第23話 おじいちゃんの作戦
これ出来るのかな? たった五分。きっと身に纏うのだっておじいちゃん達練習して会得しているよね?
「では、始め!」
考え事をしていたらもう始まったよ! とにかく私は無理だと思うので祈る事にした。
目を瞑り上手くいきますようにと願う……。
「終わり!」
「くっそう。やっぱり無理だったか……」
カナ君が悔しそうに言った。
五分ってあっという間だね。
「それはそうでしょう。こんな魔力がない場所で、私達でさえパートナーがいなければ身に纏えないのですから」
アメリアさんの一言に私達は驚いた。それって最初から無理って事じゃん!
「でも、約束は約束だ。あなた達はここに残るんだ」
ロサーノさんも勿論知っていて、一人が出来ればって言っていたんだ!
「百パーセント無理だった事をやらせていたの? それってちょっと酷くない?」
私はそうおじいちゃん達を睨み付けて言っていた。酷すぎる! ハル君達は真剣だったのに!
「何それ! 最初から無理って事じゃん!」
「そんなのありかよ! 俺達真剣だったのに!」
「まあ! おじい様酷いですわ!」
私に続き、三人も抗議を口にする。言いたくなるよね! って、言っていいと思う!
「待て待て! 落ち着け!」
おじいちゃんは私達をなだめようと言ってるけど、ムッとしたまま私達はおじいちゃんたちを見ていた。納得がいくわけがない!
「私は別にお前達を騙したつもりはない。出来るかもしれないと思って試験をしたつもりだ」
「何を言って……。変に希望を見せても」
おじいちゃんの言葉に返したのはロサーノさんだった。
「そんなつもりはないが……」
「でじゃ本当に、この四人が出来るかもしれないと思って? 私達が出来ない事をですか?」
アメリアさんも驚いて言う。おじいちゃんは頷いた。
「あなた達二人は、魔力が豊富な所から来たので、この世界では魔力がないに等しいだろう。だが、彼らはこの世界で育って来た。この量が彼らの普通の量なのだ」
ロサーノさんとアメリアさんも、おじいちゃんが諦めさせる為に提案したと思っていたようで凄く驚いている。勿論私達も。
そしておじいちゃんはさらに続ける。
「私もここに住み続けて体が慣れ、パートナーなしでも少しなら使える様になった。不可能ではないだろう。星空。さっきやっぱりと言っていただろう? それは出来ないと思っていた事になるのではないか? お前達は立派な魔法使いになりたいという想いがある。やる気になれば出来るバズだ」
おじいちゃんは真剣な顔つきで私達に言った。その理屈から言ったら可能かもしれないけど。
「そうだな。俺とした事が……。もう一度チャンスをくれないか? 同じ五分で構わないから!」
「これでダメなら諦める! でも絶対成功させるから!」
二人はやる気だ!
「わたくしからもお願い致しますわ!」
「私も! お願いします!」
私には出来なくてもハル君とカナ君には出来る気がする!
必死に懇願する。
「と言っているが、どうするかね? お二人共」
「そこまで言うのでしたら……」
「俺も構わない。だがダメだったら今度こそ諦めるんだ。いいね!」
問われた二人は、許可を出してくれた! 私達はこくんと頷いた。
カナ君とハル君は右手をギュッと握り、マリアさんは何かをすくう様に手の平を上にして少し重ね、私は胸の前で指を絡めて祈りのポーズを取る。
「始め!」
私はギュッと目を瞑った。
どうか、成功しますように!
私は一心に祈った。想いが強い二人なら出来るかもしれない……。
「終了だな」
そう言うおじいちゃんの声が聞こえた。ダメだったか……。
「これでいいのか?」
「これ、大丈夫だよね?」
カナ君とハル君の声が聞こえ、私は二人の手を覗き込んだ。
「合格だ!」
「「やったー!!」」
二人は喜び合い抱き合った!
どういう事かと聞けば二人の右手首には、薄っすらと魔力絡みついていた……らしい。
私には見えなかった。マリアさんも聞き耳を立てていたところを見ると、見えていなかったんだと思う。
「これで文句ないよな!」
「もう一度チャンスをくれてありがとう!」
「………」
二人がロサーノさん達に言うも、驚きが大きいらしく茫然としている。まあ、自分達が出来ない事をパートナーもいない、子供の魔法使いが出来ちゃったんだから驚くよね。
私も正直信じられない! 見えてないし……。
でもよかった! 二人の想いは本物だったね!
