第22話 おじいちゃんの提案

 おじいじゃんが向かった先は学校の裏手で校舎と一緒に塀に囲まれた雑木林だった。

 「ここだ。この中に扉はある」

 といいつつ、何と! 塀のドアを開け堂々と中へ入って行く!

 何でおじいちゃんがカギを持っているの?!

 「おじいちゃんどうしてここのカギもっているの?」

 「それはこの雑木林の管理を頼まれているからだ」

 私の質問におじいちゃんは答えてくれた。そう言えば学園の理事長ってカナ君のお父さんの方のおじいちゃんだったね。なるほど、一応親戚になるから頼まれていても不思議ではない?

 全員が雑木林に入ると、おじいちゃんはドアにカギを閉める。

 「こっちだ」

 おじいちゃんが先頭を切って進む。少しするとやや開けた場所についた。

 「不思議です。塀の中には魔力があるのですね」

 立ち止まったおじいちゃんにアメリアさんは言った。そっか、アメリアさん達はアスファルトとかが魔力を通さないから、こういう場所にしか魔力がない事を知らないんだ。話を聞いたのって本の中だったもんね。

 「この世界は、こういう地面に土があるような場所じゃなければ魔力はない。もっと言えば、精霊も見かけた事はない。それぐらい私達がいた世界とは違うのだ」

 おじいちゃんの言葉に、アメリアさんだけではなく、ロサーノさんも驚いていた。私は魔力を感じれないし魔法も使えないからピンとこないけど、二人にしたら死活問題だよね。自分達が魔法を使えなくなるだけではなく、精霊の命が危ない。

 「それでだ扉だが、ここにある。角度が下向きなので立っていては見えないがな」

 おじいちゃんは目の前の腰辺りを指差し言った。

 「扉って表と裏があるの? 下向きって……」

 「そうだな。反対側からだと扉は存在しない事になっておる」

 ハル君の質問に答えたおじいちゃんの回答に、私達四人は驚いた! 理解出来るような出来ないような……。

 「なあ、それって俺達にも見えるのか?」

 「多分な」

 カナ君の問いにおじいちゃんは頷いた。

 いや見えませんよ。陽炎のような感じに見えるだけで、閉じていたら全くわかりません!

 おぉ! と目を輝かせているカナ君にはもう少し夢を見せておこう。見えないのはすぐにわかるだろうから……。

 「なあ、おじいちゃん。今更なんだけどさ、俺達もついて行けないかな?」

 しゃがみこんで扉を探していたカナ君は立ち上がり、真剣な顔でおじいちゃんに語り掛けた。扉はきっと見つからなかったんだと思う。

 カナ君達は、簡単な説明を聞きながらここに来た。

 「何を言っている! 何かが起こっているかもしれないんだ! あなたたちは魔法が使えないだろう? 行っても危険な目に遭うだけだ!」

 ロサーノさんが速攻返事を返して来た。ロサーノさんの言う通り行っても私達には何も出来ない。ついて行きたい気持ちはわかるけど……。

 「大丈夫。魔法はまだ使えないけど、腕力には自信あっから!」

 カナ君は空手のポーズを取った。空手ならってたんだ……。

 「僕だって剣道……剣の腕前には自信があるよ!」

 ハル君もまるで竹刀を持ったような構えをする。いや剣道は剣とは違うような……。

 「遊びではないんだ!」

 「俺達は本気だ!」

 「別にわたくし達もバカではありませんわ。ほんの少し魔法を封印して下されば、その間にわたくし達で倒して差し上げますわ」

 そのわたしたちに私は入っていませんよね? 私何も出来ませんよ。って、マリアさんは何か習っていたのかな……。

 「魔法を封じろなんて、そんな簡単に言われても。相手も精霊持ちだったら……」

 「あらでもお出来になりますわよね? アメリアさんになさったのですから」

 「あれは近くに精霊がいなかったからだ。普通はパートナーが解いてくれる。つまり意味がないんだ」

 え? そういうもんなの? 確かに精霊の方が凄いっておじいちゃんが言っていたけど……。それって勝敗は、精霊の強さで決まるって事?

 「なんだよそれ! それじゃ、おたくらだって行っても変わらないじゃん!」

 「これ星空! 口が過ぎだ」

 「……悪かった。ごめん。でも俺達は、別に遊び気分で行きたいって言っている訳じゃない!」

 「そうだよ! 向こうにおばあちゃんがいるんだよね? 僕達だって心配なんだ! 一緒に助けに行きたいんだよ!」

 二人は真剣に訴えかける。

 そうだよね。役に立たなかいかもしれないけど、助けに向かいたいよね。

 「この子らがこう言い始めるという事を聞かない。そこで試験をしてみてはどうだろうか?」

 おじいちゃんも二人の気持ちを汲んだのか、そう驚く提案をした。

 「試験ってどのような?」

 『実は今日、精霊の本の中で四人共一度浮遊は出来ているのだ。だから全く何もできないわけではない。しかし彼らはまだ、魔力を自分自身でくみ取る事が出来ない。あの時は私が四人に魔力を流してしたからな」

 ロサーノさんにおじいちゃんは説明する。なるほどと私達も頷いた。

 ただくみ取るとはどんな感じなのか……。

 「くみ取るとはどのような感じなのでようか?」

 マリアさんもそう思ったらしく聞いてくれた。

 「そうだな。例えるなら車があったとして燃料のガソリンがなければ走れない。そしてガソリンスタンドのセルフで自分で入れようとしても、入れ方がわからなければ補給出来ない。そういう事だ」

 アメリアさんとロサーノさんはチンプンカンプンだったろうけど、私達には何となく伝わった。魔力を自分で吸収出来ないとって事だよね。

 「そういう訳で、お前達には魔力を体に見に纏う試験を行う。魔力を操れるようになれば、二人も文句を言わないだろう。どうだお二人共」

 「いいですよ」

 「俺も。一人でも成功すれば全員OKでも構わない」

 おじいちゃんの提案に二人は快くOKを出してくれた。って、これってかなり難しいのでは?

 「それって、おじいちゃん達が体に身に纏っているやつだよな?」

 カナ君も私と同じで難しいのではと思っているみたい。

 「別に全身に身に纏えとは言っておらん。どこか一か所に身に纏えばいいだけだ。どうする?」

 少しだけ優しくなったような気もするけど……。

 「僕はやるよ!」

 「俺だって! どこか一か所だろう?」

 「勿論わたくしも参戦致しますわ!」

 マリアさんもやるんだ……。

 「えっと、一応がんばります……」

 私には出来ないと思うけどね。一応参加表明しておきます。

 「そうか。全員参加という事で。では、五分間……」

 「五分! 短くねぇ?」

 「何を言っておる。五分でできなければ、三十分かけても無理だ」

 一気に難易度が上がりました! おじいちゃんそれ、ずるくないですか!

 「わかったよ……」

 おじいちゃんにきっぱり言われ、カナ君は渋々了承した。

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