ホント



…ふたりが俺の目の前でセルリアンを翻弄し、俺達に出来ない事をやってのけた。


とても満足したような顔を浮かべる。



「どうでした?私達、強いでしょう!?」


「ジェーン、とっても頑張ったからね。私も久しぶりだったけれど、良かったでしょ?」


「あぁ…そうだね。」


強かった?じゃ無いよ。


「リネーン?お~やや?ちょっとちょっと、嫉妬~?」


「全然シキ君の方が強いですからね?」


嫉妬

だと?

お前の方が強いよ!

だと?



「んもぉ~シキ君?そんな暗い顔しないで下さいよ、ハイッ、すまhっ!?ったぁ!?」


右手を振り抜いて、思いっ切り彼女の顔を叩いた。


「ちょっとリネン!流石にそれはダっ!?…ッェ」


そのまま振り抜いた右手の甲を思いっ切り姉さんの顔へ伸ばし、叩いた。


「馬鹿なの?」


口から出た。

もう。毒が噴き出す、止まらない。


「お前らは馬鹿なのかって聞いてんだよ馬鹿野郎ッ!いいか?耳かっぽじって良く聞いとけよ?お前らさっき何した?何しでかしたのか判ってんのか?確かにアノ状況を俺一人で裁くのは無理があったな?それは否定しない。だが何だアレは?装着だと?俺を逃がすでも無く、避難場所を確保するでも無く、ましてハンターを呼ばずに自分で戦うだと?

… 

 確かにな、言った通り危なかったよ、感謝してる。だけどこれは技術者として言うぞ、お前らはハッキリ言って『馬鹿』だ。」


…はぁぁぁぁ


「まずジェーン、お前は何で装着しようとしたんだ。誰に許可を取った?」


「彼女が言いだしたのよ、貴方の為なn…」


「アンタは黙ってろ!

…んで、何故。」


「わっ…私はただ…ただ、貴方のっ 役に立ち たく てぇ…っ。えと…

 それで、カコ博士に聞いたら…出来ない事も無いだろう…って。」


「そうか…

ならもう二度とこんな事してくれるな。

判ったな」


ごめん。ごめんジェーンさん。

でも言わなきゃいけないんだ。

こうやってしっかり貴女に伝えなきゃきっと貴女は無茶をする。



「それで、アンタは何で許可したんだ」


「調整してあっても無くても、アレはフレンズが使えるタイプよ!覚悟さえあれば…」


薄い覚悟なんて…!


「アンタがそんなんでどうするんだ馬鹿女!アノ装置の危険性は、アンタが一番解ってんだろう?だからわざわざあんなメモにまで《認可者以外のフレンズの装着を禁ずる》って書き込んで、決めてたんだろ?」


そんな薄い想いなんて!


「でも私が許可をしたのよ!?」


そんなふざけた姿勢で!


「そんなんだから駄目だってんだよ!

 この装置自体負の歴史だろう!その歴史をそっくりそのままいけしゃあしゃあと決然とした覚悟の無いような奴に使わせるな!

 これは技術者としての宣告だ、弟としてだのお友達だのじゃぁない。

 …解ったら今すぐ外せ。いいな?」


「…これは私の作った物よ!技術者として貴方に言われる筋合いは無いわ!」


「いやあるっ!コッチは何処の誰かもわからない子の命背負ってんだ!作って使い熟せるぜで役に立ったような顔してんじゃねぇ!

 …アンタと装着者二人の違う所はな、

 想いなんだよ。

 きっかけは今のアンタやジェーンのような人一人助けるが為なのかも知れないな?だけどな、その活動を通して、もう誰も傷付いたような姿にしないために戦ってんだ!


平和なんてそう簡単に手に入らないんだよ」



そんなもんで俺らの何がわかるんだよ!














『フルル!…おい!フルル!しっかりしろ!…頼む!フルル!起きてくれよ…』


『私…良いと思ってる。あの子も無事で…世代交代が起こるんだね、こうやって…

最期の我儘…聞いて?』




『待ってよ…セーバルッ!女王!』


『ワタシの仕事だから、頑張るよ』


『私…絶対強くなって、みんなが、ガイドさんが、博士が、園長が、安心して、笑顔で笑って過ごせるようにするから!そしたらセーバルと一緒に遊べるよね?じゃぱマン食べられるよね?絶対絶対ぜーったい!約束だから!だがらっ…ま たっ、あお うね?』






『お父さぁぁぁぁぁぁん!』


『ごめん…ごめんなさい。

 俺じゃ、お父さん…護れなかった』


『うちの旦那は…大勢の命を救う一助に…なったんですよね?』


『えぇ…我々の、フレンズの為の…』


『それが聴けて…安心しました』



助けたい 誰が どんな ヒトなんて

助けて お前らのせいだ 助けろよ

手を伸ばせ 仕事だろう お前だ

諦めるな 諦めろ 悔いは無い ホント

もう駄目だ 終わり もういい そうか

血だらけ 何処だよ 死にそう 死んだ

目線が合わない 大丈夫 だからどうした

忘れてる 忘れてくれ どうなんだ

チリだ ゴミだ ホコリ 糞 黙ってろ

助かった そんな訳 泣くなよ 涙ぐむ

あの子が その子が 何処に行く

あの子も そんな事もある 無い

あの人だけ 俺だけ そんな事だけ

そのまま あのまま この身のまま

それじゃ





走馬燈のように、思いが脳内を駆け巡る。


生半可な覚悟の前に、纏う装甲は無い。


________________








「も、もういいですから。済んだ事ですから…もういいですからぁ!」


「ごめんなさい…シキ君…ホントにごめんなさい…もうしません…絶対絶対絶対絶対もうしません…もうしません…もうシキ君に心配かけません…身の丈を知りました…だから…もう…叩かないでぇ…っうぐ…ぇ」


「反省してくれればいいんですよ。あんな事もうしない、ってだけで良いんですから。」


「はい…反省しました…ぅううっぐ…シキ君の役に立ちたかったけど、…えぐ…えぐ…貴方の前で…良いとこ魅せたいって心もあって…ぇうぅ…だから…全然…シキ君が怒るなんて思わなくってぇ…」


「ジェーンさん、俺は貴女が俺みたいな無茶して欲しくないんです。

 それだけでもしっかりわかって下さい?」


「…はいっ。」



「・・・。ほら、来て下さい?」


「まだ…大好きでいてくれますか…?」


「えぇ、勿論。」

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