を持てる時は来るのだろうか、

少し不安だけれど、きっと大丈夫だろう。


俺が信じた道はきっと正しい。

父さんの道だもの、そうに違いない。




______________




時が経つのは速い。




もう、こんな時間なんだ。





寝なきゃ。







寝られない。







僕の肩に重くのしかかる。









作った罪。




叶えられなかった夢。



どうにもならないのに、

未だ悔いてしまう。



今も昔もフルルはフルルなのに、



何故こんな事考えてしまうのか。


僕は彼女の何になれたんだ。


僕は彼女に何が出来たんだ。


僕は彼女に、

むしろ彼女に助けられてるのか。

異世界の方がフルルとイチャついたり、助け合っているのを見るたびに思ってしまう。

僕の腕の中で幸せそうな君の肌に指をそっと重ねた。



『はじめまして』



一番君に言って欲しくて、

でも、一番君に言って欲しく無かった言葉。


「ほんとに、ズルいじゃないか」


苦しみを理解して欲しいワケじゃ無いけど、

君も狂いそうなんだろうけど。



ホントの意味で愛せるな


幸せだったんだろうに。





















…また自分を責めた。

君はコレが嫌いなんだよね、ごめん。


風が吹く。

風が耀く。

白く瞬く。



過去に彼女を失った時、火山の頂上で。


風が白く流れる…。



慰めてくれたあの白い神。


ビャッコ


とヒトは呼ぶ。



お守りとして持っている

授けられた牙や爪が煌めきだしたのは、


その僅か数時間後、

つまり、


日曜日の朝だった。













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