「でもなんか疲れた、集中力ハンパなく必要じゃねぇ?」
カナ君が言うと、そうそうとハル君も頷く。
「本来は、疲れる事でもないし、集中力必要としないんだがな。変な所に力が入っていたんだろうな」
「……本当に出来てしまうなんて」
「信じられん」
おじいちゃんが二人に解説していると、やっと正気に戻った二人が言った。
「魔力は少ないがあるのだから出来ない事はない。彼らがそれだけ必死で本気だったって事だ」
「そうですね。……四人共約束だから連れて行くが勝手な行動だけはしない事」
仕方ないとロサーノさんは私達に忠告した。それに私達は頷く。
「兎に角次元では絶対に手を離さない様に。あとは向こうの世界では、何があっても私を信じる事。こっちとは考え方から何もかも違うからな」
おじいちゃんの忠告にも私達は頷く。
「それとこれは全員にお願いだ。私と子供たちの関係は伏せてほしい」
「それって僕達がおじいちゃんの孫って事は内緒って事?」
おじいちゃんはハル君の言葉に真剣に頷いた。
何故だろう? こっちで産んだからかな? 取りあえず内緒という事で。
私達は頷いた。
「わかりました。誰にも話しません」
ロサーノさんがそう宣言するとアメリアさんも頷く。二人は凄く驚いた顔をしている。何に驚いているんだろう? ハル君達が孫って事かな? だよねきっと。バレたら大変な事になりそう……。
「ところで何か策ありますか?」
ロサーノさんが聞くとおじいちゃんは頷いた。
「その事だが、私は万が一の事を考えて、出る時に扉に印を付けて来た。と言っても付けたのはパルミエ殿だがな。パルミエ殿、あれはまだ有効かな?」
『勿論です』
フッと出て来てそう答えた。
うん。一筋の希望が見えたね!
「では開けてもらえるのですか!」
「いや場所がわかるだけだ。開けるのは私達三人と出来ればパートナー達の力も借りて無理やり魔力でこじ開ける。これが作戦だ」
「結構乱暴な作戦ですわね」
「仕方がない。カギがかかった扉をカギなしであけるようなものだからな」
おじいちゃんの説明になるほどと頷くも不安が残る作戦だよね。
「では女性同士で繋ぎましょうか」
アメリアさんはマリアさんに手を差し出した。手をつなぐとマリアさんの反対側の手と私は繋いだ。
「では俺とは……」
「俺と繋ごうぜ」
カナ君はロサーノさんと繋いだ。
「じゃ僕とおじいちゃんだね」
おじいちゃんとハル君が手をつなぐ。そしてそのままおじいちゃんはしゃがみ込む。
「立膝でちょうど頭ぐらいに扉がある。気を付けて入って来るように。行くぞ」
「え? うわ~」
説明が終わるか終わらないかで二人は吸い込まれるように扉の向こう側に……。
「なんか、すごい勢いで入っていくんだな……」
カナ君も驚いている。
うん。結構凄いんだよね。
ロサーノさんとカナ君が扉の中に入ると私達も入って行った。
あの不思議な空間。真っ暗闇なのに自分達ははっきりと見える。今回も同じだった。
本当に不思議!
『ここです』
さっきと同じく五分ほどたった頃、パルミエさんは言った。
場所的にはきっとあっていたんだろうね。でも見えないとどうしようもないよね。
「では全員の力を合わせて扉を開ける。よいかな?」
ロサーノさんとアメリアさん、そして精霊たちは頷いた。
「あ、精霊の本……」
「私が持ってますよ」
私が一時的に精霊の本を預かると、手を突きだす。
「では、一、二の三でいく。一、二の三!」
おじいちゃんの合図で力を合わせ、魔力を放出! ……多分。
突然その場所がまばゆい光を放つ! 眩しさに目を閉じた。
成功した?!
って、思った瞬間、凄い勢いで引っ張られた!
これってもしかして……。
私は本を離してしまわないように、ギュッと抱きしめた――!
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