第2話 二人との出会い―2
「何、この椅子とテーブルの組み合わせ……」
ハル君の入ってすぐの第一声です。
目の前には、公園などにあるような木のテーブルの両側に二個ずつパイプ椅子が並べてあった。
確かに不思議な組み合わせかも。
「いいから、座れよ。で、その子が一緒に入るヤツ? 女にしたのかよ。大丈夫か?」
促され私達は並んで座る。私の前に男の先輩がその横に女の先輩が座った。
ここに入る事になっていたみたいね。でもあまり歓迎されてないような……。
「うん。大丈夫。すごいんだよ!」
突然ハル君が、興奮して叫んだ。
「何がすごいんだよ」
「ルナ! ルナなんだよ!」
「え? まじ!」
今度は男の先輩の方が興奮している。ルナって私の事よね?
「かなた! 和泉星空。ほら、ハルの真似してカナ君って呼んでいただろう」
と、説明されて、小学校の頃三人で遊んだもう一人だと気づき驚いた。
あの夢って予知夢かなんか?
「え~! 覚えてるよ。一つ上だったんだ」
私も興奮して叫んじゃった。
「思い出した? 夏休みと冬休みぐらいしか行ってなかったから。お前が女の子連れてきて驚いたけど納得だ」
前半は私に後半はハル君に話しかけた言葉。カナ君の顔は、驚きと嬉しさであふれていた。
「ルナならいいよね。秘密だって守れるよ! ね!」
カナ君に言った後、私に振り向き同意を求めて来た。ねっと言われても……。
「えっと……。状況がわからないんだけど」
私は素直にそう言った。
「お前、何も話してないのか?」
「一緒に入部する事にはなってるけど、話す前にここに。でも大丈夫だよね!」
また同意を求められた。
「えっと。それは内容によると言うか。ハル君がこの部に入るって事も今知ったぐらいだし……」
「もう少し落ち着いたらいかが?
それまで成り行きを見守っていた女の先輩が口を挟んできたと思ったら自己紹介を始めた。
「申し遅れました。わたくし三崎
え……お姉様?
驚いて私は、ハル君を見ると、言わんとしてる事を察して答えてくれる。
「僕は、マリアさんって呼んでいるよ」
「私もマリアさんで! ……いいでしょうか」
「あらそう? それでもよろしいわ」
とても残念そうにマリアさんは答えた。
とりあえず私も自己紹介をしようかな。
「えっと、私は
軽く会釈をすると、マリアさんはにっこりほほ笑んで宜しくと返した。それから、クルッとカナ君に顔を向けると抗議を始める。
「ところで星空。彼女をルナとお呼びするのはわかりますが、お姫様は違いません? ルナは、女神でしょう?」
え! 姫! そんな事も話してあるの!
二人がナイトで私がお姫様。そういうごっこ遊びをしていた記憶がある。
「小学校の時に考えたんだから仕方ないだろう!」
顔を赤く染めカナ君が反論する。
「わたくしルナという名前の方だと思っておりましたわ。ルナが魔法使いのお姫様で二人がナイトで、立派な魔法使いになって守るんだって言っておりましたから。……でも、見た目はわたくしと変わらないのですね」
頬に手のひらを当て、何故かため息交じりに呟く。
最後の一言がよくわからないけど。
「小学生の時の話で、もう子供じゃないので魔法使いだなんて……」
「そうでしたわね。公になんてしておられませんよね」
「………」
マリアさんってもしかして、私を魔法使いだと思っている? とかないよね?
「もしかして、秘密って魔法使いって事じゃないですよね?」
「そうね。でもそれは、あなたの秘密でもありますから。その問題は大丈夫ですわね」
その言葉に二人は頷くが、私は驚いた!
だって平然として言ったよ! 私の秘密でもって事は、マリアさんって私たちが魔法使いだって思っているって事?! これってどっきり? それとも二人が冗談で言った事を本気にしたとか? 普通はあり得ないけど……。
とりあえずこれはスルーしよう! どっきりだとリアクション薄ってなるけど。
「そうだ。あの、この部って何をする部ですか? 先生に一週間で決めなさいって言われていて……」
「うーん。そうだな。その前に部とはどういうものか話を聞いているか?」
私の問いにカナ君が答えるも質問に質問を返された。
「確か、奉仕活動を行う……仲間であり大半を一緒に過ごし色んな事を学ぶ仲間である」
私は案内書を見て答えた。これってクラスメイトより重要な相手なのでは?
