おじいちゃんの秘密
第10話 一人の青年
光が納まると私はふわりと体をすり抜ける暖かい風を感じた。
うん? 風?
「おぉ、すげぇ!」
「まあ。素晴らしいですわ!」
「本当に召喚されたんだ!
三人の声に促され私も目を開けて驚いた! 皆が言う様に私も感動!
そこには澄み切った青空。そして地平線まで続く草原。
空には雲一つなく、地上には建物どころか道すらなかった。
「あー!」
と突然、大きな声が聞こえ振り向くと、カナ君が私達に向けて指を指していた。声を上げたのはどうやらカナ君みたい。一体どうしたというの?
私は、自分の体をあちこち見てみるが、特段変なところはない。制服も汚れていない。
「制服じゃん! ずるい!」
「ホントだ!」
へ? 制服? 何故ずるい……。
カナ君が言うとハル君も同意した。
「見かけを気にする割には、抜けてますわね!」
何故かマリアさんがどや顔で二人に言った。
また意味がわからない会話が……。
「えっと、一体何がどうなって……」
一応訪ねて見ると、三人共驚いた反応を示す。
「召喚されし者の鉄則じゃん! 制服での召喚!」
「そうですわ! 本当に二人はぬけておりますわね!」
「あぁ! 僕達着替える時間があったのに!」
「………」
そんな事ですか!
私は彼らのこだわりが凄すぎてよくわかりません!
「次こそは!」
しかも召喚されたばかりだというのに、カナ君はこんなセリフを言っているし……。
「さてとじゃ、おじいちゃんを探すか!」
気を取り直してカナ君が言うと私達はそれに頷いた。
「でも、どこを探せば……」
「どこってあっち。これも常識!」
何もないのにと思っていたが、いつの間にか一本の木が立っていた!
いや絶対さっきまであんなのなかったって!
「さあ、行こうぜ!」
「うん。行こう!」
「行きましょう!」
私が驚いている内に三人は走り出した。
「え……ちょっと待ってよ!」
私も三人を追いかけた。
草原の草は、二十センチぐらいの背丈があり、その中を私達は全速力で駆けて行く。
私は別に全速力でなくてもいいんですけどぉ!
心の中で叫びながら三人を追いかけた。やや遅れて到着すると、木の前で三人が顔を見合わせている。
何だろうと膝に手を突いて息を整えつつ目をやった。
「え……」
木の前に緑の衣装を身に纏った金髪の青年が立っていた!
一瞬、アメリアさんを追いかけていた男の人かと思ったけど、明らかに顔が違った。しかし服装は一緒だと思う。
一体どういう事?
「どういうことなのでしょうか?」
マリアさんの言葉にうーんと首をひねる二人。三人も私と一緒できっとあの男の人の仲間だと思っているに違いない!
「おじいちゃんは、どうしたんだろう?」
不安な顔でハル君は言う。
「取りあえず聞いてみるか……」
カナ君はそう言って皆に頷いてから、男の方を向いた。
「あのすみませんが……」
「なんだ、その他人行儀は? しかし四人とは驚いた」
カナ君が話しかけると、さもこちらを知っているような口ぶりで返された。
私達は顔を見合わせる。
本当に私達の事を知って人なのだろうか? 私には外人の知り合いはいませんが。
「なんだわからんのか……」
少しからかうようにさらに言って笑う。
私達は彼を探るようにジッと見つめる。
碧い瞳は優し気で誰かに似ているような気がする。
誰だろう? 笑顔が誰かに……
「おじいちゃんだ……」
そう思って呟いていた。若い頃のおじいちゃんなんて知らないけど、何故かそう思った。三人は驚いて私を見た。
「ルナか? 久しぶりだな」
そう言ってまたほほ笑んだ。
「え? 魔法で変身しているの?」
ハル君がおじいちゃんだと思って聞いた。私をルナと呼んでいたのは後は、おじいちゃんだけだ。
「いや、これが本来の姿だ」
「「「「えー!」」」」
おじいちゃんの答えに私達四人は綺麗にハモった!
だって今のおじいちゃんの姿は、おじさんより若い二十代ですよ! 若返り過ぎてませんか?!
「本当におじい様ですの?」
「あ、もしかして! アメリアさんが探していたリアムって言う人じゃない?」
「本物のおじいちゃんと入れ替わっているって事か?」
三人はまだ疑っているようでそう言いあう。確かにおかしいけど、私をルナって呼んだんだよね……。
「なんだ三人共疑い深いな。確かに向こうの世界での名前はリアムだが、正真正銘お前達のおじいちゃんだ! まったく、もうそろそろ魔法が使いたいだろうとこの場所を用意したというのに……」
おじいちゃん? は、さも残念そうに言う。
「それを早く言ってくれよ!」
「まあそれで、わたくしにも儀式を出来る様に用意を? ありがとうございます」
「なるほど! それで儀式を行った者を召喚なんだ! 納得!」
三人共態度をコロッと変えた……。この変わりよう何? まあ、たぶんこの人はおじいちゃんだと思うけど。ただ、本当に本来の姿なのかなぁ?
それにしても三人の扱いがお上手です事!
「取りあえずは、私がおじいちゃんで納得したか?」
納得したと今度は素直に三人は頷いた。
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