第7話 彼女の検証

 「ただいま~。どうぞ入って」

 ハル君が扉を開け、アメリアさんに入るように勧める。助けた彼女はの名前だ。名前からしても外人ですね。ですけど、意味不明なんですよね……。マリアさんは難しい顔をして無言ですし。マリアさんが大人しいと何故か怖いです……。

 取りあえず、さっきの男がいるかもしれないという事で、ハル君の家に行くことになった。来て驚いた。大きい家だった!

 もしかして、ハル君もカナ君に負けず劣らす金持ちの家系なのかもしれない。

 「お帰り。部活は終わったのか? って今日は随分とお客さんを連れて来たな」

 そう言って出迎えに出て来たのは、三十代ぐらいに見える男性で、ピシッとグレーのスーツを着ている。

 「お父さん、ただいま」

 え? お父さんでしたか! そう言えばハル君のお父さんってあまり会った事なかったかも。

 「あの、初めまして……じゃなくて、ご無沙汰してます。天恵あまえ月海つぐみです!」

 「いらっしゃい」

 おじさんは笑顔で返してくれた。

 「こんにちは、おじさま。ところでおじさまを含め何人ここにおりますか?」

 唐突にマリアさんが聞いた。それには皆驚く。それでもおじさんは答えてくれた。

 「えっと、六人……」

 「おじさまにも見えていらっしゃるのですか! では、これは二人の茶番ではないのですね……。何故、わたくしたちには見えないのでしょうか? 男性にしか見えないとか……」

 答えを聞いてマリアさんは、自分の考えをブツブツと語っている。聞いたのは見えているか確認する為だったらしい。

 マリアさんがこんな芝居をするはずもないので、本当に見えていないのは確実ね。

 もしかしてアメリアさんって、幽霊とか? でも普通、霊感がある人の割合の方が少ないよね?

 それより、私も見えない事になっているのね。確かに見えているとは言ってないけど……。

 「あの、私は見えてますけど……?」

 「「え!」」

 カナ君とハル君も驚いた。二人も私が見えていないと思っていたんだ……。

 「まあ、あなた! 見えないふりなどしていたのですか!」

 「え? 違います! 私見えないなんていってないですし。マリアさんが見えないって言うから驚いて何も言えなかっただけです。って、本当に見えて……」

 「なぜわたくしにだけ見えていないのですか!」

 かなり不満があるらしい。って、怖くないのだろうか? 見えない人物が……。

 「あの君達、一体何の話を? 取りあえず中に入ったら?」

 「あぁ、そうだね。アメリアさんもどうぞ。あ!」

 おじさんの言葉に頷いて、ハル君がそう言うと、アメリアさんは靴のままで中に入ろうとしたので、ハル君が叫んだ。

 「すみませんが、ブーツを……え?」

 「ちょっと待ってて!」

 おじさんがアメリアさんに何か言おうとすると、カナ君が家に上がり込み中に消えて行った。そして、雑巾を持って来て、アメリアさんの前に置いた。

 「悪いけどこれで靴の裏拭いてもらえる?」

 アメリアさんは頷く。

 「脱いでもらえばいいだろうに……」

 おじさんはぼそっと呟いた。

 アメリアさんは、そっと雑巾の上に乗り、靴裏を雑巾にこすりつける。彼女は、幽霊ではないらしい。拭くときに足が見えたから! そしてローブと思っていたけどどうやら、大きなマントを胸の前少し重ねているみたい。

 「ねえ、ルナ。見えない方って外人の方なのかしら?」

 「え? 見えないのになんでわかるの?」

 「靴を脱いで上がる習慣がないようですので……」

 さすがマリアさん! 洞察力が凄い!