「やっぱり何も聞かされてないんだな。俺たちが一年の時と一緒だ」
「部とはどういう役割か知っていただいてから、お話を進めてはいかが?」
カナ君が呟くとマリアさんがそう提案した。
私もその方がいいので頷いた。ハル君も知らなかったみたいで頷いていた。
「この学校の奉仕科独特の特徴で、他校にないシステムなんだ。部を会社に見立て奉仕活動を行い運営をする。という奉仕科の縦割り授業だ」
カナ君が語り始める。
「そういう事だから部活内容よりも人間関係が重要かな? 聞いた話によると、一年は奉仕活動を押し付けられ大変らしい」
「心配いりませんわ。わたくしたちはそんな事をするつもりはありません」
マリアさんは、つかさずフォローを入れる。
「俺たちは昨年この部を立ち上げたから、そんな目に合ってないけどな。それと一年だけに、つまり二人に押し付ける気はないよ」
「部って作れるんだ」
頷きながら私が呟くとカナ君が更に説明をしてくれる。
「条件さえクリアすればな。二人以上で作り毎年一年を入部させる事。まあ、作る時にあたっては二人そろっていればOKだったけど」
「そんな簡単な条件なんだ……」
「簡単ではありませんわよ。設立の条件は難しくはありませんが、部は会社なのですよ。持続していかなくてはなりませんわ」
「そ、それもそうですね……」
マリアさんに反論された。って、結構面倒な仕組みなのね。
「ではもう少し踏み込んでお話し致しますわね。部での奉仕活動が成績の評価の一つになりますわ」
「じゃ、極端に奉仕活動が少ないとやばいとか?」
マリアさんの言葉にハル君が反応して言った。
「評価は個人じゃなくて部ごとなんだ。だから全部一年がしても皆で分担しても評価は変わらない。それでさっきの一年が大変だって話につながる訳」
私達はなるほどと頷く。面倒な事は一年に押し付けられそうだね、それ。
「評価は、ポイント制。つまりは、点数ですわ」
「じゃ人数少ないと不利じゃないか?」
「私もそう思います。人数が多い方が有利だと思うんだけど……」
私達が意見すると、二人はノーと首を振る。
「そこは学校も心得ておりますわ。ノルマがありますのよ。月に部員人数分の奉仕活動を行う事。それと、一回の募集数は二人から四人ですの」
「それでも人数が多い方が有利だと思うんだけど……」
「あら、そうかしら? 一学年に一クラス。一クラス三十人。全員では何人かしら?」
「九十人? ……あ!」
答えてから私は気づいた。一月に九十件以上の奉仕活動がないとダメだという事に。
「気づいたようですわね。奉仕は街の方々からの依頼がほとんどで、校内の奉仕も取り入れて、学校側も九十件以上になるようにしているようですわ」
「このシステムが知られるようになって、地方からの依頼も来るようになったみたいだぜ」
私達は、二人の話に頷く。
九十件に満たなかった場合は、ノルマが達成できない部が出るという事になる。
「仕組みはわかったけど、別に部にする必要あるのかな?」
「そのまま授業にすると夏休みとかに出来ないし、部活動なら休みの日も活動出来るって訳」
「なるほど!」
私の質問にカナ君がわかりやすく答えてくれるもマリアさんが嫌な一言を付け加える。
「そのお蔭で夏休みも冬休みも、あってもないようなものですけどね」
「あ、赤点なんて取るなよ! 部活動も授業の一環なんだから理由にならないし、追試に合格するまで部の連帯責任で奉仕活動が出来なくなるからな」
更にカナ君が付け加え、私達はげんなりする。
「大丈夫ですわ。そうならない為に先輩が後輩の勉強の面倒を見る事になっておりましてよ。何せ時間はたっぷりありますからね」
「なんだよそれ。午後からは自由だ! って、思ったのに……」
「ほんとだよな。奉仕活動がなくても六時間目の授業終了時間まで部室にいなきゃいけないし……」
ハル君が愚痴るとカナ君は同意する。そして、チラッと私を見ながらこう続けた。
「人間関係が悪かったら最悪だろうなぁ……」
部の説明をしながら、説得しようとしている?
「考え方よっては、気が合う仲間だけの少人数の方が楽じゃありません?」
マリアさんの言葉に、二人は頷き私を伺う様に見ている。
あぁ、これ、うんと言わせようとしているよね? カナ君とマリアさんの言う通りだしここでもいいかな。
「……わかりました。ハル君と一緒にこの部に入ります」
「やったー!」
「よしきた!」
観念した私の言葉に、二人は手を上げて喜んだ。
「まだ安心はできなくてよ。ここからが肝心ですわ。秘密が守れるかどうか……」
マリアさんの言葉に、二人は真面目な顔になる。
そう言えばそうだった。一体なんだろう? 魔法使い……だと思い込んでいる以外にどんな秘密があるのだろう。
三人の秘密ってなんだろう?
「信じてもらえるかどうか分からないけど……」
ハル君がそう切り出し話し始める。とても信じられない話を――。
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