第4話 秘密が凄すぎて―2

 そう言えば去年は二人だけで部活……奉仕活動をこなしていたんだよね?

 「……あのやっぱり他に一年を入部させる気はないんですよね?」

 秘密を守りたいならそうかもしれないけど、四人だと寂しい気もする。

 「入れる気はないな。秘密を知る者が多くなればなるほど、秘密が漏れる可能性が高くなるからな」

 「あなたなら信用できますわ。なんといっても魔法使いなのですから」

 カナ君の台詞に頷きながらマリアさんが凄い事を言った!

 私が魔法使い? どうしてそうなるの? 二人が比喩的にそう言われてもわかるけど。もしかして、二人して天然のマリアさんをからかっているとか?

 でも普通信じるかな? あ、あれかも! アイドル云々じゃなくて、儀式!

 あのおじいちゃんの手品凄かったもんね! 足元が光って……本当に自分は魔法使いになれたって私も思ったものよ。

 「はあ。羨ましいですわ! 私も早く儀式を行いたいですわ!」

 「やっぱり! 儀式の事言っていたんだ!」

 思い出に浸っていたらマリアさんが恨めしそうに言った。

 なるほど。そういう設定なのね! ファンタジー部ってそういう風になりきりっちゃう部なのね! って、どういう活動の部なのよ……。いいのかそれで。

 「大丈夫だよ、マリアさん。僕達と一緒に修行しているんだから」

 うん? あれかな遊びで忍者の修行をするように、魔法使いの修行をしているって事かな? 凄い部だね、ここ……。これ頼んでも誰も入ってくれなかったなんじゃない?

 「そうですわね。魔法使いのあなた達もまだ魔法は使えるようになっておりませんものね!」

 「………」

 よくわからないけど、ハル君は撃沈されたようです。何か目標みたいのあるのかな? って、どんな事やってるんだろう?

 手品かな?

 「人が気にしている事を……」

 カナ君がボソッと呟いた。

 「おじいちゃんは、この世界の魔力が少ないせいだって言っていた……」

 まるで本気で言い訳をするようにハル君も言った。

 「ちょっと待って! おじいちゃんも仲間に入っているの?」

 「仲間って? おじいちゃんに教わっているんだよ」

 そうハル君は返して来た。

 うん? あれれ? もしかしてこの三人は魔法使いを未だに信じているとかですか?!

 しかも教わっても使えないって……それ手品だよきっと。出来ない時点で気づこうよ。

 マジどうしよう。どれだけピュアなのよ、この人達……。

 私は溜息を一つついた。

 「もしかしてルナって、魔法使えるの?」

 「使えません!」

 どうしてそうなるのよ! 呆れてため息はついたけど、そっちじゃないから!

 「大体私は、修行なんてしてないし!」

 「なんで?」

 不思議そうにハル君は聞いて来た。まるで魔法使いの修行をするのが当たり前のように……。

 「なんでって。方法しらないし! 儀式をやった後、ハル君達直ぐに引っ越ししちゃったじゃない! おじいちゃんが教えてくれたのって、魔法使いは想いの強さだって事だけだし! どうやって……」

 って、私何言ってるの? これじゃ教えてもらってないから出来なかったと拗ねているみたいじゃないの!

 それに引っ越ししてしまったのはハル君のせいじゃないのに……。

 「あ、えっと。違うの。ごめんなさい……」

 「ううん。僕の方こそごめんね。そうだよね……」

 「では今度、おじい様にお会いになってはいかが? きっと喜びましてよ」

 「そうだな。それで一緒に修行しようぜ!」

 三人は、私を励ますように声を掛けて来た……。

 うん。部では魔法使いって事にしておこう。三対一じゃ勝てませんから。

 でも、どんな修行かも気になるし、おじいちゃんにも会いたいな。

 「ありがとう。おじいちゃんには会ってみたいかも……」

 そう返事を返すと、三人は安堵して頷いた。

 そう言えばマリアさんとどうやって知り合ったんだろう? 魔法使いになりたいと思う程になったきっかけも知りたいな……。

 って、ハル君とカナ君って名字違ったよね? 兄弟じゃない! あれ? どういう関係?

 「あれ? 三人ってどういう関係なの?」

 「は? 俺とハルは従兄弟だよ! 知らなかったのかよ」

 知りませんでした! 小さい時はそんな事、気にもしてなかったので。

 私が頷くと、カナ君はマジかーとため息をついた。

 「俺の母親とハルの父親が姉弟なんだよ」

 「夏休みとか休みの度に、僕の家にきていたんだ」

 そうだったんだ。じゃ、おじいちゃんはカナ君の本当のおじいちゃんでもあるんだ。

 「わたくしは星空かなたと幼馴染ですわ。ちょうど陽翔はるととルナのような感じかしらね」

 マリアさんがそう言って、二人との関係を教えてくれた。

 「ふうん。で、ウィザードになったきっかけは? オーディションでも受けたの?」

 別に特段意味はないけど流れて的に聞いてみた。だってこの二人なら魔法使いになりたいからって、受けたかもしれない。

 けど、三人は何故か顔を見合わす。

 「俺の父親がウィザードが所属するプロダクションの社長なんだ。これ、内緒な」

 え? そう事なの? オーデションどころか親にお願いしてなったのかもしれないの?

 私は目を丸くしながらそう思った。

 「あと、この頭は俺のポリシーな。ホラ魔法使いってファンタジーの中では、髪が長かったりカラーだったりするだろう? で、もし召喚された時に黒髪だとダサいじゃん!」

 カナ君は、きゅっきゅっと坊主頭を撫でながら語った!

 うん? 聞きもしないのに語り出して、しかも黒だとダサいって? いやいやいや、スターリーは黒髪じゃん!

 つい私は心の中で突っ込んだ。

 「うんうん。髪の色は金髪が一番だよね。僕のこだわりは目の色なんだ! 左右違うのがいいよね! オッドアイ!」

 続けてハル君まで語り出す。って、オッドアイ……シマールは両目ともブルーでしたよね? 私も続けて突っ込ませて頂きました!

 「二人共見た目にこだわり過ぎですわ」

 「そうですよね!」

 マリアさんは、まだ毒されていなかった! よかった!

 「ファンタジーの世界では、呼ばれ方が重要ですわ! そう思いません? ルナ」

 うん? 呼ばれ方? 呼ばれ方って何?

 「えっと……」

 「いいですか! ファンタジーの世界のどこで先輩などと呼びますか! やはりそこはお姉様ですわ!」

 あぁ、もう既に遅しでしたね。どっぷり毒されてました……。二人より意味がわかんないです。一つわかったのは、さっきお姉様と呼んでと言ったのは、ここから来てるって事くらいです。

 私は三人の熱弁? にファンタジー部で確かに間違いないと確信しました! 私は語れませんがいいでしょうか?

 「で、ルナのポリシーは?」

 語れないというのに、ハル君は聞いて来た。しかもとっても答えを期待している様子。ありませんから。初めて聞かれましたし……。

 「えっと……自然体?」

 「自然体か。深いなぁ」

 適当に答えたのにハル君には、凄く響いたようです。

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