 「そうなんです。瞳が青い、金髪が腰まである女性です!」

 「私も拝見してたいですわ……」

 ため息をしつつ、マリアさんはそう言った。マリアさんは彼女を何だと思っているんだろう? 私はアメリアさんが見えるのでそうでもないけど、怖くないのかなぁ……。

 中に入ると居間も広かった。でも何もない。テーブルを挟んで三人掛けのソファーが二つあるだけ。まあ、テレビとかもあるけど、広さに見合った物がないから凄く広く感じる。

 「アメリアさんも座ったら?」

 カナ君がソファーに腰を下ろすと言った。その隣にハル君が座る。アメリアさんは、こちらを見るので頷くとカナ君の前のソファーに座った。私も彼女の横に座るとその横にマリアさんもそっと腰を下ろした。

 「お父さんもちょっと話あるから座って!」

 ハル君が自分の横に座るようにおじさんに声を掛ける。驚くも言われたように座った。

 「彼女アメリアさんって言って、さっき男の人に追いかけられている所を助けたんだ。それで……」

 「そういう事か! 警察に連絡をすればいいんだな」

 唐突に話すハル君に、なるほどとおじさんは頷き携帯を取り出した。

 「え? 違うよ!」

 「違う?」

 慌てて言うハル君の方を見て、じゃ何だと言う顔つきになる。

 「アメリアさん、異星人みたいなんだ!」

 その突拍子もない言葉に一瞬静まり返った。何故そうなるのだろうか? 確かにマリアさんには見えていないようだけど、そこで何故、異星人なのよ!

 「何を言っているんだ……?」

 「なるほど! それならわたくしに見えないのも納得できますわ!」

 力強くマリアさんが頷く。納得しちゃうんだ……。

 「はぁ……。お前達は父さんの影響を受け過ぎた! 何が宇宙人だ!」

 「宇宙人じゃなくて異星人!」

 ハル君は抗議する。大して変わらないような気もするけど……。

 「どこが違うんだか。いいかい。魔法使いだって信じてもらえない世界なんだぞ。そもそもなぜ、異星人だと言えるんだ!?」

 うん? 何故ここで魔法使い?

 「それは、マリアさんに彼女の姿が見えないから!」

 ハル君の言葉にお父さんはマリアさんを見た。彼女は真面目な顔で頷く。次にアメリアさんを見た。

 「見えていない様です」

 「他人を巻き込んで何を企んでいるんだ! いい加減にしろよ!」

 彼女の言葉を聞いて、隣に座る二人に言った。

 「マリアがそんな事に協力する訳ないだろう? 俺達以外の人間にも見えていないみたいなんだ!」

 カナ君は、そうおじさんに反論する。

「しかし魔法使いならまだしも異星人って……」

 ちらっとマリアさんとアメリアさんを見ておじさんは呟く。確かにマリアさんがこんな訳の分からない芝居はしないと思うけど、何故魔法使いと比べる必要があるのだろうか?

 もしかして……

 「ハル君のお父さんって魔法使いを信じている?!」

 「俺達に出会った時に、アメリアさんはこの世界の人って言ったんだ! という事は地球人じゃないって事だろう?」

 カナ君の説明に被るように、私は至った答えを口に出していた!

 一斉に叫んだ私を皆が振り返る。

 「何を言っておりますの? ルナ。当たり前ではありませんか。おじさまも立派な魔法使いでしてよ」

 「え……?」

 マリアさんのまさかの説明に私は目がテンになる。信じている所か本人も魔法使いだと言う。

 「ちょっと待て!」

 おじさんが私達の方を向いてそう言った。

 やっぱりマリアさんが思い込んでいるだけね。

 「もしかして、ルナって小学生の頃、近所にいたルナちゃんか?」

 訂正をすると思いきや違った。

 「あ、はい。よくおじゃまをして……」

 「いやぁ大きくなったな! ルナと聞くまで気づかなかったよ。……そうだな。ルナちゃんも見えているとなると、アメリアさんが魔法使いからかもしれない。どうです? アメリアさん」

 ……うん? 懐かしむ話ではなくて? 結局魔法使い? 意味わかんないんですけどぉ!!

 「魔法使いです。……もしかしてこの世界では魔法使いは珍しいのですか?」

 注目する中アメリアさんは、躊躇する事無く魔法使いだと言い切った! ついて行けてないのは、私だけの様です……。

 「やはりそうか! 父さんにそんな事を聞いた事があった。普通は魔法使いはこの世界の人間には見えないって!」

 おじさんは驚く事を口走った!

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