第11話 私の想い

 おじいちゃんと確定して安心したけど、ふと思った。さっき向こうの世界ではと言っていた事、そしてこの衣装……。

 「ちょっとまってよ! その衣装に向こうの世界って! おじいちゃんって地球の人間じゃなかったの!?」

 「「「えー」」」

 思い当たると私は叫んでいた! そして三人もハーモニーで驚きを露わにする。

 ハル君達は、アメリアさんを異星人だと言った。多分、色は違うけど同じところから来たんじゃないかな? と私は推測した。

 「お待ちになって。おばあ様が故郷に帰ったというのは、もしかして別の世界ですの? だとしたら、おばあさまの異世界の方になりますの?」

 「その通りだ」

 おじいちゃんはそうだといとも簡単に頷いで見せた。

 言われてみれば、その可能性もあった。でもまさかおばあちゃんも異星人なんて! って、おばあちゃんも魔法使い? って、ハル君の家族って魔法使い一家?!

 うん? でも何でハル君達は儀式をしたんだろう? 地球で生まれたからだろうか?

 そんな事を考えているとハル君が質問をして話を聞き出していた。

 「じゃ、お父さんって地球で生まれたけど地球の人間じゃないとか?」

 「そういう事だな」

 「……じゃ俺も母さんも地球の人間じゃないのかよ!」

 勿論だ。だた二人は地球の人間と結婚をしているからお前達はハーフってところだな」

 「ハーフ!」

 「……すげー!」

 聞き出していたけど、自分がハーフだと知って状況に酔いしれている……。半分地球の人間じゃないんだけどいいのだろうか?

 「まあ、その話は今度時間がある時にでもするとして、今は魔法の事を話そうか」

 「ぜひ聞きたいですわ!」

 マリアさんがそう言うと二人も頷く。三人共目が輝いている。

 「……あ、あのさ。そんなんでいいの? 自分達が地球の人間じゃないかもしれないんだよ?!」

 「楽しみは取っておかなくちゃ」

 「ほらエンドして、ここからでなくちゃいけないだろう? その話は後でじっくりきくからさ!」

 「そう……」

 二人は半分異星人の血が混ざっている事に逆に喜んでいるみたい。……本人がそれでいいならいいか。それに今は魔法使いの事を聞きたいみたいだし。

 「では、お願いしますわ。おじい様」

 マリアさんも話が楽しみな様でそう言って急かした。

 「まずは、おめでとう!」

 おじいちゃんがそう言うが私達はキョトンとなった。何を祝われたのかわからない。

 「まことには魔法使いの儀式を行った者と伝えたが、正確には儀式を行って魔法使いになった者だ。そういう事でお前達は、ちゃんと魔法使いになっているという事だ」

 「……うん。そうだね」

 「なんだ、リアクション薄いな……」

 ハル君が頷いて答えるも、おじいちゃんが想像した反応と違ったみたい。まあ、私達はもう既に確信してしまっているからね。

 「しかし、四人とは驚いた」

 そっか。本来は多くてもマリアさんを入れて三人の予定だった。私は偶然居合わせただけの存在。しかも、さっきまで魔法使いの事を信じていなかった……。

 「ごめんなさい……。勝手についてきちゃって……」

 「驚いたというのは、来てくれるとは思っていなかったという意味だ。嬉しい誤算だった」

 私の言葉におじいちゃんはそう言ってくれた。

 「嫌ですわ。泣く事などありませんわよ」

 「そうだよ。喜んでいるんだよ」

 「そうそう。ルナだって魔法使いなんだからな」

 私の頬にいつの間に涙が伝っていた。別に泣こうとしたわけじゃない。なんとなく、裏切った気分になっていた。

 三人は泣き出した私に驚いて声を掛けてくれた。

 「違うの。私、魔法使いの資格ないから……」

 「ないってなんで?」

 ハル君が不思議そうに聞いて来る。ここにいるのだから魔法使いであるのは間違いないから。

 「皆を騙していたから……」

 四人は顔を見合わせる。

 「おかしな事を言いますのね。わたくしたちが知り合ったのは昨日ですわよ?」

 「あ、もしかして小学生の時の話?」

 ハル君が思い当たり聞いて来るけど私はそれに首を横に振る。

 「私は、魔法使いを信じていなかったの……」

 私は騙していた内容を口にした。

 「信じてなかったって……。ルナ、魔法使いになれているよね? ここにいるんだから」

 ハル君はまた不思議そうに言った。私はそれに今度は頷いた。

 「うん。儀式をした時は信じていた。……ハル君が引っ越ししていなくなってからもずっと信じていた。でも……中学生になって、魔法使いの話をすると皆に笑われるようになって、親からもあれは魔法じゃなくて手品だよと言われて……」

 「それで、魔法使いを信じなくなっちゃったの?」

 悲しそうにいうハル君の言葉に頷いた。

 誰も信じてくれなかった。しかも私は魔法を使えない。魔法使いじゃない! そう思う様になった。

 「引っ越しして北海道に来てからは、転校先の学校では魔法使いの話は、一回もした事はなかった。私は魔法使いになりたい想いを捨てたのよ!」

 「捨ててないだろう? ここについて来た。魔法使いになりたいって……魔法使いでいたいって想いがあったから来たんだろう?」

 「うん……」

 カナ君の言葉の通りマリアさんの儀式を見て、あの時の想いを思い出した。でもそれまでは、ずっと否定していた……。

 「それはすまなかった。あの時は、自分達の事で精一杯で……。ルナにちゃんと言っておかなかった私の責任だ」

 「え? おじいちゃんのせいじゃ……」

 私が否定しようとすると、おじいちゃんは首を横に振る。

 「いや、魔法使いの事は皆に内緒だと、一言伝えておけば済んだ事だ」

 「ルナ。あなたは魔法使いでしてよ。わたくしと同じ新米の魔法使い。わたくしの儀式の時にあなたも一緒に魔法使いにまたなったのよ!」

 そうだね。あの時、この想いを取り戻した……。

 「マリアさん、ありがとう……」

 「まあ、おじいちゃんが悪いのは当たり前だな。俺達はちゃんとそう言われていたんだからな」

 腕を組みうんうんと頷きながらカナ君は言う。言われていたの?

 「え? そうなの?」

 「うん。僕達周りには言ってないよ。親にも止められていたし」

 まあ、言えば私の様になるのは目に見えているもんね。

 「……ごめんね、ルナ。僕しらなくて。一人だったら心細くなって、そうなっちゃうよね」

 「もう大丈夫ですわ! わたくしたちがおりますもの! 一人ではありませんわよ」

 「ルナ、運がいいぜ! これから魔法の修行が出来るみたいだぜ!」

 「うん。ありがとう」

 今度は私はうれし涙で頬を濡らした。

 「改めて、宜しくね!」

 その涙を拭いて元気な声で私は言った。皆は笑顔で頷いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る