第5話 秘密が凄すぎて―3

 このままではずっとファンタジーの話が続きそうだわ!

 「あのところで入部届を出しに行かなくていいんですか?」

 「あら、そうでしたわ」

 何とか話を中断させる事に成功した。

 「ではルナ、行きますわよ」

 「私も?」

 「あなたは副部長でしょう?」

 あぁ、そうでしたね……。別に名前だけの副部長でいいのに。

 「はい」

 「では行って来ます」

 私達は一階に下り、職員室に向かった。職員室は玄関の隣。

 ノックして中に入ると、マリアさんは真っすぐと私の担任の小野寺先生に向かった。

 「小野寺先生」

 「うん? どうした?」

 先生は呼ばれ顔を上げる。

 「ファンタジー部の入部届と役員届ですわ」

 「もう決まったのか。役員届出してしまっていいのか?」

 「構いませんわ」

 出してしまって? 出してしまうとどうなるんだろうか?

 「役員を決めるという事は、部員募集を締め切ると事ですわ」

 私が不思議そうな顔をしていたのか、マリアさんが説明をしてくれた。

 本当に他の部員は入れる気はないようです。

 「え? 天恵あまえお前が副部長をやるのか?」

 小野寺先生は届け出を見て驚いている。まあ、一年ですからね。でも、四人しかいない部だし、そこまで驚かなくてもいいとは思うんですが……。

 「満場一致ですわ! 本人もやる気満々です。ね、ルナ」

 あ、あまり人前でルナと呼ばないでほしい……。あだ名的には恥ずかしいですけど。

 「が、頑張ります……」

 「まあ、本人が納得しているなら……で、天恵ちょっと」

 そう言いながら先生は手招きして、小声で聴いて来た。

 「お前、あの事知っていてこの部に?」

 あの事? ウィザードだって事を先生は知っているって事? でも内緒って事になっているし……。

 「あの事とは? ハル……佐藤君に誘われて入っただけですけど?」

 「そうか。いや別になんだでもない。頑張れよ」

 「はい」

 何も知らない素振りをすると言葉を濁した。芸能人がいるって大変なんですね、先生。

 「あ、そうだ。ところで明日の依頼があるのだが受けるか? 時間は昼ぐらいだ」

 「まあ! 当然お受け致しますわ!」

 え? 受けるの? 活動月曜にからでもいいじゃん……。

 「そうか助かった。二人以上だから四人で行ってもかまわない。ここだ」

 小野寺先生はB五サイズぐらいのカード出しすとマリアさんは嬉しそうに受け取った。

 「昨年も引き受けたところですわ!」

 「じゃ宜しく頼むな。天恵、初課外授業頑張れよ」

 「はい……」

 気は進まないが、私は先生の激励に返事を返した。



  ☆   ☆   ☆



 「ただいま」

 「おかえり。ご苦労さん。これ俺のおごり」

 カナ君の言葉でテーブルの上を見れば、パンと飲み物が用意されていた。買って来てくれたみたい。

 「ビックリだよ。今日から売店開いているんだから」

 「ここの売店すごいんだぜ。休みなの正月と春休みぐらいなんだから」

 それって、それ以外は買いに来る人がいるという事ですよね? なんか不思議だ。文化部だけど課外活動で出てきて……だから文化部なのかな?

 運動部の練習と課外授業の両立は大変そうだもんね。

 「あら、気が利くじゃない。いただきますわ」

 「ありがとうございます。頂きます!」

 私達が席に着くと、食べ始める。

 私の好物のメロンパンがあった! それを一口頬張る。う~ん、ここのメロンパンも美味しいわ。

 「メロンパン好きなのは変わってないんだな」

 「パンと言えば、メロンパンばかり食べていたもんね、ルナ」

 「覚えていたんだ……」

 って、そんなにメロンパンばかり食べていたっけ?

