栄光の色


「それにしても…なんだっけぺーぺーぺーだっけ、アレの企画に携われるんだぁいい仕事だなぁ」


「先輩…一応関係あるんですからグループ名位覚えて下さい、『PPP』ペンギンズ・パフォーマンス・プロジェクトでペパプです。」


あぁすまんすまん、そう言いながら焼酎をちびちび飲むのは平坪先輩。

彼は大概自分語りをして来るのだが、どうも今日はかっちりした仕事の話だ。

しかも仕事の内容にやたらありがたみを感じていたり、やたら俺を褒める。


…岩礁のフジツボめ、俺になんの頼み事だ。


先輩は面倒だったり大変だったりする仕事を人にお願いするとき、やたらめったらに褒める。色々。

ソレがもう酒の席で言うもんだから上手く乗せられ勢いで行くもんだからいわれたほうは、てんでんばらばらちぐはぐちょいちょい。

お願いが伝わらないわ忘れられるわで自分

に帰ってきそうなもんだが、かわいそうなことに上手く乗せられた奴はぞわっと後悔しながら頼まれた仕事を溶かしていく。


そしてこの俺、奥都蓮夫は酒がどうも苦手だから平坪先輩のお話相手にぴったんこって訳だ。いつから俺はブレーキに…タコだから吸盤としてひっついてとめろだって?冗談じゃない。全く。


「なぁ…タッ公…」

出た。構えろ。


「そんで…お前明日PPPのアレなんだろ?家の娘の話ってしたっけ…まぁいい、とにかく家の娘が『フルル』とかって子が好きらしくてさぁ?サインとか…貰えたりするのかなぁ?」


待てクソ面倒じゃないか。

明日はマネージャーのマーゲイさんしかいないのにどうアポを取れと言うんだ全く…


ン…待てよ?

フルルさんなら行けるな。

そう、彼女なら行ける。

居所を知っている。


俺の友人フレンズの彼女だったな。


_______________




起床。午前5時30分。


酒を飲んでいないのに怠いのは魚料理特有の脂だろうとか就寝が1時だったからとか考えつつ目をこする。

冷蔵庫を適当に開けお茶をコップに注いでグビグビ飲む。

冷蔵庫の野菜室からキャベツと人参を取り出し雑に切り、卵を一個割った。

フライパンに油をさっと回し具材を放り込み塩コショウを入れ、炒まったら皿に盛る。

インスタントのワカメスープにお湯を注ぎ込み、炊飯器の中のホカホカの米を半分だけ茶碗に盛る。

机に置き箸を掴み適当にかっ込む。


適当に顔を洗い歯を磨きそれなりにまとまった髪の毛を櫛でとき、洗濯機の洗濯物を干し、食器を洗い、出かける準備をする。


2段弁当箱の片方にさっきの半分余らした米を入れ、もう片方に冷凍食品の惣菜をいくつか入れてからブロッコリーを切って、紙のカップにマヨネーズをとっぷりたっぷり入れる。後はそこにブロッコリーを入れ、市販のふりかけを米にぶちまけて終わり。


スーツに腕を通して時計を確認、6時30分。

全然余裕だな。


自転車を出してきてそれに跨がる、そしてフレンズさえいないまだうっすらとしか日のかからないヒトの町をのんきに走る。

そんな時俺はなにも考えずにいる。

ただ機械的にセンサーをはたらかせて事故にだけ気をつけている。


___________________


飼育員という役柄ではないが、俺も一応フレンズのいる、ジャパリパークのいち職員だ。


「えぇとイカのファイルはー…っと、コレか…印刷スタァートォォ」


誰もいないオフィスで一人資料を印刷している。コレが無かったら今日は午後から出勤で良かった物を、といっても午後はイカの代打なので結局今日はやることさえやれば暇なのだ、こんなに早く来たのもさっさと終わらせたいから。

印刷した後は資料に目を通しておく、そんでもって話の内容と提案予定のプランを立てる、以上。


ジャパリパーク内の移動は基本的に自転車で行う。わりとどうにかなってしまう。

PPPのステージ及び事務所(的な奴)は水辺地方にあるのでそこを目指す。

人工島『パーク・ワーカーズ』から連絡橋を渡りジャパリパーク・キョウシュウエリア内の舗装道路を疾走すればすぐそこだ。



___________________


「美味いなァこのピザ!コレが手作りとかやっぱり君は凄いなぁ?」


僕はテーブルにおかれたピザを切り取り頬張る。目の前でエプロンを着て料理を運んで来た彼はいう。


「ハハハ、俺はこれぐらいしか取り柄無いですからね。料理の腕は…嫌でも身につきますし…」


お互い大変だなぁ…じゃない。

僕は真面目に料理した事は無いな、この歳になって。(まぁ僕はペンギンなんだけどね)


僕は今、昔ながらのの旧友と家で食事を取っている。キノコをのせたピザにサーモンやエビのサラダ、ジュースにスイーツ。

これらの半分位はココに居る彼…

あの少し小柄な彼が作った物。

奥さんに料理を教える位には上手く、料理人やってた方がお金が入るんじゃ無いかと疑う程である。

僕の名前なんてどうだって良いのだ。

小柄で髪はボサボサ、細目にメガネ。

そんな彼の名前、是非覚えてやって欲しい。



節来しらい しき

またの名を

辿未せんみ 輪念りねん


僕の よき 友人である。

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