第1-12話 縁

「あんだけ自信満々に他人の鍵盤ちゃん壊しといて今更勘弁してってそんなん都合よすぎひん?」


中学生?と思われる小柄な少女が部屋の中心で呆れた声を口に出していた。


その後ろには身長の高い黒髪ロングの女性とヤンキー座りの男がいた。


「ゆーちゃん、こいつの鍵盤ちゃんも壊しちゃおうって。自業自得だよ」


「ヘッド、やっちゃいましょーよー」


「帯流… だからヘッドゆーたら、ゆーちゃんが族みたいだからやめろっていつもゆーとるやろ!!」


ヒッ


ヤンキー座りの男は黒髪ロングの女性に殴られている。


「雷菜ちゃん、あかんよ〜。ウチらが鍵盤ちゃん壊したらこいつらと同じやん。けど、すみませんでしたもうしません、はいわかりました、今度からはもうしたらあかんよ、指切りげんま〜んってわけにもいかへんもんなぁ。」


周りはざわつきめいている。よく見ると床には壊れているTKBのようなものが数台分転がっていた。


そしてその前には、3人組の男が汗をかきながら苦悶の表情を浮かべている。


何やら男たちは、許しを乞うてる風に見えるが、何か様子がおかしかった。


気のせいかもしれないが、何かを企んでるような目配せを3人で行っていた。


「じゃあこうしよ。もっかいやってこっちが負けたら帯流のTKBあげるわ。そういうのが目的なんやろ?あとその違法パーツ付いてるTKBで思っきり来たらええよ〜。そんくらいのハンデあげるわ」


帯流は、ハァ?!っとなっていて雷菜はクスクスと笑っていた。


男たちは急に反省の顔から、いかにも悪巧みな表情を出して、背負っているバッグから一枚のTKBを取り出した。それは通常規格で出回っていなそうな様相のTKBで様々な拡張パーツのようなものが取り付けられていた。


少女は呆れ顔でボソッと呟いのを僕は聞き逃さなかった。


「…はぁ、ほんま呆れて声もでぇへんなぁ」

「懲りないねぇ、こいつら。クズだわ」

「はい、フルボッコ決定〜」


少女の名前は、月山縁。西のファクトリーヘッド。

そしておそらく、後ろについていた女性は、卓雷菜

。男は、卓帯流。


雑誌で何度か見たことがある。そしてその3人がいままさに目の前に立っていた。


「雷菜ちゃん。あれ出して、封門一輪挿し」


そう言われると雷菜は背負っている大型のバッグから今まで見たことのないTKB?を取り出した。


それは縁の身長と同じサイズくらいの巨大な筐体であった。


「お遊びでこれ使うんもたまにはええやろ」


床に突き立てたTKBからは重々しい金属音が響いた。


「お遊びするには大そうなものだしてきたねぇ。あれが噂に聞く月山の門かぁ。」


レイはクスッと笑いながらそう言った。

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