第1-6話 おじさん

「あーあー… レイ、お前これは… これはやりすぎだぞ…


このモジュールなんか配線構造変えちゃって… こっちはさらになんだ?コネクタごとまるごと変わってる…」


「いいじゃない、理論値ならギリギリ問題ないはずだし。芸夢君も結構使いこなしてるよ。ね?」


レイがこちらを向いてウィンクをした。


「お前さんこの状態で使えるんか… うーん… ってもこれオーバーヒートした時、最悪バックドラフト起こすかもしれん。運良かったなぁ」


この時初めて知ったのだけど、バックドラフトとは、過剰な稼働が影響して内圧制御が暴走して、TKBのパーツがものすごい勢いで弾け飛ぶ(主にキーキャップやスイッチ等)事らしい。レイは「気をつけてれば大丈夫」とは言ったけどおじさんはそんな顔をしてなかった。


「危なくて今後の使用はおすすめできんわけだが…ファクトリーヘッドとしても客に売ったもんで事故が起きてもなぁ…


お前さん、TKB好きか?」


少々困り顔でおじさんは尋ねてきた。


「芸夢君は好きだよね!もうTKBにもTHE BEGINNINGって名前もついてるし。最初の、始まりのキーボードだよね」


おじさんは目をまん丸く見開いた。


「…驚いた。


そりゃいいな…良い名前だ。


よし、ちょっと待ってな」


おじさんは店の奥に入っていった。


「おじさんはね、”本当のTKB”好きにはすっごい優しいんだよ。いつも優しいけどね」


レイがヒソヒソ声で話してるうちにおじさんは奥から戻ってきた。


手には何かパーツのような物とディスク?のような物を持っていた。


「こっちのドライブにこのディスクを入れて使うんだ」


そういうとドライブ?にディスクを入れてみせた。

ディスクは静かに、そして確実にドライブに装填された。


ドライブには黒い文字でTHE ENDと殴り書きされており、ディスクにはSHINEと書かれていた。


それは酷くボロボロに見え、年季が入っているような感じだった。

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