第22話 お婆ちゃん

「姉さんは、元気かな?」


アリエは、パソコンとにらめっこしながらそう言った。はぁ、まぁおそらく。最近は忙しいみたいですれ違いだけど。アリエは僕の母さんを姉さんと呼ぶようだ。


アリエが母さんの妹だとわかった日以降、そこのところは何か聞くに聞けず。また、特訓やら色々と忙しいので気にするのも忘れていた。


「そう、実はね。今日は姉さんから連絡があってね。『海に来たら。珍しい魚がみれわよ。メザスも多分くるんじゃない?』って。


そして、ほんと超久しぶりにこの浜に来たわけ。いや懐かしいよね。


メザスは、多分覚えてないだろうけど。姉さんの家族と私の家族でたまにこの浜に来てたんだよ。あ、あと私の母さんともね。」



僕は驚いた。


全く覚えていない。


『母さん』って僕のお婆ちゃんの事???


何だか不可解な気持ちになってきた。



"僕は今までお婆ちゃんという存在を意識したことが無かった"からだ。この前、ファクトリーの写真に少し写っていたような気がしたけれどそれについて語られる事は無かったのでいまいちピンときていなかった。


「メザスはさ、母さん、いや婆ちゃんの事ぜーんぜん覚えてないでしょう?なんたってこーんなちっちゃかったもんね。こーんな!」


そう言って、アリエはレジャーシートと水平になるように掌を出した。シートと掌の間は小さい定規くらいの隙間しかない。いやちっちゃすぎでしょう。


「婆ちゃんはホント凄かったんだよ。The END創ったのも婆ちゃんだからね。後は〜…The BEGGING、The FREEDAMとか。プライマルヘッドのマルエリって呼ばれてて。マルエリは婆ちゃんの名前ね。」


The ENDを創ったのはお婆ちゃん…?明らかに『市販品』でないのは分かっているつもりだったけど、まさか婆ちゃんの手作りだったとは想像もしなかった。


「まぁ何言ってるかさっぱりわからないだろうけど、大人の事情で全部話せるわけではないんだよね。まずは大会出場!!そのためのトレーニングが『これから先の為に大事になってくる』ってわけ」


これから先って…!と聞こうと思うと後ろから、遮るように声がした。



「暑いねーー!



ってうわっ、アリエさんセクシーすぎる…!!」


そこにいたのはミエだった。


何やら可愛い感じの水着、頭にはシュノーケルとゴーグル、腰には浮き輪……。


遊ぶ気まんまんだ。



そして、セクシーとは?


アリエを改めてよく見ると。そう改めて。


ビキニから見える谷間にじんわり汗をかいてるようにみえた。


今までツナギしか着てるとこを見てなかったのでかなり鈍感になっていたけど、実際そう言われてみると…


…………


我に帰ると、ニヤニヤするアリエと虫けらを見るような目線のミエがそこにはいた。



太陽の陽射しが目に突き刺さる。


そんな暑い夏がここにはある。

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