 「ところでルナ。先ほど小野寺先生に何を言われていたのですか? 何か耳打ちされていたでしょう?」

 気になっていたんだ、それ。

 「あの事を知っていて入ったのかって言われました。先生達も二人がウィザードだと知っているんだね」

 「校長しか知らないハズだけど? っていうかあの事って俺のおじいちゃんの事じゃないか?」

 おじいちゃん? おじいちゃんって有名人?

 「二、三年の誰もが知っている事ですが、一年生はまだ知らなかったのね。星空のおじい様は、この学校の理事長ですわよ」

 「カナの父親の親の方だから」

 マリアさんの言葉にハル君が付け加えて教えてくれたけど……。カナ君って凄い家系? って! 魔法使い云々とかウィザード云々より大切な事じゃないかぁ!

 私は、ポトンとメロンパンをテーブルの上に落とした。

 学校生活する上で二人がウィザードだという事実より、同じ部の人が理事長の孫という事の方が学校生活する上で重要でしょう! こっちを先に教えてほしかったよ!

 確かに秘密ではないけどさ……。

 「そこまで驚く事かよ。……名字同じだろう? 入学してすぐにバレたんだよなぁ」

 確かに学校と同じ名字だけど、凄く珍しいくもないし、気づかないって!

 「大変でしたわね。同じ部に入りたいって人が多くて」

 二人は去年の今頃の事を思い出し言った。

 確かにそうよね。学校関係者と仲良くしたいって人いるよね。あ、それで役員提出して部員募集を打ち切ったんだ。ウィザードだとバレない為だけじゃなかったんだ。

 先輩たちからの勧誘も凄かったから二人だけで部作ったのかな? って、だからこんな部でも通ったのね!

 うん? 先輩……あ、今更だけどカナ君って先輩だよね?

 「あの、カナ君って呼んでいていいのかな?」

 「は? どういう意味だよ!」

 カナ君はあからさまにムッとして返事を返して来た。理事長の孫と聞いた途端態度を変えたと思ったのかも! いや、違うから!

 「あ、いや、そうじゃなくて。一応、先輩だったなぁって気が付いて。さっきからタメ口というか、友達のように会話していたから……」

 「まさかあなた、星空の事を先輩と呼ぶおつもり? 星空の事はカナで十分ですわ!」

 そこ反応するんですね。カナ君の事も先輩って呼んではダメですか……。

 「十分って……。俺はルナを仲間だと思っているから、今更先輩後輩なんて言うなよ」

 「今まで通りでいいと思いよ」

 まあ、私も今更先輩って呼びづらいです……。

 「えっと、ごめんなさい。改めて宜しくお願いします!」

 私の言葉に三人はほほ笑んだ。私は胸を撫で下ろす。ギクシャクにならなくてよかった……。

 「あ、そうでしたわ! もう奉仕活動受けてきましてよ。時間は明日の十一時ですわ。明日のお仕事は昼過ぎでしたわよね?」

 あぁ、そういえば受けたんだったね……。って、マリアさんって二人の行動把握してるんだ。まあ、そうじゃないと受けられないか。

 「さすがマリア。仕事が早い! 明日は二時からだから大丈夫だ」

 「え~。明日の午前中はゆっくり出来ると思ったのに……」

 カナ君は褒めたけど、ハル君は私と一緒で不服みたい。だよね~。

 「文句は言わないで頂きたいわね。あなた達ウィザードの仕事がない時に、依頼を取らなくてはいけませんのよ。出来るだけ早くノルマは達成しておくのに越したことはありませんわ!」

 「………」

 ごもっともです。マリアさんのいう事は正論なのでハル君は何も言い返せない。

 「では、明日の十時五十分に中央公園に集合ですわよ。制服着用でお願いね」

 「え? 制服なの?」

 「勿論ですわ。課外授業なのですから。指定ジャージでも構わなくてよ」

 「いえ、制服で行きます!」

 そんなこんなで早くも明日が課外授業になりました。

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