第1-13話 それは到底盾とは言えないものであった
僕が認識できた範囲内での話をしよう。
というか、そもそも僕は今までこんなことがTKBでできるとは思っても来なかったし、この場にいる人たちはこんな事を日常茶飯事で行なっているのだろうか。
いやそもそもこのVIPだけが異常なのか、それはこの場に初めて居合わせた僕は知る由もなかった。
さて、どうやら縁さんのTKB 封門(一輪挿しといったように聞こえた)には複数の特徴があるようだった。
まず一つは、「削り取り」だ。
この表現が正しいかどうかは分からないが、輩の1人がTKBで飛びかかって行った際、縁さんはその大きな封門の裏にスッポリと姿を隠した(と言うよりはTKBを前に持っただけのようにも見えたが)。まるで盾のように見えるTKBであった。
そして、輩のTKBはそのまま封門にぶつかるor弾かれるくらいに思ったのだが、実際は違った。
ゴリュリュリュリュ
なんだろう。シュレッダーにかけてはいけないものをかけた時の音というか、ミキサーに金属を入れてしまった時の音というか。
輩のTKBは、封門に触れた部分から、まるで大根おろし器にかけたようにみるみる内に削れていった。
輩はとっさに飛び退いたがTKBは半分以上無くなっており、それはもう再起不能どころかスクラップも同然であった。
「まだ食べたりひんなぁ…」
クスクスクスと封門の裏から無邪気に顔をヒョコッと出して笑っている縁さんは恐ろしく見えた。
「速すぎて見えないけど、ぶつかる瞬間にキーキャップが入れ替わったみたいね。話には聞いてたけどあれが『鑿岩(さくがん)』キースイッチかぁ。エゲツないなぁ」
それは鉛筆削りのようなキーキャップが付いたキースイッチ一体型の特殊キーらしかった。
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